2015 Fiscal Year Research-status Report
重度障害者の就労支援システムの再構築に向けた実証研究
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26780313
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Research Institution | University of Kochi |
Principal Investigator |
遠山 真世 高知県立大学, 社会福祉学部, 講師 (20409551)
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Project Period (FY) |
2014-04-01 – 2017-03-31
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Keywords | 障害者 / 就労継続支援 / インタビュー調査 |
Outline of Annual Research Achievements |
本研究の目的は、障害者の就労支援事業所における支援システムを再構築するため、事業所の運営や障害者の工賃に影響を与える要因、および要因間の関連の構造について、質的調査および量的調査を通して科学的に解明することである。3年間の研究計画のうち、昨年度は就労継続支援事業に関する先行研究の検討を通して、障害者の雇用・就労支援における課題の抽出および、障害者雇用・就労に関わる制度・政策の理論的な分析を行った。 そして本年度は、高知県内の障害者就労継続支援B型事業所を対象にインタビュー調査を実施し、高知市内・高知市外の3事業所から協力を得ることができた。インタビュー内容は、事業所で利用者が行っている仕事の内容・実績・経緯、利用者が仕事をするうえでの工夫や売り上げを伸ばすための工夫、利用者への支援や利用者の様子、工賃の金額や配分、仕事や工賃に対する考え方や今後の課題等である。 インタビュー調査のデータは個人情報に配慮したうえでテープ起こしを行い、現在、分析を進めているところである。事業所で利用者が行う仕事には、食品加工や清掃作業などさまざまなものがあり、就労形態も、事業所の中での作業や、事業所外に出向いての販売、企業等へ移動しての清掃など多様である。そうした仕事の開拓に職員が果たす役割も大きく、企業や行政機関との関係づくりを継続的に行っていることが重要である。しかしながら、ひとつの仕事や商品の単価は安いほうが仕事を受注しやすく、利用者の工賃を維持・向上させていくことが難しい状況にあることがわかった。 次年度はこれらの研究成果をまとめ学会発表や論文執筆を行うとともに、引き続き高知県内の障害者就労継続支援B型事業所でインタビュー調査を実施し、データの分析を進める予定である。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
3: Progress in research has been slightly delayed.
Reason
本年度は、高知県内の障害者就労継続支援B型事業所(高知市内4か所・高知市外4か所)を対象に行ったインタビュー調査の結果をもとに、高知県内すべての事業所を対象としたアンケート調査を企画する予定であったが、3事業所でのインタビュー調査は実施できたものの、アンケート調査の企画までには至らなかった。その主な理由は次のとおりである。 まず、本学部の時間割の都合上、平日は授業や会議があり、その間に学生との面談やその他の業務があったためである。調査対象の事業所は平日開所であり、平日に出向いて依頼や打ち合わせを行ったり、実際に調査を行ったりすることが困難であった。また、2年生の学年担当という役割を担い、70人を超える学生の履修指導や生活相談、トラブルへの対応等を行う必要があったためである。学生との個別面談、他の教員や関連部署との相談等のために多くの時間を費やさざるをえず、調査の準備や実施をする時間を捻出することが難しかった。 一方で、事業所に出向き実際に話を聞くことで、仕事内容や就労形態の多様性が明らかとなり、それに伴って事業所や利用者が直面する課題もさまざまであることが考えられる。そのため、パイロットスタディとしてのインタビュー調査ではなく、より多くの事業所でインタビュー調査を行い、詳細にデータを分析することを通して課題や影響要因を抽出し、今後の支援や制度のあり方について検討していく必要があると考えるようになった。
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Strategy for Future Research Activity |
本年度は、高知県内の障害者就労継続支援B型事業所3か所に対して、インタビュー調査を実施することができた。次年度はそのデータを詳しく分析するとともに、引き続き新たな事業所でインタビュー調査を行っていきたい。 インタビュー調査にあたっては、既存の就労支援事業所に対する質的調査および量的調査の内容や分析結果を吟味し、本調査における仮説や質問項目について精査するとともに、地域的な特性や利用者の特徴、事業所の規模や仕事の内容などが偏らないよう配慮しつつ調査対象を選定する。調査協力の依頼や調査実施の際には、研究計画や倫理的配慮、データの扱い方等について丁寧に説明を行い、分析結果を学会発表や論文執筆等の形で公表する時は、事前に内容や表現が適切かを事業所に確認していただく等の過程を経る。調査結果の分析では、障害者の就労意欲や生産性、売上や工賃を高める支援方法や工夫について明らかにするとともに、事業所間での比較を通して生産性や工賃の向上を阻む要因を仮説的に抽出する。これらの分析結果をもとに、インタビュー調査の対象を高知県外に広げる、高知県内の事業所に対して全数調査を行う等、今後の研究の必要性や展開の仕方について検討していきたい。
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Causes of Carryover |
本年度は高知県内の障害者就労継続支援B型事業所へのインタビュー調査の分析結果をふまえ、高知県内の事業所すべてを対象としたアンケート調査を行う予定であったが、3か所の事業所へのインタビュー調査を実施できたものの、アンケート調査の実施には至らなかった。 また、インタビュー調査の結果を分析する中で、事業所で利用者が行う仕事内容や就労形態は多様であることがわかり、それに伴って事業所や障害者が直面する課題もさまざまなものであることが予想されるため、今後も引き続きインタビュー調査を行い、データを詳細に分析していくことが必要であると考えるに至った。
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Expenditure Plan for Carryover Budget |
今後も継続して高知県内の障害者就労継続支援B型事業所へのインタビュー調査を行う。その際、高知市内・高知市外といった地域的な特性についても配慮し、地域が偏らないよう高知県全域で調査対象を選定する。 また、学会や研究会等での研究成果の発表を積極的に行い、高知県内・高知県外の研究者や事業所職員から助言を受け、インタビューの調査内容や分析視点について精査するとともに、県外でのインタビュー調査実施や高知県内の全事業所へのアンケート調査についても準備を進めたい。
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