2017 Fiscal Year Research-status Report
空間情報の処理を担う神経ネットワークの動作原理の解明
Project/Area Number |
26830006
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Research Institution | The University of Tokyo |
Principal Investigator |
豊島 有 東京大学, 大学院理学系研究科(理学部), 助教 (10632341)
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Project Period (FY) |
2014-04-01 – 2019-03-31
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Keywords | システム生物学 / モデル化とシミュレーション / ライブイメージング / 神経情報処理 / 線虫 |
Outline of Annual Research Achievements |
<1. カルシウムイメージングによる神経細胞の活性測定>について、4Dイメージングによって神経活動を測定する上では、神経細胞を同定して、同じクラスの神経細胞の活動を個体間で比較することが重要である。神経細胞の同定のためには細胞核が標準的な位置に存在する必要があるが、4Dイメージングの際に線虫を保定する微小流路内では、線虫が押しつぶされて核の配置が歪んでしまい、神経細胞の同定が困難になることがわかった。線虫をうまく保定しつつも核の配置が歪まないように、微小流路の形状を様々に調整した結果、最大150個(8割)程度の神経細胞を同定できるようになり、神経活動を個体間で比較できるようになった。 哺乳類の神経活動の解析においては、複数のスパイク列から意味のある信号を取り出すために、PCAやNMF、ICA等の粗視化手法が汎用される。150細胞程度が同定された2個体のデータについて、上記の粗視化手法を適用した結果、刺激依存的な神経活動を抽出するためにはICAが適切であることや、刺激依存的な神経活動は感覚神経の周辺に限局していることがわかった。 <2. 実験データに基づいた数理モデルの作成>について、英国MRCの小田およびde Bonoとの共同研究として、線虫の酸素走性行動の数理モデル化に取り組んだ。酸素感覚受容に関わる神経活動を測定し、刺激と応答の関係を再現する数理モデルを作成することに成功した。この感覚神経モデルの下流に、ピルエット機構を生み出す行動モデルを追加したところ、線虫の酸素走性行動の特徴を再現することができた。環境の感知から神経活動と行動を再現できる包括的な数理モデルの開発によって、環境の情報が神経系でどのように表現され、どのように行動出力へ結びつくかを定量的に明らかにすることができた。これらの成果をまとめた論文はPNAS誌に掲載された。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
昨年度の研究項目<1>に関する論文に加えて、本年度は研究項目<2>に関する論文を掲載することができた。
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Strategy for Future Research Activity |
引き続き<1. カルシウムイメージングによる神経細胞の活性測定>を行い、加えて<2. 実験データに基づいた数理モデルの作成>と<3.数理モデルの解析と動的特性の検証>を行う予定である。 <1>については、代表者の研究室に新たに設置されたスピニングディスク型共焦点顕微鏡を活用して、4Dイメージングのデータ取得を進め、詳細な個体間比較を行う。取得したデータの解析が律速になると考えられるので、神経細胞核の検出や追跡、細胞同定等において高精度化・自動化をさらに進める。また、本年度見出したICA法に加えて、カオス理論や深層学習なども活用して、全神経の活動の時系列データから、塩濃度勾配などの外部環境の情報がどのように神経回路中を伝播しているのか明らかにすることを目指す。 <2>については、本年度発表した酸素走性行動の数理モデルをベースとして、塩濃度刺激に対する感覚神経の応答を再現しつつ、塩濃度勾配のある環境中で好みの塩濃度へ集合する線虫の行動を再現できるような数理モデルの開発を目指す。
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Causes of Carryover |
本研究は本来H29年度までの予定であったが、最終的な成果をまとめるために時間的な猶予が必要となり、研究期間を延長することになったため。
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Research Products
(21 results)
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[Presentation] 4Dイメージングデータ内の密集した細胞核を正確に検出・追跡・定量する画像解析手法2018
Author(s)
豊島 有, Stephen Wu, 佐藤 研, 滝沢 拓己, 徳永 旭将, 広瀬 修, 金森 真奈美, 佐藤 博文, 寺本 孝行, Jang Moon-Sun, 久下 小百合, 石原 健, 吉田 亮, 飯野 雄一
Organizer
新学術領域「レゾナンスバイオ」平成29年度第二回班会議
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[Presentation] Neuronal signaling pathways estimated from whole-brain imaging data of C. elegans2017
Author(s)
Yuishi Iwasaki, Takayuki Teramoto,,Suzu Oe, Terumasa Tokunaga, Osamu Hirose, Stephen Wu, Yu Toyoshima, Moon Sun Jang, Ryo Yoshida, Yuichi Iino, Takeshi Ishihara
Organizer
第19回国際生物物理学大会(IUPAB2017)
Int'l Joint Research
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[Presentation] Mathematical methods to analyze imaging data in the whole central nervous system: From noise reduction to causality detection2017
