2014 Fiscal Year Research-status Report
演劇産業の消費者行動と大都市集積に関する地理学的研究
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26770288
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Research Institution | Kokugakuin University |
Principal Investigator |
山本 健太 國學院大學, 経済学部, 准教授 (40598190)
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Project Period (FY) |
2014-04-01 – 2016-03-31
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Keywords | 広島 / 演劇 / 存立基盤 / 支援者 / 公共文化施設 / 劇団員 / 観劇者 |
Outline of Annual Research Achievements |
本年度は,先行研究の踏査とともに,産業概要の全体像を把握することが目的であった。研究の過程で,調査対象地域を福岡から広島へと変更した。広島は福岡とともに日本の地方中核都市のひとつであり,地方都市における文化産業の集積を検討する上で,適当な都市である。 広島市を拠点に活動する11劇団を対象とした聞き取り調査,劇団員28人を対象としたアンケート調査,2公演の観劇者216人を対象としたアンケート調査を実施した。アンケートの作成と実施に当たっては,広島で活動する劇団および劇団員の協力を仰いた。 その結果,広島における小劇場演劇を支える地域的基盤として,公共文化施設が重要であることが明らかとなった。これら施設の中には,演劇支援事業を実施しているものが多く,それらの支援なくしては,成立することは困難である。 また,演劇文化の生産者たる劇団員は,本業を別に持ちながら,その仕事の合間に演劇を趣味として取り組むものがほとんどであった。彼らは,愛着のある広島で演劇に関わりながら,演劇文化を地域外に発信したいと考えている。 消費者である観劇者は,劇団員の友人や知人,演劇関係者といったいわゆる「身内的な観客」であった。彼らにとって観劇という文化消費行動は,一種の非日常的な行動として認知されていた。 これらの点は,民間の劇場が多く存在し,演劇を本業と捉える生産者が生活を維持でき,「一般の観客」が演劇を日常的な文化消費機会と捉えている東京とは大きく異なっていた。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
1: Research has progressed more than it was originally planned.
Reason
本年度は,先行研究の踏査および産業概要を捉える計画であった。福岡の他,いくつかの地方中枢都市をめぐる中で,広島での現地調査に際して,積極的な調査協力を得られた。そのため,聞き取り調査およびアンケート調査が想定よりもスムーズに実施することができた。
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Strategy for Future Research Activity |
今後は,研究成果の発信に主力を移す。すでに研究成果の一部は2015年3月の国内学会で公表している。また9月,10月には国際学会での発表を予定している。加えて,研究成果を所収した編著本を執筆しており,年度内の刊行を目指している。当面はこれら発信に注力することとなる。 加えて,当初調査目的地としていた福岡についても,継続的にアプローチし,聞き取りおよびアンケートの実施を目指す。
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Causes of Carryover |
本年度の調査において,積極的な協力者を得られた。そのため,調査あたっては,調査地への訪問回数を削減してもなお十分な成果を得ることができた。2014年4月に申請者の所属変更がなされ,研究の拠点が調査対象地域のひとつである東京に移った。この点も旅費削減に影響している。また,新所属においては充実した設備が完備されており,購入を想定していた備品を購入せずに済んだ。他方で,研究進度が当初予定よりも早いため,成果の公表について,2015年度に当初予定していなかった国際学会でも発表が可能との見込みを得た。そこで,2014年度の研究費の一部を2015年度に繰り越すこととした。
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Expenditure Plan for Carryover Budget |
差額分については,上述の通り,国際学会での発表に関わる経費などでの使用を想定している。また他地域における調査も計画しており,そのための経費に充てる。
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