2014 Fiscal Year Research-status Report
悪性中皮腫における腫瘍生存・増殖、抗がん剤抵抗性機序の解明とその応用
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26830116
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Research Institution | Hyogo Medical University |
Principal Investigator |
篠原 義康 兵庫医科大学, 医学部, 助教 (60723509)
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Project Period (FY) |
2014-04-01 – 2016-03-31
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Keywords | 悪性中皮腫 / オートファジー / 小胞体ストレス応答 / 細胞増殖、生存 / 抗がん剤抵抗性 |
Outline of Annual Research Achievements |
オートファジーは、細胞内で異常な蛋白質の蓄積を防いだり栄養環境が悪化したときに蛋白質をリサイクルするための機構であり、小胞体ストレス応答は、ストレスに適応することで細胞死を回避するための防御機構である。本研究では、悪性中皮腫の生存・増殖、抗がん剤抵抗性における小胞体ストレス応答、オートファジーの役割およびその分子メカニズムを解明することを目的として、以下の実験を行った。 オートファジーが活性化されると、細胞質内にLC3蛋白質が増加、集積してオートファゴソームが形成される。そこで、先ず、悪性中皮腫細胞株と培養中皮細胞を用いてLC3蛋白質のウエスタンブロッティングを行い、悪性中皮腫におけるオートファジー活性について検討した。多くの悪性中皮腫細胞株では、培養中皮細胞に比較して、LC3が強く発現していた。次に、レンチウイルスを用いて、GFP-LC3融合蛋白質を発現する悪性中皮腫細胞株を作製して、細胞内のオートファゴソームの局在や動態を可視化できる実験系を構築した。この実験系を用いて、悪性中皮腫細胞を経時的に観察すると、通常の培養条件においても細胞質内に多数のオートファゴソームの形成がみられた。また、悪性中皮腫細胞をオートファジー阻害薬で処理すると、細胞増殖、生存が抑制された。以上より、悪性中皮腫細胞では、恒常的にオートファジーが活性化していて、細胞の増殖、生存に深く関与していると考えられる。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
GFP-LC3融合蛋白質を発現する悪性中皮腫細胞株を作製して、細胞内のオートファゴソームの局在や動態を可視化できる実験系を構築した。この実験系は、悪性中皮腫においてオートファジーを誘導する薬剤および阻害する薬剤のスクリーニングに有用であり、今後の研究を進めるにあたり重要なツールになると考えられる。また、悪性中皮腫では、恒常的にオートファジーが活性化し、細胞の増殖、生存に重要な役割を果たす知見が得られたので、オートファジーを標的とした新規治療法の開発に繋がる可能性がある。
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Strategy for Future Research Activity |
1.悪性中皮腫細胞を抗がん剤で処理した際、オートファジーや小胞体ストレス応答が誘導されるかどうかを検討する。 2.悪性中皮腫における抗がん剤感受性が、オートファジーによる抗がん剤の分解に関与するのか検討する。 3.悪性中皮腫細胞のオートファジー関連遺伝子、小胞体ストレス応答に関与する遺伝子を調節し、抗がん剤抵抗性に関与するのか検討する。 4.悪性中皮腫においてオートファジー、小胞体ストレス応答を抑制する薬剤と抗がん剤との併用療法の有用性について検討する。 5.In vivoモデルを用いて検証を行う。
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Causes of Carryover |
前年度の補助金については、主に物品(消耗品)の購入に使用したが、使用計画していた物品を変更したこと、物品の価格が変更していたこと、効率的に研究を行うことができたことなどにより、次年度使用額が生じた。
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Expenditure Plan for Carryover Budget |
次年度使用額は、平成27年度の研究を円滑に進めるための物品購入に使用する予定である。
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