2017 Fiscal Year Research-status Report
子の居所をめぐる法制度―離婚後の「子の利益」と「親の利益」の間の距離と相克―
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26780065
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Research Institution | Tokyo Keizai University |
Principal Investigator |
古賀 絢子 東京経済大学, 現代法学部, 専任講師 (10633472)
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Project Period (FY) |
2014-04-01 – 2019-03-31
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Keywords | 子の居所 / 親権法 / 離婚後の監護法制 / 家族法 / 豪州法 / 英国法 / 婚姻家族モデル |
Outline of Annual Research Achievements |
近時、日本でも、離婚後の共同親権・監護法制の導入が提唱されている。本研究は、離婚後の共同養育法制の一端という観点から、監護親による子の居所移動、端的には、子連れ転居を制限し得る仕組みの創設を中心に、子の居所に関する新たな法制度の提案を目指す。 平成29年度は、前年度に引き続き、オーストラリア(豪州)・英国における監護法制全般、子連れ転居紛争処理、および、いわゆるハーグ子奪取条約の運用に関する比較法的検討を進めた。これらに関しては、前年度に論稿をまとめたが、掲載予定書籍の刊行が平成30年度以降に延期となったため、さらなるアップデート作業を行った。 日本の法制については、やはり前年度に引き続き、いわゆる「友好的な親」ルールをめぐる家裁実務の動向について考察した。 さらに、日本の家族法制の在り方を総合的に見直す観点から、日本の家族法(民法)の基本枠組みとしての婚姻家族モデルに関して検討した。現行民法の離婚後の単独親権・監護制は、両親による共同養育を、離婚した場合には認めず、婚姻関係にある両親に対してのみ、つまり、婚姻家族の「特権」として、認めていると言える。それは、婚姻家族を標準的な家族の姿とする規範モデルに依拠するものと位置づけることが可能である。これに対し、子の居所の問題を含めた離婚後の監護法制は、婚姻家族が流動化する現実を背景に、婚姻家族モデルの実際的な意義と限界に向き合いながら、再構築していく必要がある。 民法の婚姻家族モデルをめぐっては、最高裁が近時、家族法関連判決にて家族モデルに深く関わる判断を立て続けに示している。そこで、それらの最高裁判例について検討を加えた。そのうち、夫婦同氏制(民法750条)の合憲性を支持した平成27年12月16日判決について、夫婦同氏による「子の利益」を同合憲判断の一理由とする法廷意見の議論に批判的な観点から検討し、その成果をまとめ、論文を刊行した。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
4: Progress in research has been delayed.
Reason
作業の進捗の遅れの最大の要因は、平成26年、および、同29年に研究代表者が出産し、研究中断期間が生じたこと等にある。加えて、国内外の最新の立法・実務動向を受け、計画を一部変更し、当初予定していなかったテーマの作業に相当の時間を要していることも一因である。
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Strategy for Future Research Activity |
平成30年度は、育児休職を取得するために、再度、研究中断となる予定である。研究再開後は、計画の遅れを取り戻すべく、作業に取り組みたい。
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Causes of Carryover |
(理由) 以前の研究代表者の「研究中断」により未使用額が多額に上っていたことに加え、当初計画していた調査旅行を行わず、旅費の支出がなかったことなどから、次年度使用額が生じた。 (使用計画) 当初予定していた調査旅行は実施できる見込みがないので、文献収集を中心に、支出を行う予定である
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