2016 Fiscal Year Research-status Report
子の居所をめぐる法制度―離婚後の「子の利益」と「親の利益」の間の距離と相克―
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26780065
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Research Institution | Tokyo Keizai University |
Principal Investigator |
古賀 絢子 東京経済大学, 現代法学部, 専任講師 (10633472)
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Project Period (FY) |
2014-04-01 – 2019-03-31
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Keywords | 子の居所 / 親権法 / 離婚後の監護法制 / 家族法 / 豪州法 / 英国法 |
Outline of Annual Research Achievements |
近時、日本でも、離婚後の共同親権・監護法制の導入が提唱されている。本研究は、離婚後の共同養育法制の一端という観点から、監護親による子の居所移動、端的には、子連れ転居を制限し得る仕組みの創設を中心に、子の居所に関する新たな法制度の提案を目指す。 平成28年度は、前年度に引き続き、オーストラリア(豪州)・英国における監護法制全般、子連れ転居紛争処理、および、いわゆるハーグ子奪取条約の運用に関する比較法的検討を進め、最新状況について論稿をまとめた。論稿は平成29~30年度に共著書籍の中で刊行予定である。 その他には、いわゆる「友好的な親」ルールに関し検討を行った。友好的な親ルールとは、養育紛争の判断基準として、離婚後に他方親の養育参加に対して協力的な姿勢を示す親を好ましい親と見るというものである。日本の家裁実務では、平成28年、離婚後の子の親権紛争において、同ルールの下、母親との面会交流に積極的な姿勢を示していることを理由に父親に親権を認めた事件があり、異例の判断として注目を集めた。母親については、父親との面会交流に消極的であったことに加え、別居時に、父親に無断で子を連れて転居したことが否定的に評価されたと考えられた。当該事件は第二審で判断が覆され、母親に親権が認められたものの、今後、日本でも共同養育の推進・普及が進み、同ルールが実務上普及した場合、子連れ転居の問題についても新たな対応が迫られる契機となる。 友好的な親ルールについては、特に豪州の動向が注目される。豪州では2006年の連邦家族法改正において、共同養育規範の明確化の観点から、養育命令を行う際の至高の判断基準である「子の最善の利益」の一内容として同ルールを盛り込みながら、諸批判を受け、2012年の同法改正により削除したという経緯がある。そこで、同ルールの意義と問題点について、日本の実務・立法の手がかりとするべく検討した。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
4: Progress in research has been delayed.
Reason
前年度、研究代表者の育児休職により「研究中断」となったところ、それによる遅れを十分に取り戻すことができなかった。加えて、日本での最新の実務動向を受けて、計画を一部変更し、当初予定していなかったテーマの検討作業に相当の時間を要したことから、当初のスケジュール通りの遂行が困難となった。
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Strategy for Future Research Activity |
まずは変更部分に関する作業を継続し、その完了の上で、当初の計画に戻って、総合的な作業を進める予定である。
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Causes of Carryover |
前年度について、研究代表者の「研究中断」により未使用額が多額に上っていたことに加え、当初計画していた調査旅行を行わず、旅費の支出がなかったことなどから、次年度使用額が生じた。
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Expenditure Plan for Carryover Budget |
当初予定していた調査旅行は実施できる見込みがないので、文献収集を中心に、支出を行う予定である。
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