2015 Fiscal Year Research-status Report
経営学・言語学を統合した分析に基づく多国籍企業人材の情報授受モデルの構築
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26780203
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Research Institution | Osaka University |
Principal Investigator |
戎谷 梓 大阪大学, 経済学研究科(研究院), 助教 (90709867)
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Project Period (FY) |
2014-04-01 – 2017-03-31
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Keywords | 質的調査 / 縦断的調査 / 分析指標の構築 |
Outline of Annual Research Achievements |
本研究の目的は、製品開発を行う日本企業が多国籍人材を効果的に活用するために企業内の関係者が行うべきコミュニケーションのモデルを構築することである。平成27年度は、前年に引き続き質的アプローチによるインタビュー調査を行った。当初の計画では、平成27年度に大規模アンケート調査を実施する予定で合ったが、外国人と日本人の企業内コミュニケーションに関して平成26年度の調査で明らかになった問題点および関係者間の問題への取り組み方法についてさらに掘り下げた調査を行う必要が生じたためである。 平成27年度の継続調査により、コミュニケーション上の問題点の発生源とも言える要因について考察を行うことができた。すなわち、当初の研究では、外国人と日本人の間のコミュニケーションにおいて発生する問題は、(1)メンバー間で共通言語をもたない、またはいずれかのメンバーが当該言語に習熟していないため、(2)各メンバーの文化的背景が異なるため、の2つを主な要因として予測していた。一方で縦断的な手法でインタビュー調査と参与観察を継続した結果、多国籍出身者で構成されるチームであっても、製品開発プロジェクト中は特定のプロジェクト・プロセス・モデルにしたがって業務にあたるため、メンバー間で問題が生じる場合もその原因は必ずしも異文化の相違によるものとは限らないことが分かった。これは、多国籍企業でのコミュニケーション問題に関する考察を行う上で新たな指標を導入できる可能性を見出した点で意義深い。従来、関連研究の同様のテーマに関する分析では、文化的要因など定義が困難な指標が援用される傾向にあった。いっぽうで、本研究におけるプロジェクト・プロセス・モデルの指標は定義が容易であり、モデル分類が明確であるため、製品開発チームにおけるインタラクションやそこで発生する問題、およびその解決方法に関して考察を行う上で有用であると言える。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
交付申請書作成時には、当初の計画として、平成27年度に大規模アンケート調査を実施する旨を記載した。しかしながら、前年度に実施した調査において明らかになった点を縦断的に調べる必要性が認められたため、平成27年度も引き続き質的アプローチによるインタビュー調査およびフィールドワークを行った。すなわち、多国籍企業の外国人と日本人のコミュニケーションにおいて生じる問題の根本的な要因を分析し、関係者による問題への取り組みについての観察を行った。これにより、問題点やそれを引き起こす要因について深い理解が得られていない状態で大量サンプルに対する量的調査を実施してしまうことを回避できた。 縦断的なインタビュー調査と参与観察により、多国籍出身者で構成されるチームにおいて業務上の問題が発生する場合、その原因は、携わる製品開発プロジェクトのプロジェクト・プロセス・モデルに対する個々のチームメンバーの認識が異なるためであることが明らかとなった。すなわち、プロジェクトの推進方法や工程、コミュニケーションの相手やタイミングなどに関する認識や理解が異なっていたために問題が生じていたということである。プロジェクトモデルは、国や民族の違いに依存しているのではなく、企業理念やマネージャの意図に基づいているため、従来の文化論的アプローチでは分析を行うことが難しい。いっぽうで、プロジェクト・プロセス・モデルは文化論における文化的特徴よりも明確な分類を行っているため、今後問題の原因を分析する際や対処方法について考察する上では効果的な指標であると考えられる。
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Strategy for Future Research Activity |
平成27年度の研究で明らかになった通り、多国籍出身者で構成されるチームが製品開発を行う際、メンバー間でプロジェクト・プロセス・モデルを共有しておく必要がある。またそのためには、多国籍チームを形成する最初の段階で、メンバー各自が有するプロジェクト・モデルを客観的に捉え、他のメンバーが有するモデルとの相違点を明確にしなければならない。その上で、より効果的と判断される共通のプロジェクト・モデルをチームで構築する必要がある。この共有プロセスを明らかにすることにより、チームメンバー間のインタラクションにおける問題を小さくすることが可能であると言える。最終年度である平成28年度は、この共有プロセスについてさらに具体的な考察を行い、コミュニケーションモデルの構築を目指す。
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Causes of Carryover |
物品や旅費への支出の際の端数として生じた。
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Expenditure Plan for Carryover Budget |
平成28年度に研究室の備品を購入する際の補てんとする。
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