2014 Fiscal Year Research-status Report
二次元プラズマ分光法による電気絶縁ガス部分放電の気体加熱の微細構造
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26820105
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Research Institution | Fukuoka University |
Principal Investigator |
松本 宇生 福岡大学, 工学部, 助教 (50632022)
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Project Period (FY) |
2014-04-01 – 2016-03-31
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Keywords | 分光画像 / プラズマ診断 / 放電 / 気体温度 / 電子エネルギー |
Outline of Annual Research Achievements |
1.気体温度分布の測定について 採択後の研究で、大気中の正極性膜状コロナ放電を観測対象として分光画像診断を行い、本手法で非熱平衡プラズマ中の気体温度分布の定量測定が可能であることを確認した。本分光画像法そのもので得られる気体温度(窒素分子の回転温度)分布は、発光強度比の数値の大小によって示される定性的なものであるため、定量測定を実現するためには発光強度比の値を気体温度へ換算するための較正データの取得が必要であった。本年度の実験で較正データを350から500Kの温度範囲で取得し、それを用いて較正曲線を作製した。そして、分光画像診断とその較正曲線を用いて、棒電極先端(棒対平板電極、ギャップ長2cm)に発生させた正極性膜状コロナ放電中の気体温度分布の印加電圧に対する変化を観察した。その結果、印加電圧の上昇に伴って棒電極端近傍に形成されている膜状コロナの厚みとその温度が増加していく様子が観測された。特に、火花破壊電圧に近い状態{印加電圧40kV(火花破壊電圧42kV)}では、棒電極先端に局所的に600K近い非常に温度の高い領域が形成されていることが明らかとなった。その他、透明電極を用いた棒電極の下方向からの放電観測や雰囲気ガス圧を変化させた場合など様々な実験条件で分光画像診断を行った。
2.平均電子エネルギー分布の測定について 採択後の研究で、気体温度分布の測定と同様に、大気中の正極性膜状コロナ放電を観測対象として分光画像診断を行った。診断の結果、印加電圧を25kVから40kVまで大きく増加しても、膜状コロナ中の平均電子エネルギー値の変化は小さいことが明らかになった。この結果から、膜状コロナ自身がつくりだす空間電荷電界が、棒電極付近の電界が弱めていることが推測できる。本電極配置で火花破壊電圧が42kVと非常に高い値となる理由は、この空間電荷電界によるコロナ安定化作用が働いていると考えられる。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
分光画像の撮影方法に改良を重ねて、分光画像診断によって得られるプラズマパラメータの二次元分布を研究開始当初よりも格段に鮮明なものにすることができた。加えて、分光画像撮影後のデータ処理のプロセスをプログラムによって自動化し、データ処理の際の人的誤差を無くすことで測定精度を向上させることができた。 また、気体温度の測定に関しては、分光画像診断で得られる発光強度比を気体温度(窒素分子の回転温度)へ換算するための較正データをを350から500Kの範囲で実測することができ、さらにその較正データを用いて、正極性膜状コロナ放電中の気体温度分布の定量測定まで行うことができた。平成26年度の研究目標は、「分光画像から得られる定性的な発光強度比データと気体温度及び平均電子エネルギーの数値的な相関関係を調査する。」ことであったため、気体温度に関しては、目標を達成したと言える。一方、平均電子エネルギー分布の測定に関しては、分光画像撮影に使用している狭帯域バンドパスフィルターの劣化進んでいるせいか、分光画像診断の結果が(気体温度測定の結果と比べて)やや不鮮明である。そのため使用するフィルターの再選定・再購入を現在検討している。 総括すると、気体温度測定に関しては予定よりも順調に進み、平均電子エネルギー測定に関しては、やや遅れているという進捗状況である。そのため達成度は「(2)おおむね順調に進展している。」とした。
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Strategy for Future Research Activity |
気体温度分布の測定に関しては、管内ガスを現有の放電管よりも高温度まで加熱することができる新たな放電容器を製作し、それを用いてより広範囲の較正データを得ることを計画している。目標は~600K程度を考えている。次に、平均電子エネルギーの測定に関しては、分光画像撮影に使用している狭帯域バンドパスフィルターを再選定・再購入を行い、より鮮明な平均電子エネルギー分布が得られるようにしたいと考えている。分光画像診断の結果が鮮明になり次第、速やかに定量化のための較正データ取得実験を開始する。 その後は、本研究課題の最終目標である「過渡的なプラズマ(ストリーマ放電等)の分光画像診断」を実現するために、高速ゲート付ICCDカメラ2台を同期させて、2種の分光画像を同時撮影できる光学系環境を整えて実験を遂行する。
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Causes of Carryover |
購入予定であった光学系物品が値下げされたため。
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Expenditure Plan for Carryover Budget |
劣化しやすいITO膜透明電極の予備を購入する。
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