2015 Fiscal Year Research-status Report
子の居所をめぐる法制度―離婚後の「子の利益」と「親の利益」の間の距離と相克―
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26780065
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Research Institution | Tokyo Keizai University |
Principal Investigator |
古賀 絢子 東京経済大学, 公私立大学の部局等, 専任講師 (10633472)
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Project Period (FY) |
2014-04-01 – 2019-03-31
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Keywords | 子の居所 / 親権法 / 離婚後の監護法制 / 家族法 / 豪州法 / 英国法 |
Outline of Annual Research Achievements |
近時、日本でも、離婚後の共同親権・監護法制の導入が提唱されている。本研究は、離婚後の共同養育法制の一端という観点から、監護親による子の居所移動、端的には、子連れ転居を制限し得る仕組みの創設を中心に、子の居所に関する新たな法制度の提案を目指す。 平成27年度も研究代表者の育児休職に伴う「研究中断」となり、当初の計画の遂行は困難となった。そこで、前年度に引き続きオーストラリア(豪州)の監護法制の検討を進めるとともに、英国の監護法制にも検討の対象を広げ、両国間の比較法的検討を行った。 その結果、英国も豪州と同様に離婚後の共同養育推進を図る中で、①養育事件解決における実体的な規範を「共同養育は子の利益に合致する」という形で具体化するとともに、②共同養育に伴い生じる多様な争点に対応するために紛争解決手続が複雑化・精緻化していくという豪州と共通の傾向が見られること、ただし、③英国は豪州よりも緩やかに共同養育を推進していることを確認した。 これらの点を踏まえて英国の子連れ転居紛争処理の現況を眺めるに、子の居住場所は共同養育の前提として重要な争点と位置付けられ(②)、豪州程ではないにせよ、共同養育規範の強化に比例する形で、裁判所による子連れ転居許可の厳格化が進みつつある(①・③)。英国法の特徴は国内転居と国際転居とで異なる処理枠組みを持つ点にあり、従来、特に国内転居では、子連れ転居の否定はごく例外的な場合に限られていたが、近時、国際転居の処理枠組みに接近するという形で、国内転居でも子連れ転居への厳格化へ向かう兆しが見られる。 また、子の居所移動に密接にかかわる問題として、両国における、いわゆるハーグ子奪取条約の運用に関しても調査検討を行った。 以上の英国及び豪州両国の法制に関する検討結果をまとめるため、現在、論稿を執筆中である。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
4: Progress in research has been delayed.
Reason
研究代表者の育児休職により「研究中断」となった。したがって、当初予定していたスケジュールで研究を進めることができなかった。
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Strategy for Future Research Activity |
本研究は平成28年度4月1日より再開した。今後は、研究機関延長手続を行い、当初予定のスケジュールを適宜変更して研究を進めて行く。
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Causes of Carryover |
育児休職に伴う「研究中断」のため。
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Expenditure Plan for Carryover Budget |
本研究は平成28年度4月1日より研究再開となった。今後は、研究期間延長手続の上で、最新の文献収集を中心に、支出を行っていく。
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