2016 Fiscal Year Research-status Report
公教育の構想指針原理に基づく実践理論体系化に関する研究
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26780465
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Research Institution | Kumamoto University |
Principal Investigator |
苫野 一徳 熊本大学, 教育学部, 准教授 (70507962)
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Project Period (FY) |
2014-04-01 – 2018-03-31
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Keywords | 教育学のメタ理論体系 |
Outline of Annual Research Achievements |
教育学の「目的・規範部門」「実証部門」「実践部門」それぞれのメタ理論を明らかにし、これらを整合的に体系化した論文、「教育学のメタ理論体系」が、『本質学研究』第4号に採択され公開された。その概要は以下の通りである。 1.「目的・規範部門」において、これを導出するためのメタ方法論は「現象学=欲望論的アプローチ」となり、これを定式化すると次のようになる。すなわち、「われわれが教育の「目的」や「正当性」に対して抱く「確信」「信憑」が「欲望・関心相関的」であるのだとするならば、この「欲望・関心」について、普遍的に了解されうるような「欲望・関心」はありうるか。もしあったとするならば、そのような「欲望・関心」を十全に達成しうる、社会や教育の根本条件(目的・正当性・構想指針の原理)は何か。」このメタ方法論から導出される公教育の本質(メタ理論Ⅰ)は、「各人の〈自由〉および社会における〈自由の相互承認〉の〈教養=力能〉を通した実質化」であり、その正当性の原理は〈一般福祉〉となる。 2.「実証部門」における「科学性担保の理路」(メタ理論Ⅱ)は次のように定式化される。すなわち、「教育学「実証部門」の「科学性」は、「関心相関的に立ち現れた教育現象を、共通了解可能な仕方で説明(予測・制御)できるよう――(質的研究の際には特に)〈構造化に至る諸条件の開示〉の方法を自覚的に取りつつ――構造化する」ことによって担保される。」 3.「実践部門」のメタ理論(メタ理論Ⅲ)は次のように定式化される。すなわち、「教育学「実践部門」は、「各人の〈自由〉および社会における〈自由の相互承認〉、また〈一般福祉〉というメタ目的を達成するために、実証部門の諸成果と相互作用しつつ、それぞれの状況に応じた一理論として構築・体系化される」。」
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
昨年度に引き続き、理論的研究は当初の予定以上に早く進み、これまで論文や書籍として一定の完成を見た。平成29年度にも、相当数の論文や書籍として研究成果を報告できるものと考えている。
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Strategy for Future Research Activity |
平成29年度は、本研究をより実践的に具現化するための研究に特に力を入れる。とりわけ、報告書は今年、2020年に幼小中「混在」校「軽井沢風越学園」を設立する発起人の一人になることを発表したが、この準備を通して、公教育の構想指針原理に基づく実践理論の体系を具現化する理路を研究していきたいと考えている。
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Causes of Carryover |
当初予定していた以上に、必要文献等を古書等で安く購入できたことに加え、次年度に実践的研究のための共同研究打ち合わせが増加することが見込まれたため、旅費を当初以上に計上する必要性が生じたため。
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Expenditure Plan for Carryover Budget |
当初の予定以上に実践的研究が進んでいるため、本年度においては、当初の予定以上の多くの実践的研究者・研究者との共同研究のための旅費を計上する。
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