2014 Fiscal Year Research-status Report
酸化物スピントロニクスとスピン流トランジスタへの展開
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26790038
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Research Institution | Tohoku University |
Principal Investigator |
キュウ 志勇 東北大学, 原子分子材料科学高等研究機構, 助教 (30516414)
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Project Period (FY) |
2014-04-01 – 2016-03-31
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Keywords | スピントロニクス / スピンポンピング |
Outline of Annual Research Achievements |
本研究の目的は、スピン流ー電流変換とスピン流輸送の学理解明と高効率化を実現することである。新素材・新プロセスの開発により、次世代の省エネルギースピンデバイス技術を切り拓き、スピン流トランジスタ素子の実現を目指す。初年度の目標としたのは、研究環境の整備と界面効果の解明であった。この目標に基づき、以下の成果を達成した。 1. 本研究費の支持のもとで、現在所有する逆スピン測定装置を改良し、より効率よく、測定するシステムを構築した。従来の高周波導波管 を用いた励起法から、高周波Waveguideを中心とした磁性共鳴励起システムに改良した。目標のとおり、精度、再現性が良く、周波数幅が広いシステムを構築できた。改良した測定システムを用いて、スピン流研究の基礎の一つとなるスピンポンピング素子を作製し、材料開発の面でスピン流輸送特性を調べた。その結果、数ナノメートルの厚さを持つYIGで出来たデバイスでも、効率よく鮮明な共鳴スペクトルの観測することができた。 2. 改良した測定システムを用いて、スピンゼーベック、スピンポンピング、スピン磁気抵抗などの手法を駆使し、スピン流輸送効率にたいし、最も重要な要因の一つである界面効果について系統的に研究を行った。それらの結果、すべてのスピン流輸送現象に対し、界面状態は、輸送効率に支配的な影響を与えることを確認した。高温でのSMR実験より、重要な界面パラメータとしたミキシングコンダクタンスを定量的に評価し、界面定数の温度変化における指針を作った。さらに、中間層を挿入することで、界面状態がスピンゼーベック効果に与える影響を系統的に調査した。そして、界面の結晶性を向上させることや極薄の強磁性金属層を挿入することでスピン流の輸送の効率化を果たした。 3. 以上の結果に加えて、強磁性・常磁性デバイスにおける界面依存な新奇な磁気抵抗効果も発見し、報告した。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
1: Research has progressed more than it was originally planned.
Reason
本研究では、材料作製、界面制御技術を駆使して、スピン流―電流変換現象及びスピン輸送過程を明らかにする。その結果に基づきスピン流トランジスタを実現することを目指す。初年度の計画は、逆スピンホール起電力測定システムの構築と界面制御によるスピン流輸送の効率化の二点であった。 実績概要に述べたように、以上二点の目標はほぼ達成した。スピン流の輸送に関する基礎研究に加え[JAP, 116 (2014) 153902]、スピン流の輸送に重要な界面効果について、多様な手法を駆使し、研究を行った。その結果、界面状態はスピン流の輸送に支配的な影響を与えることを確認した一方、界面改良により高効率化する方法を提案し、実現した[APL, 106 (2015) 082401, APL, 106 (2015) 052405, JPD, 48 (2015) 164013]。磁性体と非磁性体の界面で起きた新奇な現象を発見し、報告した[JAP, 104 (2015) 242406]。 その結果も論文として多く出版された。さらに、次年度の目標であった材料の開拓にも着手し、結果をまとめる段階の成果も多数あった。来年の目標の達成には良い基礎を造ることができた
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Strategy for Future Research Activity |
これから、本研究の二年度に突入し、材料開拓をしつつ、最終目標であるスピン流トランジスタの実現へ挑戦する。これを達成するために、これまで遂行した研究成果を生かすことが重要なポイントとなる。具体的な計画は以下のとおりである。 1. 酸化物系逆スピンホール効果の機構解明 計画したインジウム系材料の逆スピンホール信号の定量的な研究を行い、そのスピンホール効果の起因について系統的に議論する。それに加え、我々がスピンホール伝導度のフェルミエネルギー依存性の評価方法を開発した。特に酸化物半導体系においてはキャリアー濃度が低いため、スピンホール伝導度は大きいフェルミエネルギー依存性を持つと考えられる。この評価法を利用し、インジウム系材料のスピンホール移動度を系統的に評価することは、スピンホール効果起因の議論に重要な情報を与える。 2. 巨大スピンホール角材料の探索 前述した研究結果を指針とし、膨大な酸化物物質群から、可能性がある材料を洗い出し、巨大なスピンホール角持つ材料の探索を行う。そして、伝導材料とスピンホール効果に限らず、強磁性、反強磁性、超伝導など多彩な物性も視野に入れ、スピントロニクス機能材料の分野を開拓する。 3. スピン流トランジスタの作製 本研究の最終目標とし、スピントロニクス分野に重要となるトランジスタ素子の実現に挑む。スピン流トランジスタ素子の実現は、新たな省エネルギー情報演算技術の扉を開くこと になると予想される。
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Research Products
(10 results)