2016 Fiscal Year Research-status Report
原始惑星系円盤の詳細構造から探る物理過程と惑星形成
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26800106
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Research Institution | Kogakuin University |
Principal Investigator |
武藤 恭之 工学院大学, 教育推進機構(公私立大学の部局等), 准教授 (20633803)
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Project Period (FY) |
2014-04-01 – 2018-03-31
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Keywords | 原始惑星系円盤 / 電波天文学 / 理論宇宙物理学 / 惑星形成過程 / 高解像度観測 / 差動回転円盤の不安定性 |
Outline of Annual Research Achievements |
平成28年度は、観測・理論の両面から、研究に進展があった。 観測面では、ALMAによる大きな成果を二点挙げたい。一点目は、TW Hya 周囲の原始惑星系円盤の詳細構造の観測に関する研究 (Tsukahoshi et al. 2016) である。TW Hya は、太陽系に最も近い原始惑星系円盤系である。この天体のALMA望遠鏡によるニ波長の高解像度観測が実行され、いずれの波長においても円盤内に細いギャップ状構造が見出された。さらに、二つの波長の明るさの比を調べたところ、ギャップ状構造の部分と周囲の部分で異なることがわかった。この結果は、ギャップ状構造の部分では塵粒子の大きさが小さいということを示唆しており、原始惑星系円盤内における塵粒子とガスの分布の進化について、新たな観測的知見を得ることができた。第二の成果として、ALMAを用いた、HD 142527 周囲の原始惑星系円盤の偏光観測が実行され、偏光した電波放射を検出した (Kataoka et al. 2016) 。その放射パターンを分析したところ、従来から考えられているような、磁場による塵粒子の整列として解釈するには不自然な点があり、昨年度に我々の研究グループによって提案がされた、成長した塵粒子による電波の散乱によるものと解釈した方がより自然であろう、との結論に至った。いずれも、ALMA望遠鏡によって新たに可能になった性能を十分に生かした観測であり、原始惑星系円盤についての知見を深めるきっかけとなった。 理論的な研究においては、昨年度より進めていたロスビー波不安定性の詳細な線型解析の論文 (Ono et al. 2016) が出版され、これまで明らかになっていなかった不安定の条件について、定量的に予測することが可能になった。これは、この分野において、20年以上問題となってきたことについて、一つの答えを与える成果である。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
平成28年度は、「研究実績の概要」に述べたとおり、観測・理論の両面において研究が進展し、合計で8本の共同研究論文が出版された。また、ALMA Cycle 4 において、主著者として提出した観測提案2件がいずれも採択され、今後の研究へのつながりも残すことができた。以上により、研究はおおむね順調に進展していると言える。
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Strategy for Future Research Activity |
観測面では、ALMA Cycle 4 で提案した観測の結果(すでに一部はデータ配信がされている)を解析し、原始惑星系円盤におけるダストの成長に関する情報を引き出したい。さらに、ALMA Cycle 5 に観測提案を提出し、円盤構造に関する知見をさらに得ていきたいと考えている。 理論面では、ロスビー波不安定性の非線形シミュレーションに関する論文を現在準備中であるほか、塵粒子の性質・光学特性に関する研究も行うことで、観測量と物理パラメータをつなげる手法を確立していきたいと考えている。
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Causes of Carryover |
夏にトルコで開催予定であった国際研究会に招待をされていたが、政治情勢の変化により、研究会が中止となった。また、2016年度中に論文の投稿をさらに一件予定していたが、2017年度初旬にずれこむ見通しとなった。
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Expenditure Plan for Carryover Budget |
論文投稿料として予定していた分は、2017年度に論文投稿をし、投稿料として使用する。論文投稿に向けての準備は順調に進められており、2017年度中の投稿は確実と見込まれる。また、国際研究会旅費として予定していた分については、2017年度中の研究打ち合わせなどに使用する。
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Research Products
(25 results)
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[Book] 系外惑星の事典2016
Author(s)
井田茂 ・田村元秀 ・生駒大洋 ・関根康人 編
Total Pages
364 (p.202-203)
Publisher
朝倉書店
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