2015 Fiscal Year Research-status Report
拡散効果の弱い流体における進行波形態の安定性による特徴づけ
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26800076
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Research Institution | Tokyo University of Marine Science and Technology |
Principal Investigator |
大縄 将史 東京海洋大学, その他部局等, 准教授 (10443243)
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Project Period (FY) |
2014-04-01 – 2017-03-31
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Keywords | 衝撃波 / 安定性 / パターン |
Outline of Annual Research Achievements |
本課題は輻射効果を含む気体力学のモデル方程式(Hamerモデル)における進行波の形態(ショックがある程度強くなると不連続になる)の違いをL∞位相での安定性の観点から説明することを目標とするものである.前年度の成果として,すべての劣臨界進行波は十分小さい摂動に対して安定であり,臨界進行波には任意に小さい摂動で爆発に至らしめるものが存在すること,さらにショックが十分に強い優臨界進行波は十分小さい摂動に対してL∞位相で安定であることを示した.本年度はこれらの成果を次の二点で拡張することに成功した.まず,吸収係数の逆数に対応するパラメータを導入し,ショックの流速における強さとの積を考えれば,吸収係数を固定して得た過去の結果に完全に対応する結果が得られることを示した.さらに,フラックス関数をこれまでのBurgersフラックスから,より一般の凸関数で適当な性質を備えたものに拡張した方程式系を扱った.この系ではSchochet-Tadmor(1992)が連続な進行波解が存在するための必要条件と十分条件を提示していたが,本研究でKruzhkovの意味でのadmissible solutionを考えることで不連続な進行波解を数学的に正当化し,エントロピー条件を満たすすべての場合に連続な進行波解もしくは1点でのみ不連続な進行波解が存在することを示した.さらに,Burgersフラックスの場合における上述の成果がほとんどそのまま成立することを示した.具体的には,連続な進行波が存在するためのSchochet-Tadmorの十分条件の下で進行波がL∞安定であること,その条件をちょうど満たす臨界進行波は上述の意味で不安定であること,そしてショックが十分に強くSchochet-Tadmorの必要条件も満たさない場合にL∞安定性を回復することを示した.
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
前年度の推進方策に記したとおり,輻射気体系に類したより一般の系において,エントロピー条件を満たすすべての場合に連続な進行波解もしくは1点でのみ不連続な進行波解が存在することを示し,さらに劣臨界/臨界/優臨界の各々の進行波の形態が安定化機構と密接に結びついていることを示すことに成功した.一方で爆発の前後の解の様子を捉えることには依然として困難が伴うため,最も安定性が低い短波長極限をとって問題を単純化することを試みた.短波長極限では方程式は減衰項付きBurges方程式になるが,斜面を下る流れなどを記述する緩和項付き双曲型方程式においては摩擦係数と斜面勾配のある関数の符号によって進行波に不連続性が現れることが従来から知られているため,それを対象に選んだ.この系では進行波の安定性はショックの十分に弱いもの,従って連続な進行波の一部でしか得られていない.この系は2×2のシステムであるため,これまで取り組んできた本質的にスカラーの方程式に新たな困難が加わるが,subcharacteristic condition と呼ばれる線形安定性条件が不変領域の存在を保証する条件と同値であることを見出し、本研究で開発した手法と組み合わせることで問題の解決を図っている.以上の観点から研究はおおむね順調に進展していると判断できる.
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Strategy for Future Research Activity |
現在,輻射気体のモデル方程式の短波長極限に関連する2×2の緩和双曲系に取り組んでいる.本研究で開発した手法を応用し,エネルギー法で摂動のL2ノルムを抑えることと特性曲線法によって解の一階微分の値を抑えることを組み合わせて連続な内で強い進行波の安定性を示すことを目指す.新年度に入ってから,幅広いパラメータにおいて問題となる係数を数値計算してその方針の確かさを確認した.また,ショックがさらに強く不連続を含む系では下流側で特性曲線が二つとも不連続に向かうので安定性を示すことが可能ではないかと期待している.さらに,輻射気体モデルと近縁の飽和拡散型Burgers方程式は勾配が急な場合の拡散の限界を含意する重要なモデルであるが,研究の進展は限定的である.そこで本研究課題の応用として,弱いとは限らないショックの安定性解析,臨界進行波の不安定性,優臨界状態で数値計算で予測されるに留まっていた不連続進行波の存在をadmissible shockを考えることで示すこと,その安定性を示すことを目標としている.これらの結果は,進行波の形態と安定化機構の間に密接な関係があるという研究目標をより明確に示すと期待される.
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Causes of Carryover |
計算機の購入を予定していたが,これまでの簡易的な計算については2015年4月に赴任した東京海洋大学の資源を用いて実行することができたため.
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Expenditure Plan for Carryover Budget |
今年度は詳細な数値計算をするため,計算機を占有する必要があり,当初の予定通り購入する.
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Research Products
(11 results)