2014 Fiscal Year Research-status Report
マルチスケールプラズマ乱流におけるミクロメゾスケール渦の形成・消失過程の解明
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26800283
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Research Institution | Nagoya University |
Principal Investigator |
前山 伸也 名古屋大学, 理学(系)研究科(研究院), 助教 (70634252)
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Project Period (FY) |
2014-04-01 – 2017-03-31
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Keywords | プラズマ乱流 / マルチスケール物理 |
Outline of Annual Research Achievements |
プラズマ中で電子スケールからイオンスケールに渡って現れる乱流は、核融合プラズマにおける粒子・熱輸送を左右する重要な課題であると共に、学術的にも興味深いマルチスケール物理現象である。本研究では電磁的ジャイロ運動論シミュレーションに基づき、電子/イオン温度勾配不安定性で駆動されるマルチスケール乱流の物理機構を解明することを目的として研究を進めている。 今年度は、有限ベータ値プラズマにおける電磁的乱流に対して解析を行った結果、電子スケール乱流の影響によりイオンスケール乱流の作る熱輸送が増大するという、従来の研究では予期されていなかった結果を得た。 この発見の重要性を考慮して、当初の予定を繰り上げて、電子/イオンスケール乱流間の波の非線形結合解析を実施するため、解析手法の開発に取り組んだ。これは、バイコヒーレンス解析のような三波相互作用の波数の結合定数を無視したモデルでは波数が100倍近く変化するマルチスケール相互作用の解析には不十分であり、また、ジャイロ運動論的三波結合解析では計算コストが高すぎて実用上物理機構を探ることが難しかったためである。エルミート・ラゲール多項式展開を用いたジャイロ運動論的三波結合解析の流体近似手法を開発し、マルチスケール乱流の非線形相互作用解析に適用できることを確かめた。 その上で、ストリーマの消失にかかわるイオンスケール乱流によるストリーマ抑制機構の解析、および、電子スケール乱流によるイオンスケール乱流に対する影響の解析を進めた。前者に関してはイオンスケール乱流の作る乱流渦がストリーマのせん断に寄与すること、後者に関しては帯状流が減衰することで間接的にイオンスケール乱流の揺動振幅が増大していることを示した。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
1: Research has progressed more than it was originally planned.
Reason
今年度は電子スケール乱流の初期飽和機構解析を行う予定であったが、予定を繰り上げて電子スケール乱流の抑制機構の解析およびイオンスケール乱流への影響の解析を進めた。 これは、電子スケール乱流の飽和はシミュレーション初期にのみ見られる現象であるが、電子スケール乱流の抑制やイオンスケール乱流への影響は定常状態で見られる現象であり、より重要度が高いと判断したためである。特に、イオンスケール乱流が電子スケール乱流の影響を受けて輸送レベルが増大するという現象は、従来の解析では予想されていなかった新しい物理機構であるため、この発見の重要度を考慮して定常解析を先行させた。 次年度以降に取り組む予定であった三波結合解析手法の拡張として、エルミート・ラゲール多項式展開に基づいた解析手法の開発を達成している。この手法は、バイコヒーレンス解析の様に(ジャイロ中心位置ではなく)粒子位置による流体量のみでエントロピー伝達を評価できるという点で、実験解析への適用も考えられる。
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Strategy for Future Research Activity |
次年度は、静電的・電磁的マルチスケール乱流データを用いてさらに詳細な非線形相互作用の解析を進める。特に、電子スケール乱流による帯状流減衰の機構を解明すべく、電子・イオンスケールの中間に位置するミクロメゾスケール渦がどのように寄与するかという観点から解析を進める。 また、簡約モデルを開発し、マルチスケール相互作用のパラメータ依存性などの解析に着手する。人工的駆動項モデル、長谷川-若谷モデルの拡張などの可能性について検討する。
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Causes of Carryover |
論文の査読プロセスに時間がかかっているため。
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Expenditure Plan for Carryover Budget |
現在2編の論文を投稿中であり、採択時にはそれらの論文出版費用に充てる。
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