2014 Fiscal Year Research-status Report
全反射高速陽電子回折法によるTiO2(110)表面構造の解明
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26800170
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Research Institution | High Energy Accelerator Research Organization |
Principal Investigator |
望月 出海 大学共同利用機関法人高エネルギー加速器研究機構, 物質構造科学研究所, 研究員 (30579058)
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Project Period (FY) |
2014-04-01 – 2016-03-31
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Keywords | 全反射高速陽電子回折 / チタニア(110)表面 / 最表面構造解析 |
Outline of Annual Research Achievements |
当該年度は、KEK-低速電子実験施設の高強度・高輝度陽電子ビームライン(SPF-A3)実験装置において、パルス増幅MCP検出器を導入し、全反射高速陽電子回折(TRHEPD)実験測定環境を整備した。 具体的には、測定データのS/N比を劇的に改善するため、MCP増幅電圧をパルス的に変動させるパルス電源を調達して設置した。また測定用CCDカメラについても、パルスと同期を取ることでノイズ除去できる事が分かり、この手法も同時に採用できるよう測定系(カメラ,測定用PC整備など)の改良を行った。 上記改良の結果、測定データのS/N比を従来の100倍程度まで向上させることに成功した。理論的には、ノイズを最大1/20000程度に減少させられると予想していたが、実際には測定データの検出効率とのトレードオフの関係があり、ノイズを1/100程度に減少させることが実用的であることが分かった。これにより高次のTRHEPD回折点強度の観測が以前より非常に容易になった。 より明瞭なTHREPDパターンとロッキング曲線の測定が可能となったことで、S/N比の悪さが原因となっていた、従来の分解能(誤差0.1Å~)を超えた、高精度な原子位置決定の達成が期待される。 この改良された検出器を用いて、未だ構造が確定していないrutile-TiO2(110)-(1×2)表面のTRHEPDパターンとロッキング曲線の測定に成功した。また、構造解析を行った結果、従来から提唱されていた"Ti2O3モデル"から原子配置を修正した構造モデルが、実験結果を非常に良く説明できることが分かった。現在、上記の成果について論文投稿準備中である。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
1: Research has progressed more than it was originally planned.
Reason
該当年度に予定していた検出装置の改良を終え、構造が未確定であるrutile-TiO2(110)-(1×2)表面からの明瞭な実験結果(THREPDパターンとロッキング曲線)の測定に成功した。これは該当年度の次年度に予定していた計画であったが、装置改良が順調に達成されたため、計画を前倒しで行うことができた。また既に構造解析の成果も挙がっており、早急に成果をまとめて公表する。
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Strategy for Future Research Activity |
該当年度に予定していた測定系の改良が順調に達成され、計画していたTiO2試料測定も当初の計画以上に進んでいる。 そこで新たに、Au/Ge表面やPt/Ge表面など表面構造が未解明である他の系についても、本研究で改善された高性能検出器を用いて効率良くTRHEPD実験を行い、当初の計画以上に多くの成果を挙げたいと考えている。
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Causes of Carryover |
昨年度、購入を予定していたMCPスクリーンは、現行の機器がまだ使用可能であるため購入を見送った。但し、MCPスクリーンは使用劣化する消耗品であり、本年度に購入を予定している。
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Expenditure Plan for Carryover Budget |
昨年度、購入を見送ったMCPスクリーン(~160万円)を購入する予定である。
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Research Products
(12 results)