2021 Fiscal Year Annual Research Report
The study of the law concerning the children's relocation after parental separation: considering where the children's best interests lie
Project/Area Number |
26780065
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Research Institution | Tokyo Keizai University |
Principal Investigator |
古賀 絢子 東京経済大学, 現代法学部, 准教授 (10633472)
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Project Period (FY) |
2014-04-01 – 2022-03-31
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Keywords | 子の居所 / 親権法 / 離婚後の監護法制 / 家族法 / 豪州法 / 英国法 / ハーグ子奪取条約 / 婚姻家族モデル |
Outline of Annual Research Achievements |
離婚後の共同親権・監護制の導入について、日本でも議論されている。本研究は、同法制の一端との位置づけにおいて、監護親による子の居所移動(子連れ転居)に対応する新たな法的仕組みの提案を目指した。具体的には、次の3つの課題を検討した。①子連れ転居の問題は、離婚における監護紛争のどのような局面で現れるか。②子連れ転居制限の法的根拠は、何に求められるか。③裁判で子連れ転居の許否を争う場合の判断基準はどうあるべきか。 研究期間中、ハーグ子奪取条約の運用が始まると共に、親権法改正作業が本格化した。それに伴い、子連れ転居の問題の重要性が広く共有され、議論が急速に精緻化した。そうした動向を追いながら、本研究は条約実務も含めた国内法の検討、及び、豪州・英国の比較法研究を行った。これまでは主に条約関連の検討及び比較法研究の成果を刊行してきたが、最終年度は「子の監護に関する処分」(民法766条)を中心に国内法を考察し、成果公表の作業を進めた。 本研究は、条約検討作業の追加などの計画変更もあり、当初目指した「子連れ転居に対応する新たな法的仕組みの提案」には至らなかったが、課題①-③に関し、次の示唆を得られた。①子連れ転居の問題の重要局面は、離婚前の別居段階にある。②そこで、本問題は、離婚後の単独・共同親権の問題の枠を超えた、総合的な手続の精緻化・充実化としての子の養育法制改革の一環として対応するべきである。③その力点を転居「制限」に置くべきではなく、子の養育の安定・安全確保を軸に個別具体的な「子の利益」の実現を図るための判断枠組みを、裁判・合意形成の両手続にて構築した上で、緻密な調整を可能にするべきである。 これらは、子連れ転居の検討を引き続き行うと共に、代表者がかねてより取組んでいる「家族の流動化を背景とした婚姻家族モデルの見直しとしての子の養育法制の再構築」の研究にとって重要な視点になると考える。
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