2015 Fiscal Year Research-status Report
超新星の多波長理論・観測で迫る恒星物理の未解決問題と宇宙論的研究への応用
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26800100
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Research Institution | Kyoto University |
Principal Investigator |
前田 啓一 京都大学, 理学(系)研究科(研究院), 准教授 (00503880)
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Project Period (FY) |
2014-04-01 – 2017-03-31
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Keywords | 光学赤外線天文学 / 理論天文学 / 輻射輸送 / 超新星 / 恒星進化論 |
Outline of Annual Research Achievements |
超新星理論・観測的研究をさらに遂行した。各トピック間をまたがる研究、恒星・連星進化研究との融合が大きく進展した。 「恒星・連星進化」:通常のIa型超新星から初めて、連星相手との衝突の兆候を検出した。SN IIb型超新星について、爆発前と超新星消滅度のハッブル宇宙望遠鏡の画像を新たに解析し、親星が予想外の青色巨星であることを突き止めた。 「超新星爆発・突発現象の観点」:最高精度の白色矮星連星合体シミュレーションをさらに推進した。世界で初めて検出されたSN2014Jからの核ガンマ線について、すざく望遠鏡による独立検出に成功した。中心天体が強磁場中性子星である場合の光度曲線の計算を行うとともに、100太陽質量を超えるような星が起こす超新星爆発の理論計算を行った。ほか、超新星・超新星残骸の観測結果を多数出版した。 「周辺環境」:Ia型超新星の星周物質におけるエコーの理論計算を複数提出、さらに理論で予測されたエコーを示す超新星を発見した。これは、Ia型超新星の少なくとも一部が恒星との連星系における爆発であることを示唆する。一方、Ia型超新星SN2014Jについて、爆発後半年を経過した後期における高分散分光をはじめて行い新しい解析手法を開発、この超新星周囲には高密星周物質が存在しないことを明らかにした。重力崩壊型においては、水素がほとんど検出されないIIb型超新星一例について、2年経過した後に水素輝線が強く放射されていることを発見した。このような特徴が見られない例も集め、親星半径と星周物質密度に関係があることを世界で初めて明らかにした。これば親星と周辺環境をつなぐ新しいアイデアであり、天体物理学の大問題である恒星進化における質量放出の起源に迫るものである。 「銀河化学進化や宇宙論的研究への応用」:距離指標としての精度向上も視野に入れ、Ia型超新星分光データの統計解析を進めた。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
1: Research has progressed more than it was originally planned.
Reason
恒星・連星進化からのアプローチ、超新星爆発・突発天体の観点からのアプローチ、周辺環境からのアプローチ、銀河化学進化や宇宙論的研究への応用のそれぞれの項目で県きゅが大きく進展したのに加え、各トピック間をまたがる融合研究が実を結び始めた。以下、このような分野融合からの結果の例を列記する。 IIb型超新星におけるハッブル宇宙望遠鏡を用いた親星の研究、すばる望遠鏡を用いた星周物質の研究の結果から、親星半径と星周物質の性質に関係があることを見出した。これは世界で初めて提唱されるアイデアである(親星-星周物質)。 星周物質の研究において星周物質におけるエコーの研究が理論・観測双方から大きく進展した。一方、ケプラー超新星においては、その元素組成から明るいタイプのIa型超新星であったこと、星周物質の性質からこれが高密度の星周物質をまとった状態での爆発であることを明らかにした。2013年度に明るい超新星の内少なくとも一部が高密星周物質を伴うことを提唱したが、本結果はさらにこれが比較的一般的描像として成り立つことを強く示唆する(爆発‐星周物質)。 Ia型超新星の星周物質エコーに関しては、さらにこれがIa型超新星の明るさに与える影響を議論し、宇宙論的距離指標として用いる場合の系統誤差になり得るかを議論した(星周物質‐宇宙論)。
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Strategy for Future Research Activity |
平成27年度から引き続き各課題を推進するとともに、特に新たに浮かび上がった融合領域に力を入れる。「恒星・連星進化からのアプローチ」においては、すでに連星進化理論計算を新たに遂行しており、この結果が平成28年度に出るはずである。「超新星・突発現象の観点からのアプローチ」においては、流体計算で得られた結果から輻射輸送を通し様々な波長での観測的性質を明らかにするフェーズに入る。また、これまでにすばる望遠鏡などで多くのデータが取得されており、これを解析するとともに平成27年度に引き続き様々なモードでの超新星観測を遂行する。「周辺環境からのアプローチ」においては、今後大きな進展が期待される星周物質からのエコーを用いた診断法について、理論・観測的研究をさらに推し進める。「銀河化学進化・宇宙論的研究への応用」においては、Ia型超新星の観測的多様性の理解をさらに推進するとともに、新たに理論研究を進めている強磁場中性子星形成に伴う超新星や超大質量星の爆発の結果をもとに、それらを用いた遠方宇宙探査方法について研究を進める。さらに、すばる望遠鏡戦力枠により得られると期待される遠方宇宙における超新星の観測研究を進める。 今後連星進化理論計算を本格的に始動させることで、親星と星周物質との関係、親星と爆発の性質の関係など過去二年に得られた新たな知見を融合、統一的理解を目指す。
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[Journal Article] The critical mass ratio of double white dwarf binaries for violent merger-induced Type Ia supernova explosions2016
Author(s)
Sato, Y., Nakasato, N., Tanikawa, A., Nomoto, K., Maeda, K., Hachisu, I.
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Journal Title
The Astrophysical Journal
Volume: 印刷中
Pages: 印刷中
Peer Reviewed / Acknowledgement Compliant
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[Journal Article] Evolving into a remnant: optical observations of SN 1978K at three decades2016
Author(s)
Kuncarayakti, H., Maeda, K., Anderson, J. P., Hamuy, M., Nomoto, K., Galbany, L., Doi, M.
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Journal Title
Monthly Notices of the Royal Astronomical Society
Volume: 458
Pages: 2063-2073
DOI
Peer Reviewed / Int'l Joint Research / Acknowledgement Compliant
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[Journal Article] The Progenitor of the Type IIb SN 2008ax Revisited2015
Author(s)
Folatelli, G., Bersten, M. C., Kuncarayakti, H., Benvenuto, O. G., Maeda, K., Nomoto, K.
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Journal Title
The Astrophysical Journal
Volume: 811
Pages: 147, 13 pp
DOI
Peer Reviewed / Int'l Joint Research / Acknowledgement Compliant
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