Author(s)
Y. Iwasaki, T. Teramoto, S. Oe, T. Tokunaga, O. Hirose, S. Wu, Y. Toyoshima, M. S. Jang, R. Yoshida, Y. Iino, T. Ishihara
Organizer
21st International Worm Meeting
Int'l Joint Research
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[Presentation] 機能的全脳イメージングに必要な要素技術について2017
Author(s)
豊島 有, Stephen Wu, 滝沢 拓己, 佐藤 研, 徳永 旭将, 広瀬 修, 金森 真奈美, 佐藤 博文, 寺本 孝行, Jang Moon-Sun, 久下 小百合, 三上 秀治, 合田 圭介, 石原 健, 吉田亮, 飯野 雄一
Organizer
新学術領域「レゾナンスバイオ」平成29年度班会議
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[Presentation] 線虫の塩走性行動の包括的理解に向けた全中枢神経活動と行動の高精度同時計測2017
Author(s)
豊島 有, 佐藤 研, 三上 秀治, Stephen Wu, 佐藤 博文, Jang Moon-Sun, 金森 真奈美, 滝沢 拓己, 大江 紗, 寺本 孝行, 徳永 旭将, 広瀬 修, 合田 圭介, 石原 健, 吉田亮, 飯野 雄一
Organizer
新学術領域研究「生物移動情報学」領域会議
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[Presentation] Bio-image informatics for whole brain activity imaging of C. elegans2017
Author(s)
Yu Toyoshima, Stephen Wu, Hiroki Takizawa, Ken Sato, Terumasa Tokunaga, Osamu Hirose, Manami Kanamori, Hirofumi Sato, Takayuki Teramoto, Moon-Sun Jang, Sayuri Kuge, Hideharu Mikami, Keisuke Goda, Takeshi Ishihara, Ryo Yoshida, Yuichi Iino
Organizer
CREST symposium [COMPUTATIONAL PRNCIPLES OF THE NERVOUS SYSTEM]
Int'l Joint Research / Invited
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[Presentation] Bio-image informatics for whole brain activity imaging2017
Author(s)
Yu Toyoshima, Stephen Wu, Hiroki Takizawa, Ken Sato, Terumasa Tokunaga, Osamu Hirose, Manami Kanamori, Hirofumi Sato, Takayuki Teramoto, Moon-Sun Jang, Sayuri Kuge, Hideharu Mikami, Keisuke Goda, Takeshi Ishihara, Ryo Yoshida, Yuichi Iino
Organizer
新学術領域「レゾナンスバイオ」若手の会 Joint Young Researchers' Meeting at Academia Sinica
Int'l Joint Research / Invited
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[Presentation] 線虫の全脳イメージングによる行動を制御する情報処理機構の解析2017
Author(s)
大江紗, 勝目拓海, 寺本孝行, 豊島有, 徳永旭将, Wu Stephan, 広瀬修, Moon-Sun Jang, 佐藤博文, 滝沢拓己, 久下小百合, 岩崎唯史, 吉田亮, 飯野 雄一, 石原 健
Organizer
第40回日本神経科学大会
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[Presentation] 線虫の全中枢神経イメージングによる神経活動と感覚運動情報との関連解析2017
Author(s)
飯野雄一, 豊島有, 寺本孝行, Wu Stephen, Moon-Sun Jang, 滝沢拓己, 徳永旭将, 佐藤博文, 広瀬修, 大江紗, 久下小百合, 岩崎唯史, 吉田亮, 石原健
Organizer
第40回日本神経科学大会
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[Presentation] 線虫のwhole-brainイメージングデータに関する因果性解析2017
Author(s)
Yuishi Iwasaki, Takayuki Teramoto,,Suzu Oe, Terumasa Tokunaga, Osamu Hirose, Stephen Wu, Yu Toyoshima, Moon Sun Jang, Ryo Yoshida, Yuichi Iino, Takeshi Ishihara
Organizer
第55回日本生物物理学会大会
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[Presentation] How taste preference is modulated in the nematode2017
Author(s)
Yuichi Iino, Takashi Nagasima, Hirofumi Sato, Jang Moon-Sun, Suzu Oe), Yu Toyoshima, Masahiro Tomioka, Hirofumi Kunitomo, Stephen Wu, Ryo Yoshida, Yuishi Iwasaki, Takeshi Ishihara
Organizer
The 16th International Symposium on Molecular and Neural Mechanisms of Taste and Olfactory Perception
Int'l Joint Research / Invited