2014 Fiscal Year Research-status Report
三次元多様体の幾何構造と線形表現に対するライデマイスタートーションの漸近挙動
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26800030
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Research Institution | Akita University |
Principal Investigator |
山口 祥司 秋田大学, 教育文化学部, 准教授 (30534044)
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Project Period (FY) |
2014-04-01 – 2017-03-31
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Keywords | 三次元多様体 / 幾何構造 / ザイフェルト構造 / 位相不変量 / ライデマイスタートーション / 漸近挙動 |
Outline of Annual Research Achievements |
ザイフェルト多様体と呼ばれる三次元多様体に対して位相不変量のなす数列の考察を行なった。今年度はザイフェルト多様体の中でも主にトーラス結び目の外部空間にソリッドトーラスを貼り合わせて構成されるザイフェルト多様体を中心に考察を進めた。このザイフェルト多様体は, トーラス結び目の外部空間のもつザイフェルト構造を引き継ぐため, トーラス結び目の外部空間と同様の現象が現れることが予想できる。トーラス結び目の外部空間の場合を考察した申請者の先行研究の手法を今回のザイフェルト多様体にも適用することで、ライデマイスタートーションという位相不変量を数列として計算し増大度を評価することができた。 ライデマイスタートーションを計算する際には基本群の線形表現が必要になる。ザイフェルト多様体のザイフェルト構造は基本群に制約を与えるため、基本群の線形表現もザイフェルト構造によって制約を受ける。今回のザイフェルト多様体はトーラス結び目の外部空間のもつザイフェルト構造を引き継いでおり、基本群の線形表現も申請者の先行研究が課している条件を満たさなければならない。トーラス結び目の外部空間の場合はこの制約条件のお陰でライデマイスタートーションを具体的に数列として表すことが可能になり、増大度の評価が行なえた。今回も同様の条件を満たしておりトーラス結び目の外部空間に行なった考察を踏襲することで、同様の増大度の評価を与えることができた。 今回の考察において、ライデマイスタートーションを具体的に計算し増大度を評価することを可能にした要因は、トーラス結び目の外部空間のザイフェルト構造が基本群の線形表現に与える制約である。線形表現の制約を導くザイフェルト構造の特徴はザイフェルト多様体に共通しているため、今年度得られた成果は広範囲のザイフェルト多様体の場合に拡張されると期待できる。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
1年目の目標は、広範囲のザイフェルト多様体に適用可能な手法をトーラス結び目の外部空間について考察した申請者の先行研究に基づいて確立することである。今年度はトーラス結び目の外部空間そのものよりもトーラス結び目の外部空間にソリッドトーラスを貼り合わせて構成される三次元多様体に注目し、ライデマイスタートーションという位相不変量を数列として具体的に計算する方法を構築した。また、得られた数列について新しく増大度の評価を与えることができた。 トーラス結び目の外部空間およびソリッドトーラスを貼り合わせて構成される三次元多様体はともにザイフェルト多様体となる。トーラス結び目の外部空間の持つザイフェルト構造が、ソリッドトーラスを貼り合わせて構成されるザイフェルト多様体においてもライデマイスタートーションの漸近挙動を考察する上で決定的な要因になることを今年度は明らかにすることができた。特にライデマイスタートーションを具体的に数列として表す際に重要な働きをするザイフェルト構造の性質は、ザイフェルト多様体に共通していることも明らかにできた。このことから、今年度の研究成果であるライデマイスタートーションの増大度の評価式は広範囲のザイフェルト多様体の場合にも拡張されると期待できる。 一般的なザイフェルト多様体においてライデマイスタートーションの漸近挙動を考察する準備が整備されたと考えられるので、申請書に記載した研究目的および計画に照らし合わせて順調に進展している。
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Strategy for Future Research Activity |
今年度はトーラス結び目の外部空間にソリッドトーラスを貼り合わせて構成される特殊なザイフェルト多様体について位相不変量を数列として具体的に計算する方法を確立することができた。さらに、位相不変量「ライデマイスタートーション」を数列として計算し増大度を評価する際に、三次元多様体のザイフェルト構造から受ける線形表現の制約が果たす役割も解明することができた。ライデマイスタートーションを数列として計算し増大度を評価する手法を他のザイフェルト多様体の場合にも適用することで、今年度得られた研究成果を広範囲のザイフェルト多様体で成り立つように一般化していく。 現在得られているライデマイスタートーションを数列化する手法は、ザイフェルト構造から受ける線形表現の制約のもとで有効な方法である。この線形表現に対する制約というものは代数的な条件であり、ザイフェルト多様体が制約条件をみたす線形表現を持ち得るための幾何学的な条件はまだ判明していない。線形表現の代数的な条件に対応するザイフェルト多様体の幾何学的な条件とはどのようなものなのかを解明するためには、三次元多様体のザイフェルト構造と基本群の線形表現についてより詳細な考察を行う必要がある。
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