2016 Fiscal Year Research-status Report
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26800107
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Research Institution | National Astronomical Observatory of Japan |
Principal Investigator |
小山 佑世 国立天文台, ハワイ観測所, 助教 (40724662)
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Project Period (FY) |
2014-04-01 – 2018-03-31
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Keywords | 光赤外線天文学 / 銀河進化 / 銀河形成 / 銀河団 / 原始銀河団 |
Outline of Annual Research Achievements |
今年度は、すばる望遠鏡のHyper Suprime-Cam (HSC) の戦略枠プログラムで取得された広視野データを使って銀河環境効果の研究を一歩進めることができた。我々はブロードバンドとナローバンドのデータを組み合わせて解析し、「HSC-Deep」とよばれるサーベイ領域の一つであるDEEP2-3フィールドに、赤方偏移0.4の宇宙に巨大な銀河団二つを含む大規模構造を発見した。この大規模構造に沿って星形成銀河の諸性質を調べ、その環境依存性を調査した。その結果、高密度環境の星形成銀河ほど、色が赤く、星形成率が高いという結果を得た。さらに詳細に調べると、これらの結果は高密度環境の星形成銀河の星質量が大きいという傾向に起因しており、星質量を固定してみると、銀河の星形成率には環境依存性は見られなかった。高密度環境に多く見られる「赤い星形成銀河」は、これまで個別の銀河団の研究などで我々自身も注目してきた種族であるが、HSCの大規模サーベイデータを利用することで、初めて5平方度以上に広がる大規模構造に沿って、「赤い星形成銀河」の環境を同定できたことは大きな成果である。本研究成果について論文を執筆し、現在Publication of Astronomical Society of Japan (PASJ) 誌に投稿中である。本研究結果は、銀河環境効果の物理過程の解明を目指す本研究課題に密接に関係する成果である。その他の重要な成果として、Gemini望遠鏡のGMOSを用いた遠方銀河団の面分光観測の時間を新たに獲得し、2017年2月に取得できたこと、ALMA望遠鏡による赤方偏移2の原始銀河団銀河のサブミリ波での高解像度の観測提案が、サイクル3に引き続きサイクル4で採択されたことなどが挙げられる。これらのデータ解析・論文化が本研究課題の最終年度の目標になる。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
すばる望遠鏡のHyper Suprime-Camの戦略枠プログラムで取得された新しい広視野データに着目し、遠方宇宙の星形成銀河の性質と銀河環境の関係についての新しい成果について論文を執筆・投稿できたことで確実な進展があったと言える。また本年度は国内外での招待講演6件など、さまざまな場面で本研究に関係する結果の発表、議論を行うことができたのも重要な成果といえる。しかし一方で、本研究目標を達成するうえで必須と考えている赤方偏移2の原始銀河団銀河についてのALMAのサブミリ波データは、サイクル3およびサイクル4で観測提案が採択されているものの、平成28年度終了時おいて未だ観測が開始されていない。また、Gemini望遠鏡のGMOSを用いた観測提案が2017B期に採択され、2017年2月に好条件下で新たな観測データが取得できたことは重要な進展であるが、すでに取得された欧州南天天文台の大望遠鏡(VLT)のKMOSの多天体面分光データについての解析がやや遅れていることから、最終年度に向けてデータ解析・論文化を加速する必要があると考えている。
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Strategy for Future Research Activity |
2017年2月に新しくGemini望遠鏡のGMOSで取得した赤方偏移0.4の銀河団銀河の面分光データの解析を進めるとともに、既存のGMOSデータと合わせて、銀河団銀河の内部における星形成活動の分布、ガス輝線診断、ダスト減光量分布などについての解析を完了する必要がある。また、本研究で2年目に取得した赤方偏移2の原始銀河団中の星形成銀河について取得したVLT/KMOSの多天体面分光データの解析を速やかに完了し、原始銀河団銀河の動力学状態、金属量勾配などについての結果を報告する論文の執筆も急ぐ必要がある。 さらに、本研究の2年目にMNRAS誌に出版したダスト減光についての多波長解析の成果をさらに発展させ、より一般化した形で銀河のガス輝線への減光量と星成分への減光量の違いについての経験則についての結果をまとめる予定である。
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Causes of Carryover |
出張旅費として使用する際に安価な航空券を購入できたことなどにより、少額ではあるが44,526円の残額が生じている。
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Expenditure Plan for Carryover Budget |
次年度の予算と合わせて次年度の出張旅費の一部として使用する予定である。
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Research Products
(17 results)
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[Journal Article] Bulge-forming galaxies with an extended rotating disk at z~22017
Author(s)
Tadaki, K.; Genzel, R.; Kodama, T.; Wuyts, S.; Wisnioski, E.; Forster Schreiber, N. M.; Burkert, A.; Lang, P.; Tacconi, L. J.; Lutz, D.; Belli, S.; Davies, R. I.; Hatsukade, B.; Hayashi, M.; Herrera-Camus, R.; Ikarashi, S.; Inoue, S.; Kohno, K.; Koyama, Y.; and 8 co-authors
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Journal Title
The Astrophysical Journal
Volume: 834, Issue 2
Pages: id. 135, 10 pp.
DOI
Peer Reviewed / Int'l Joint Research
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[Journal Article] [OIII] emission line as a tracer of star-forming galaxies at high redshifts: Comparison between H-alpha and [OIII] emitters at z=2.23 in HiZELS2016
Author(s)
Suzuki, T. L.; Kodama, T.; Sobral, D.; Khostovan, A. A.; Hayashi, M.; Shimakawa, R.; Koyama, Y.; Tadaki, K.-i.; Tanaka, I.; Minowa, Y.; Yamamoto, M.; Smail, I.; Best, P. N.
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Journal Title
Monthly Notices of the Royal Astronomical Society
Volume: 462
Pages: 181-189
DOI
Peer Reviewed / Int'l Joint Research
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