2014 Fiscal Year Research-status Report
幼児期のバイアスが意図判断の発達に及ぼす中・長期的影響の解明
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26780365
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Research Institution | Chubu University |
Principal Investigator |
佐藤 友美(分部友美) 中部大学, 人文学部, 講師 (80633825)
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Project Period (FY) |
2014-04-01 – 2017-03-31
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Keywords | 意図判断発達 / 社会的スキル |
Outline of Annual Research Achievements |
当該年度は,意図判断のバイアスによる影響を明らかにする上で導入した1)短期的影響,2)中期的影響,3)長期的影響のうち,1)および2)を検討した。子どもの意図判断の様相をとらえる実験(n = 136),および保育士に対する調査をおこなった。 その結果,まず子どもの意図判断は,結果からの判断,楽観的な判断,正確な判断の3つに分かれることが示された。どの年齢でも楽観的な判断が多く見られたが,結果からの判断と正確な判断は5歳半ころから多くなった。また,このような判断方法の使用パターンによって3つの群に分けられることがわかり,結果からの判断と楽観的な判断の両方を使用する結果・楽観群,楽観的な判断のみを使用する楽観群,性格に判断できる正確判断群に分けられた。次に,群による社会的スキルの差について検討を行った。その結果,自己統制スキルと,協調スキルは,結果・楽観群で他の群よりも高いことが明らかになった。また,引っ込み思案行動は,正確判断群よりも結果・楽観群で高かった。一方主張スキル,不注意・多動行動,攻撃行動は,群による差は見られなかった。 結果からの判断と楽観的な判断は,客観的には誤った意図判断であるにもかかわらず,そのような“誤った”意図判断をする子どものほうが高い自己統制スキルや協調スキルをもっており,社会的に適応している可能性を示す結果となった。また,引っ込み思案である傾向もみられ,これは適応的に生活できるからこそ,人との揉め事が少なく,静かに引っ込み思案に見えている可能性が示された。 本研究から,子どものもつバイアスの詳細が明らかにされ,また子どものバイアスがもつ肯定的な役割が示唆された。次年度以降は,同一被験者を追ってデータを収集し,縦断的に調査を行うことで,バイアスがどのように発達を促していくのかを明らかにしていく。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
1: Research has progressed more than it was originally planned.
Reason
当初は,1)研究協力をいただける保育所の確保,2)年少児から小学生までに使用できる実験手続きの構築,3)意図判断のバイアスによる短期的影響を明らかにする実験実施を当該年度行う予定であった。保育所に関しては,本研究にご理解,ご協力いただける園が2園見つかった。保護者への説明もした上で,子どもの実験・調査参加が可能になった。また,年少児にも理解可能な実験を構築することができ,実際に年少児から年長児まで実施することができた。また,子どもの意図判断の詳細を明らかにすることができ,短期的影響がある程度明らかになったことに加えて,子どもの意図判断のバイアスが社会的スキルに与える影響を明らかにしたことで,中期的影響も明らかにすることができた。以上のことから,平成26年度の研究は当初の計画以上に進行しているといえる。
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Strategy for Future Research Activity |
当初の予定としては,平成27年度は保育者に行う調査内容を構築すること,そして同一被験児に対する実験・調査を行うことで縦断研究の2時点目を行い,意図判断のバイアスの中期的影響を明らかにすることであった。 すでに平成26年度に調査内容を構築できたため,引き続き同一保育園において縦断研究の2時点目を行い,中期的影響を明らかにするのと同時に,長期的影響の検討に向けてデータ収集を継続する。また,平成26年度に行った意図判断のバイアスの短期的影響について新たな視点から検討する。具体的には,バイアスのかかった意図判断が,相手への応答性にどのような影響を及ぼすかである。そこで,この点を明らかにするための実験手続きを構築する。また,研究協力園から進学する園児が多い小学校と,研究協力体制を構築し,長期的な影響を明らかにできるような体制を整える。
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Causes of Carryover |
平成26年度は購入予定であった消耗品(レーザープリンター)を購入しなかったこと,および人件費がかからなかったことから,次年度使用額が生じた。
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Expenditure Plan for Carryover Budget |
平成27年度は,26年度購入予定であった消耗品を購入する。また,より研究を効率的に進めていくため,研究補助の学生を当初の27年度の予定よりも多く募集する。
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