2015 Fiscal Year Annual Research Report
構造情報に立脚した変異型IDH1/2抗体MsMab-1/-2の多重特異性の改良
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26840015
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Research Institution | Tohoku University |
Principal Investigator |
小笠原 諭 東北大学, 医学(系)研究科(研究院), 助教 (30546685)
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Project Period (FY) |
2014-04-01 – 2016-03-31
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Keywords | モノクローナル抗体 / 多重特異性 / X線結晶構造解析 |
Outline of Annual Research Achievements |
イソクエン酸デヒドロゲナーゼ(IDH)の活性中心アルギニン残基の変異により、酵素活性が変化することがグリオーマ発症の原因の一つである。これまで我々は、IDH変異を見分けるモノクローナル抗体をいくつか樹立しており、その中で1種類の抗体で複数種の変異を見分けることのできる多重特異性をもつ抗体MsMab-1,-2を樹立した。これらの立体構造を知ることで、さらに広範囲の変異を見分ける抗体への改変を目指し、研究を進めてきた。 平成26年度では、MsMab-2の結晶化を重点的に行ってきたが、収量等に問題があり良好な結晶を得ることができなかった。同時に新たな多重特異性を持つ抗体樹立を目指し、MsMab-3を得たが、この抗体はペプチド抗原には反応するものの、タンパク質抗原には反応しなかった。 平成27年度では、MsMab-2, -3の結晶化と、共同研究で先行しているMsMab-1の基質特異性改変を行った。MsMab-3は無血清培地から約15mg/mlと高収量で精製標品を得ることができた。 MsMab-1は結晶構造解析の結果から、118残基目のヒスチジン残基がIDH1の132残基目のアルギニンがセリンに変異している部分に結合し、基質特異性を与えていることが示唆された。このことから、118残基目のヒスチジン残基をアラニン残基へと置換した変異体を作製して発現・精製を行い、基質特異性を検討したところ、多重特異性のバラエティが狭くなり、IDH1-R132S/G、およびIDH2-R172Mにのみ反応することが明らかとなった。 以上のことから、多重特異性を有するMsMab抗体の構造解析を明らかにして比較することで、新たな基質特異性の抗体を理論的に作製できる可能性が示唆された。
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