2014 Fiscal Year Research-status Report
受動ストレージ要素を利用したマルチボディシステムの省エネルギー駆動法の確立と実証
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26820076
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Research Institution | Fukuoka University |
Principal Investigator |
岩村 誠人 福岡大学, 工学部, 教授 (90341411)
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Project Period (FY) |
2014-04-01 – 2016-03-31
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Keywords | ロボットマニピュレータ / 省エネルギー制御 / 受動ストレージ要素 / リアクションホイール |
Outline of Annual Research Achievements |
現在,エネルギー問題への対応が緊急の課題となっており,機械システムに対しても省エネルギー化の要求が厳しくなっている.そこで,ロボットのようなマルチボディシステムに適用可能な「受動ストレージ要素を利用した省エネルギー駆動法」を提案する.すなわち,関節部にばねを付加し,運動中に蓄えられるポテンシャルエネルギーを有効に利用することによって消費エネルギーを低減する方法である.本研究では,このアイデアの理論的な裏付けを行い,その合理的な設計法を確立することを第一の目的とする.さらに,実験装置を製作して,提案手法の有用性を実証することを第二の目的とする. 平成26年度は,初段階として,重力が作用しない水平多関節型マニピュレータについて検討した.ばねの剛性が比較的大きいと仮定すると運動方程式中において遠心力・コリオリ力よりもばね力が優位になる.この仮定の下では最小エネルギー制御問題を解析的に解くことができ,最適軌道,最適制御入力,および消費エネルギーの最小値が動作時間の関数として表せることを示した.また,得られた解析解に基づいて,消費エネルギーが最小となる動作時間の条件を明らかにし,その結果を利用してばねと動作軌道の同時最適設計法を確立した. さらに,提案した省エネルギー駆動法に基づく水平型2関節ロボットを試作した.理論解析モデルでは,関節部にアクチュエータを設置すると仮定していたが,提案手法では関節が自由回転できる必要があるため,関節部にモータを設置することはできない.そこで,リンクの適当な位置にリアクションホイールを取り付け,そこからトルクを印加することにした.また,2つの直動ばねと特殊なスプリング受けを用いて関節部に剛性を付加する機構を考案した.フィードバック制御則を設計して,最適軌道への追従制御実験を行った結果,提案手法により大幅な省エネルギー効果が得られることが確認できた.
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
交付申請書に記載した通り,平成26年度の研究目標は,重力が作用しない場合について,1)理論解析モデルに基づいてばねの剛性や取り付け角度,および動作軌道をどのように選べば大きな省エネルギー効果が得られるかを理論的に解析し,合理的な設計法を確立すること,2)実験装置を製作して,提案手法の有用性を実証すること,であった. 1)の目標に関しては,十分理論的に裏づけされた合理的な設計法を構築することができた.また,2)の目標に対しては,軌道追従性が必ずしも十分であるとはいえず今後改善の必要はあるものの,提案手法により省エネルギー効果が得られることは実証でき,おおむね研究目標を達成することができた.以上のことから,研究は当初の計画通り順調に進展していると考えられる.
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Strategy for Future Research Activity |
平成26年度の研究において,重力がない場合に対しては,受動ストレージ要素を利用した省エネルギー駆動法の合理的な設計法を構築することができた.また,実機実験において提案手法の省エネルギー効果を確認することができた.しかし,フィードバック制御則として簡単なPID制御を用いていたため,実機実験では軌道追従誤差を十分に小さくすることができなかった.そこで,平成27年度は,制御則についてさらに検討を加え,軌道追従性の向上を目指す. また,平成26年度の研究を発展させ,平成27年度は重力が作用する場合について検討する.この場合,ポテンシャルエネルギーはばねによる弾性ポテンシャルエネルギーと重力による重力ポテンシャルエネルギーの和となり,運動方程式中に非線形性の強い重力項もあらわれる.そこで,ばねがエネルギーのストレージとしてだけでなく,重力バランサーとしての役割も果たすようにすることを考え,ばねの最適設計法の改良を目指す. さらに,提案する省エネルギー駆動法に基づく垂直型2関節ロボットを試作し,その実用性や省エネルギー効果を検証する.水平型の場合と同様に,リアクションホイールによってリンクにトルクを印加し,2つの直動ばねと特殊なスプリング受けによって関節部に剛性を付加する.また,このままでは指定位置で停止することができないため,関節部に電磁ブレーキを設置して,任意位置で保持力を発生できるようにする. 以上の研究は,福岡大学の大学院生および海外共同研究者と協力して遂行する.研究成果は,国内学会および国際会議で発表し,学術雑誌に投稿して広く利用してもらえるようにする.
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Research Products
(2 results)