2014 Fiscal Year Research-status Report
ケベック民法典における財産管理の一般法とその理論的基礎
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26780056
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Research Institution | Kanazawa University |
Principal Investigator |
高 秀成 金沢大学, 法学系, 准教授 (50598711)
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Project Period (FY) |
2014-04-01 – 2017-03-31
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Keywords | ケベック / 混合法 / 財産管理 / 一般法 / 忠実義務 / 報告義務 |
Outline of Annual Research Achievements |
平成26年度においては、国内文献を可能な範囲で渉猟したうえで、「他人の財産の管理」の制度概観の把握に取り組むことを課題としていた。その結果、①ケベック民法典第7章「他人の財産の管理」の立法理由、②制度概要および特徴的規定について明らかにすることができた。その詳細は次のとおりである。 ①「他人の財産の管理」は民法改正委員会の報告に端を発したものであり、同制度創設の基礎には、(a)全ての管理人に共通する規定の繰り返しを防止し、(b)管理に関する典型契約とされる委任契約に対する過度な依存を回避することにあった。 ②「他人の財産の管理」の個々の規定そのものは決して新奇なものではなく、多くは委任や信託に関して既に存したものである。「他人の財産の管理」は一般法的性格ゆえ、個々の管理制度に対して補充的に規定されるのみである。それでもなお、その背景にある管理に関する規定の統合・管理に関する一般法制定の精神が注目される。「他人の財産の管理」の規定群は、大きく、財産管理人の性質決定、管理の類型、管理の細則、管理終了の処理に関するものに分類される。これら規定は、極めて細密にわたるものであるが、特質としては、(a)明確な性質決定基準の回避、(b)現代型財産管理への対応、(c)管理人の義務の規定の充実、を挙げることができる。(b)の現代型財産管理への対応については、柔軟で適切な管理を実現するため、単純管理と完全管理の二類型が創設された点が重要であり、従来のフランス法の三分体系(保存・管理・処分)からの離反という点において、注目される。(c)の管理人の義務の規定の充実は、その過剰な詳細さ故に、翻って「他人の財産の管理」の本質の把握を困難にするものである。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
平成26年度においては、次年度の在外調査に向けて、国内文献を可能な範囲で渉猟したうえで、「他人の財産の管理」の制度概観の把握に取り組むことを課題としていた。研究の結果、国内文献はもちろんのこと、国内でケベック文献の入手が困難ななか、「他人の財産の管理」に関する極めて貴重な文献(とりわけ、John B. Claxton, Studies on the Quebec law of trustおよびM. Cantin Cumyn=Michelle Cumyn, L’administration du bien d’autrui, 2nd edition )を入手できた点は重要であった。これにより、「他人の財産の管理」の正確な制度把握が可能となったことに加え、次年度の在外調査において必要な作業を前倒しして行うことができた。 また、平成26年度の研究について、北陸フランス法研究会において報告する機会を得ることができ、ケベック法の母法たるフランス法に造詣の深い諸専門家より貴重な示唆を得ることができ、また今後の課題を明確にすることができた。
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Strategy for Future Research Activity |
平成27年度においては、ケベックに渡航し、資料収集・調査を行い、ケベック民法典の立法経緯および制定にあたっての発想を明らかにすることを課題とする。 幸い平成26年度にケベックで発刊されている貴重な資料を入手できているため、当初予定の次の3点の課題を、ケベック当地での評価や批判を踏まえて、より掘り下げて検討することとなる。 ①種々の受託者の義務がいかなる経緯で、「他人の財産の管理」の一般法に集結されたのか、そしてそのことの評価いかん。②当初の原案の変遷と、会社など法人型の財産管理が「他人の財産の管理」の適用対象から外れた理由。③財産管理人の対内的な義務と対外的な財産帰属関係を含む「他人の財産の管理」の規定群がなぜ、第4編「財産」に位置づけられたか。 具体的な調査手法としては、ケベック当地において立法資料・専門文献などを渉猟することを中心として、可能であれば「他人の財産の管理」の第一人者であるM. Cantin Cumynへのインタヴューの手法を用いることとする。
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Research Products
(6 results)