2014 Fiscal Year Research-status Report
酸化還元活性な多孔性配位骨格における特異的ガス吸着と電子・磁気物性の制御
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26810029
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Research Institution | Tohoku University |
Principal Investigator |
高坂 亘 東北大学, 金属材料研究所, 助教 (70620201)
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Project Period (FY) |
2014-04-01 – 2017-03-31
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Keywords | 配位高分子 / 多孔性金属錯体 / 誘電応答 / 吸着選択性 / 一酸化窒素 / ルテニウム / 鎖状錯体 / 電子状態制御 |
Outline of Annual Research Achievements |
本予算の申請後課題の開始に先立って,高い酸化還元能を有するPaddle-wheel型ルテニウム二核錯体ユニットと,架橋有機配位子フェナジンからなる一次元鎖状錯体[Ru2(4-Cl-2OMePhCO2)4(phenazine)]が,一酸化窒素(NO)に対して特異的な吸着能を示す事が見いだされた. そこで平成26年度は上述の物質を中心に,研究計画の概要の後半に挙げた“ガス雰囲気下における[Ru2]集積体の電子状態および磁気・電気物性の検討”を中心に研究を進めた.測定用システム立ち上げのために,既設の装置であるカンタムデザイン社製物理特性測定装置(PPMS)のHeデュワーに挿入するための雰囲気制御系を備えたプローブを作製した.本プローブを用いて,各種ガス(He, CO2, O2, NO)雰囲気下において,複素誘電率の温度依存性について検討を行った.その結果,ガスの種類や圧力に応じて誘電率実部の値の急激な減少が観測された.この誘電率実部の値の変化は,ガス吸着を示さない物質では観測されなかった.すなわち,誘電率実部の減少が起こる温度において,ガス吸着が始まり,同時に構造変化が誘起され,誘電率のシグナルとして現れる事が明らかとなった.一方で誘電率虚部,あるいはインピーダンス測定からは,NO雰囲気下においてのみ,他のガス雰囲気下に比べて交流電気伝導度がおよそ1000倍上昇することが明らかとなった.本現象は,対照として合成された酸化還元不活性なロジウム集積体では観測されないことから,NOとルテニウム集積体との間の電子的な相互作用に起因するものと考えている.以上のように,ガス雰囲気制御下において物質の交流電場応答を検討することで,1)ガス吸着に伴う構造変化,および2)ガス分子と材料の相互作用,について温度や圧力への応答性に関する情報が得られることを見いだした.
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
本課題の目的,“多孔性配位骨格における特異的ガス吸着と電子・磁気物性の制御”を実現するためには,まず,ある種の活性ガスと強く相互作用する物質の開発がまず不可欠である.計画では,このような物質の発見のため,“[Ru2]を用いた電荷移動型集積体の合成およびガス吸着能の検討”を,初年度の目標の一つとして挙げていたが,該当物質の発見が想定していたよりも早かったため,次のステップである“ガス雰囲気下における[Ru2]集積体の電子状態および磁気・電気物性の検討”へとスムーズに移行することができた.得られた物質は絶縁性の高い半導体であったが,ガス雰囲気下における誘電率の変化,交流伝導度の変化を見いだすことに成功した.従って,現象的な側面で言えば当初の研究目的は半分実現出来たといえる.ここで半分と述べたのは,“ガス吸着と同期した磁気物性”については検討できていない点を勘案したためである.また本研究の目的で掲げた電子磁気材料への応用という観点からは,まだ物質探索・応答改善の余地は大きい.しかしながら総合的に見て,初年度としての進展具合は概ね順調であると判断できる.
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Strategy for Future Research Activity |
“[Ru2]を用いた電荷移動型集積体の合成およびガス吸着能の検討”を引き続き進めていく.特により大きな誘電応答,高い伝導性を示す一次元鎖状錯体の合成を一つの柱とする.手法としては,1)より電気供与能の高いルテニウムユニットを用いる,2) 架橋有機配位子についても高い電子供与能を採用する,等の指針に基づいて合成・物質探索を進展させていく.また,二次元層状化合物も検討対象としていく.これは,構造の次元性を上げることにより,より多彩な電子状態,および巨視的な磁気秩序の発現が期待できるようになるためである.前年度に検討を深めることの出来なかった部分である,“ガス吸着と同期した磁気物性”に道筋をつけることを目標の一つとしていく. 平成26年度中にはいくつか興味深いガス吸着能を示す,上述のものとは別の鎖状錯体が見つかっており,これらの物質についても引き続きガス雰囲気下における電気物性の検討を進めていく.磁気物性についてはまず,ガス雰囲気下での測定が出来るように測定系の立ち上げを行う.
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Research Products
(16 results)