2014 Fiscal Year Research-status Report
内湾生態系における陸上由来有機物に含まれる必須脂肪酸の重要性
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26820218
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Research Institution | Tohoku University |
Principal Investigator |
藤林 恵 東北大学, 工学(系)研究科(研究院), 助教 (70552397)
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Project Period (FY) |
2014-04-01 – 2016-03-31
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Keywords | 必須脂肪酸 / 炭素安定同位体比 |
Outline of Annual Research Achievements |
干潟や沿岸域には貴重な水産資源である二枚貝類などの底生動物が生息しており,どのような餌資源を利用しているかを明らかにすることは,干潟や沿岸域を管理していく上で有用である.主な餌資源としては,河川を通じて流入してくる陸上植物や海側で生産された植物プランクトンなどの藻類が想定されるが,これらの餌源の寄与度については不明な点が残されている.本研究では,宮城県蒲生干潟および広浦を対象として,底生動物が同化している餌の起源をバルクの炭素・窒素安定同位体比,脂肪酸バイオマーカー,そして脂肪酸の炭素安定同位体比を利用して解析した.バルクの炭素安定同位体比からは,干潟に生息するアサリやヤマトシジミなどの二枚貝の主な餌源は季節にかかわらず海洋性の植物プランクトンであることが示された.それに対して,陸上に由来する有機物の餌としての寄与は小さかった.また脂肪酸バイオマーカーから,二枚貝類は主に珪藻や渦鞭毛藻類を同化していることが分かった.ところが,脂肪酸ごとの炭素安定同位体比に注目すると,干潟に生息する二枚貝類はリノール酸やリノレン酸といった必須脂肪酸は陸域由来のものを同化していることが明らかとなった.リノール酸やリノレン酸は動物が合成することができず,餌から取り入れないといけない脂肪酸であるが,海域では主に海草などによって生産される.本研究の調査地点では周辺に藻場が存在しないために,二枚貝類は陸域由来のこれら必須脂肪酸を同化していたと考えられる.陸域由来の有機物の餌としての量的な寄与は小さいものの,一部の栄養素に関しては陸域由来のものを利用している実態が示された.
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
1: Research has progressed more than it was originally planned.
Reason
当初予定していた現場調査および分析が無事に終了した.得られた成果も予想と一致し,沿岸域に生息する二枚貝類はリノール酸やリノレン酸といった必須脂肪酸を陸域由来の有機物源に依存している実態をデータとして示すことができた. また、次年度に行う予定であったリノール酸やリノレン酸の重要度を評価するための飼育実験の予備実験を今年度内に行うことができた.
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Strategy for Future Research Activity |
リノール酸やリノレン酸は海草や海藻によっても生産される必須脂肪酸であるため,今後は藻場周辺の底生動物の餌の同化実態などを調査し,陸起源のリノール酸やリノレン酸が沿岸域の底生動物にどの程度影響しているのか把握する. また,リノール酸やリノレン酸が欠乏した時に底生動物の生残や繁殖にどのような影響を与えるか評価するために,当初予定した通り室内実験を行う.
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Research Products
(3 results)