2014 Fiscal Year Research-status Report
高速イオンビーム表面チャネリング法によるDIETモフォロジーの定量測定
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26790067
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Research Institution | Osaka Kyoiku University |
Principal Investigator |
深澤 優子 大阪教育大学, 教育学部, 准教授 (50379327)
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Project Period (FY) |
2014-04-01 – 2016-03-31
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Keywords | イオンビーム / 表面チャネリング / 格子欠陥 / 電子遷移誘起脱離 / アルカリハライド |
Outline of Annual Research Achievements |
平成26年度は実験と装置改良,およびコンピュータシミュレーションの改良を行なった。 イオンビーム散乱実験では, 超高真空散乱槽内に取付けたアルカリハライド結晶KBr(001)表面に十分にコリメートした約0.55MeVの陽子を表面すれすれの角度で,表面面チャネリングの条件で入射し,散乱強度分布の測定を行った。これらの測定の間に数回,表面に電子線照射を行い結晶表面に欠陥を生成し,欠陥により生じた散乱陽子の強度分布の変化を調べた。散乱強度は表面の凹凸の変化に応じて変化し,一層脱離するごとに振動するため,この強度振動から表面ステップの密度と層状剥離の周期の導出を行った。電子線照射時の結晶温度を変えて測定を行い,散乱強度振動の周期が結晶温度によって変化することを確認した。 散乱強度分布の測定は,結晶の下流側に蛍光板を設置し散乱陽子のパターンを一般的なデジタルカメラで撮影し,画像データを散乱強度分布に変換して行っているが,より精度よく測定するために,マイクロチャネルプレートを用いた検出システムに変更することを予定しており,このシステムを導入するための準備を行った。また,入射陽子のエネルギーを低くすると,表面チャネリングの臨界角が大きくなるため,入射角を大きくすることができ,散乱強度分布をより詳細に調べることができると期待されるため,別の実験で使用していたkeV領域のイオンビーム発生装置を改良を行った。 計算機シミュレーションではステップ部で散乱するイオンの軌道計算を行ってきた。26年度は結晶温度に依存した表面形状の変化を導入し,軌道計算を開始した。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
電子線照射により単層剥離が起こっているアルカリハライド結晶表面で散乱したイオンビームの散乱強度の変化を測定することにより,単層脱離に必要な電子線照射量を見積ることができた。また,イオンビームの散乱強度の振動と計算機シミュレーションの結果から,結晶表面に形成されたステップの密度を見積り,表面モフォロジーを予想することができた。実験結果から,散乱強度の振動周期が電子線照射時の結晶温度が高くなるにつれ短くなって行くことが確認でき,高温では周期の変化が鈍くなることがわかった。このことから電子線照射によってバルク内で生成した欠陥のバルク内での拡散に関する情報や,結晶温度が変化したことによる表面原子の移動についての情報が得られると期待している。 さらに散乱強度分布をより詳細に調べるための装置改良にも着手することができ,今後の実験研究の準備が整った。 実験で得られた研究成果は物理学会等で報告を行い,装置改良の一部については論文で報告した。
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Strategy for Future Research Activity |
平成27年度は引き続き,イオンビーム散乱実験,計算機によるイオンビーム軌道計算を進めながら,DIETによるアルカリハライド結晶表面のモフォロジー変化を解明する。 平成26年に改良した装置を用いて,結晶軸周辺のさまざまな入射方位角で陽子を入射して原子列によるブロッキングパターンを観察する。またチャネリング・ディップの変化を詳細に調べて電子線照射により誘起された結晶表面の原子列間隔の変化を調べる。これまでの実験結果から電子線照射時の温度により散乱強度の振動周期が変化し,高温部分でその変化が鈍くなることがわたったため,高温での測定を増やして,欠陥の拡散,表面原子の移動について検討する。 計算機シミュレーションでは表面原子が脱離したために起こる表面ポテンシャルの変化を考慮にいれた計算を行い,新たな欠陥表面モデルを作成し,イオンビームの軌道計算を実行する。実験結果とシミュレーション結果とを比較しモフォロジー変化の定量測定を可能にする。
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