2015 Fiscal Year Research-status Report
銀河円盤内での星団形成過程と星団のバリエーションの起源の解明
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26800108
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Research Institution | The University of Tokyo |
Principal Investigator |
藤井 通子 東京大学, 理学(系)研究科(研究院), 准教授 (90722330)
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Project Period (FY) |
2014-04-01 – 2018-03-31
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Keywords | 星団 / 星団形成 / 大質量星団 / N体シミュレーション / 流体シミュレーション / 銀河円盤 |
Outline of Annual Research Achievements |
本研究の目的である銀河円盤内のバーや渦状腕の運動を受けての分子雲での星団形成を取り扱えるように、東京工業大学の斎藤貴之博士のN体/流体計算コード「ASURA」を改良した。ASURAに既に入っているガスの銀河内の遠紫外線によるフィードバック、冷却関数や星からのフィードバック(水素ガスの電離)、ガスの冷却関数の組み合わせをテストし、より良い仮定を調べた。星形成条件に関してもいくつかのパターンを試し、これまで使用していた星形成の条件(局所的な密度から得られるガスの自由落下時間あたりの星形成効率を一定として、星形成効率に応じてランダムにガス粒子から星粒子に変化させる)を用いて、観測結果を再現(全体で星形成効率1~数%、高密度領域で30%程度)できることを確認した。また、平成26年度から行ってきた、星団形成シミュレーションの結果、主に、初期条件と形成する星団の関係をまとめ、論文として出版した(Fujii & Portegies Zwart 2015, MNRAS, 449, 1, 726; Fujii 2015, PASJ, 67, 4, id.5910; Fujii & Portegies Zwart 2016, ApJ, 817, 1, id.4)。 同時に、平成28年度以降に行う予定のシミュレーションに向けて、銀河の初期条件について検討した。最適な初期条件を見つけるためには、銀河全体のシミュレーションが必要となるが、計算コストを減らすため、まずはガスを含めず、ダークマターと星のみで銀河円盤を再現し、N体シミュレーションを行った。銀河円盤、バルジ、ダークマターハローのパラメータを様々に変えて、天の川銀河に近いバーや渦状腕構造を再現できるパラメータ範囲を特定した。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
コードの開発はおおむね予定通りに進んでいる。平成27年度に本来予定していた、星団の高精度積分法を流体コード「ASURA」に組み込む作業がまだ完全には終了していないが、銀河円盤の初期条件の検討については、平成28年度に行う予定の内容を前倒しで行った。 また、平成27年度内に、これまでの研究結果を3つの論文にまとめ出版することができた。
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Strategy for Future Research Activity |
平成28年度は、高精度N体計算コードの流体計算コード「ASURA」への組み込みをまず完了させる。平成27年度に検討した天の川銀河モデルを用いて、銀河全体をダークマター、星、ガスでモデル化する。平成28年度は、銀河全体を粗い分解能で計算した後で、銀河円盤全体ではなく、一部の渦状腕のみにガスを入れて高分解能で再計算をし、渦状腕の運動を受けて分子雲が衝突し、星団形成が形成する様子をシミュレーションから調べる。計算時間は10-50Myrとし、星団が形成し、フィードバックによってガスが取り除かれるまでを計算する。シミュレーションの結果から、普通の散開星団と大質量星団の形成条件の違いを明らかにする。円盤の古い星の星一つ当たりの質量を100太陽質量程度とし、新しく形成する星については、0.1-100太陽質量を初期質量関数に従うように設定する。 平成29年度は、計算範囲を銀河円盤全体に拡大する。さらに、天の川銀河の祖先を仮定して、初期条件では円盤のガスの割合を現在の天の川銀河より高く設定する。このような初期条件からは、重力不安定からガスクランプが形成し、その中では大質量の星団が形成すると考えられている。赤方偏移1ー2でガスクランプを多く持つクランプ銀河が観測されているが、このような銀河は天の川銀河の祖先としては質量が大きすぎる。本研究では、天の川銀河の祖先として考えられるような質量の銀河を高分解能で星団まで分解することで、天の川銀河の進化を明らかにするとともに、これから観測が進むであろう天の川銀河の祖先が、今後の観測でどのように見えるかを示せす。
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Causes of Carryover |
平成26年度10月から、平成27年度4月末までの間、産休・育休を取得したため、平成27年度には、平成26年度の後期に使用できなかった分と当初予定していた平成27年度分を合わせた所要額があったが、その後、実施期間を1年延長し、当初平成28年度で終了予定の計画が平成29年度に延長された。そのため、全体として、研究費の使用が延長前の予定と比べて遅れている。今後は、当初予定の平成28年度分と次年度使用額を合わせた額で、平成28年度、平成29年度の2年間の研究を、実施期間延長後に改めて提出した今後の予定に従って進めていく。
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Expenditure Plan for Carryover Budget |
平成28年度の計画 物品費:50万円(ファイルサーバ等) 旅費:50万円 その他:20万円(論文出版費用) 平成29年度の計画 物品費:20万円(コンピュータ関連機器) 旅費:60万円 その他:20万円(論文出版費用)
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