2014 Fiscal Year Research-status Report
中央アジア出土史料による古代チベット帝国の文書行政システムの研究
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26770244
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Research Institution | Kobe City University of Foreign Studies |
Principal Investigator |
岩尾 一史 神戸市外国語大学, 外国語学研究科, 研究員 (90566655)
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Project Period (FY) |
2014-04-01 – 2017-03-31
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Keywords | チベット / 吐蕃 / 文書行政 / 敦煌文書 / 行政 |
Outline of Annual Research Achievements |
・[学会発表]2014年6月にスイスの国際学会に出席し、裁判関係の文書にみえる文書行政システムの仕組みについて発表した。6月に台湾の学会に出席し、帰義軍政権下においてチベット語で作成された公文書一点を紹介し、それがチベットの上申文書の書式を踏襲していたことを発表した。9月にアメリカの学会に出席し、公文書にみえる印の使い方とその分類について発表した。2015年1月、京都で開催された国際学会に出席し、同文書の内容を詳細に検討した上で、当該文書が帰義軍のかなり初期に作成されたことを発表した。 ・[出版]7月に論文を発表し、敦煌莫高窟から発見されたチベット語文書の大半を占める十萬頌般若經の用紙が、写経事業の終了後も様々な用途に使用されていたこと、そして再利用のためにわざわざ莫高窟にしまわれていた可能性を指摘した。本稿では敦煌における紙の使用の諸相や、敦煌文書そのものの性格にも関説した。2015年3月に出版した論文では、古代チベット帝国の領域内にて作成された土地台帳の存在について報告し、その内容を分類した上で、生業として農業・畜牧の両方を行う人々が土地台帳作成のさいにどのように登録されたのかを明らかにした。 ・本年度は研究に必要な関係資料を収集することに集中した。また本年度に予定していたイギリス、フランスでの調査を行わなかった。別資金にて北京の国家図書館所蔵チベット語文書の調査を行う必要が急に生じたためである。なお北京の調査費用自体は別資金を使用したものの、その準備や調査内容については本研究と密接に関連している。ヨーロッパの調査については来年度に費用を繰越し、海外調査を行う予定である。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
・本年度の主な活動の一つは内外の学会にて研究内容の口頭発表を行い、参加者からフィールドバックを得ることにあった。結果的に4度の学会発表を行うことができ、当初予定していたよりも多くの成果をあげることができた。 ・本年度はヨーロッパの所蔵機関にて文書調査を行う予定であったが、急遽北京にて調査することになったため、来年度に延期した。ただし来年度に予定より長めあるいは複数回の調査を行う予定なので、三カ年計画全体としては特に遅れを生じることはない。 以上の理由から、おおむね順調に進んでいると判断した。
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Strategy for Future Research Activity |
・今後は、本年度に予定していたチベット語文書の調査をフランスとイギリス、あるいはロシアのヨーロッパの所蔵機関で行う。あわせて、北京の国家図書館収蔵チベット語文書の調査を引き続き行う予定である。ただし、国家図書館については文書閲覧状況が許可される稼働かは流動的であるので、場合に応じてヨーロッパでの調査に切り替える可能性がある。 ・昨年度の学会で発表した内容を論文として出版するため執筆する。 ・また、パーソナルコンピュータなどの必要機器を購入し、研究活動に備える。
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Causes of Carryover |
ヨーロッパの図書館に敦煌文献調査を行う予定であったが、緊急に北京の図書館で敦煌文献調査を行う必要があったので、来年度に延期した。なお北京の調査費用自体は別資金を使用したものの、その準備や調査内容については本研究と密接に関連している。
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Expenditure Plan for Carryover Budget |
ヨーロッパおよび北京の図書館において敦煌文献および関係資料の調査を行う。
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Research Products
(6 results)