2020 Fiscal Year Research-status Report
子の居所をめぐる法制度―離婚後の「子の利益」と「親の利益」の間の距離と相克―
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26780065
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Research Institution | Tokyo Keizai University |
Principal Investigator |
古賀 絢子 東京経済大学, 現代法学部, 専任講師 (10633472)
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Project Period (FY) |
2014-04-01 – 2022-03-31
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Keywords | 子の居所 / 親権法 / 離婚後の監護法制 / 家族法 / 豪州法 / 英国法 / ハーグ子奪取条約 / 婚姻家族モデル |
Outline of Annual Research Achievements |
離婚後の共同親権・監護制の導入が、日本でも議論されている。本研究は、共同親権・監護制の一端という観点から、監護親による子の居所移動、端的には子連れ転居に対応する新たな法的仕組みの提案を目指す。 令和2年度は、前年度に引き続き、英国・豪州の監護法制の比較法的検討を行い、成果を2本の論稿にまとめ、刊行した。 1本は学会誌『家族<社会と法>』に掲載された。豪州の共同養育法制について、最新の動向を中心に考察した上で、日本の共同親権・監護制導入に関し提言を行った。内容は前年度の日本家族<社会と法>学会での報告をまとめたものであるので、前年度の本研究実績における同報告の紹介を参照されたい。 2本目は、共著書籍『ハーグ条約の理論と実務』の一章を担う形で、英豪のハーグ子奪取条約の実務及び監護法制全般を概観し、両国法制の有機的な比較も試みた。もとは豪州法が英国法を母法とし、離婚後の共同親責任制や「子の利益(福祉)」の最重要視、具体的紛争処理のための手続規定の充実など、両国法制の基本枠組みや方向性には共通点が多い。近年は、英国の側も豪州の共同養育推進に影響を受けている。ただし、豪州の急進的な共同養育推進が抱えた、高葛藤家族における子の安全などの課題を重要視し、緩やかな共同養育承認にとどめている。こうした英国の動向は、豪州法研究及び日本の立法論的検討においても参考になる。 同稿では、子の国外移動を争う手続など、子連れ転居紛争への対応の仕組みも整理した。裁判での転居許否の判断基準及びその運用を見るに、両国法制の共同養育推進の進度と判断の厳緩との間に相関が推察される。同稿で扱えなかった子の国内移動も含め、子の移動の問題を共同養育法制の一端として位置づける視点の重要性を改めて確認した。今後も、両国の監護法制全体における共同養育をめぐる価値観や手続枠組みが転居許否の判断に及ぼす影響に注目しながら、検討を続ける。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
4: Progress in research has been delayed.
Reason
本研究は、平成26年・29年の2回の出産とそれに伴う育児休職のために、中断を重ねてきた。令和元年度途中で研究再開となり、依頼を受けた原稿の執筆に取り組む中で、本研究も当該執筆作業に沿う形で変更を加えながら進めることができた。 また、令和2年度はコロナ禍のために、研究教育環境に多大な影響があり、作業が滞る場面があった。
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Strategy for Future Research Activity |
令和3年度への延長申請が認められた。同年度が最終年度となる。 今後は、特に豪州法の最新の動向を中心とした検討を行いながら、これまでの研究成果をまとめ、現在進行中である日本での親権法改正をめぐる議論に対し、より具体的な示唆・提言を行う準備を進めたいと考えている。
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Causes of Carryover |
これまで2度の育児休職によって研究中断期間や作業の遅れが生じ、そのため、支出自体も遅れていた。次年度は主に物品費として、文献収集等のために使用する予定である。
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Research Products
(2 results)