2014 Fiscal Year Research-status Report
磁性半導体界面におけるスピン流生成とスピン流による物性制御
Project/Area Number |
26790037
|
Research Institution | Tohoku University |
Principal Investigator |
中山 裕康 東北大学, 電気通信研究所, JSPS特別研究員(PD) (30727011)
|
Project Period (FY) |
2014-04-01 – 2016-03-31
|
Keywords | スピン流生成 / スピンポンピング / スピンホール効果 / スピンミキシングコンダクタンス / 強磁性半導体 |
Outline of Annual Research Achievements |
強磁性半導体は正孔を媒介とした磁性スピン間の相互作用を介して磁気秩序を発現する。そのため、電界による正孔数の変調による磁性制御という新しい物理現象の観測の場を提供してきた。その一方で、強磁性の発現には低温環境が必要不可欠であり、200 K以下のキュリー温度近傍、もしくはそれ以下の低温領域における研究に留まっており、キュリー温度の向上が課題とされている。本研究では、強磁性半導体を用いたスピン流-磁化相互作用による新しい物性制御手法の確立を目指す。 研究開始後初年度に当たる本年度は、金属/強磁性半導体界面における磁化ダイナミクスを利用した動的スピン流生成(スピンポンピング)の研究に取り組み、スピン流に起因する電圧信号の検出に成功し、その界面におけるスピンミキシングコンダクタンスの値を決定した。その結果、金属/強磁性半導体界面におけるスピンミキシングコンダクタンスが半導体/強磁性半導体における値より一桁大きな値を示すことを明らかにした。さらに、スピンポンピングにより生成されるスピン流のスピン偏極の極性が強磁性体層のスピン偏極の極性に依存することを示した。以上の結果は、金属/強磁性半導体界面がスピン流による強磁性半導体の磁化状態の制御に適した物質系であることを示すものであるとともに、スピン流の生成・検出手法として様々な物質系に広く用いられているスピンポンピングおよび逆スピンホール効果の機構に新たな知見をもたらすものと考えられる。
|
Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
研究計画に従い金属/強磁性半導体積層構造を作成し、スピンポンピングおよび逆スピンホール効果を系統的に調べた。その結果、Pt/(Ga,Mn)As界面において常磁性金属/強磁性金属積層構造のスピンミキシングコンダクタンスに匹敵する大きな値を得た。更に、スピンポンピングにより生成されるスピン流の偏極が強磁性層のスピン偏極の符号に依存することを示した。スピン流の生成・検出に広く用いられている本手法に対して新たな知見を示した意義は大きく、次年度の展開につながる研究成果と考えられ、本研究はおおむね順調に進展している。
|
Strategy for Future Research Activity |
初年度の研究により、Pt/(Ga,Mn)As界面においてp型GaAs/(Ga,Mn)As界面の13倍大きなスピンミキシングコンダクタンスを実現した。Pt/(Ga,Mn)As界面におけるスピンミキシングコンダクタンスは常磁性金属/強磁性金属接合の値に匹敵する大きなものであるが、強磁性半導体は強磁性金属と比較して小さな磁化を有するため、強磁性半導体の磁化は金属強磁性体よりもスピン流を用いて制御しやすいものと考えられる。このような高スピンミキシングコンダクタンスを有する金属/強磁性半導体界面を利用することで、今後は金属薄膜のスピンホール効果によるスピン流生成手法や、様々な磁性体ヘテロ構造における動的スピン流生成手法による磁性体の磁気特性の変調を目指す。
|