2014 Fiscal Year Research-status Report
メチル化DNAを含むヌクレオソームの構造生物学的解析
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26840025
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Research Institution | Waseda University |
Principal Investigator |
越阪部 晃永 早稲田大学, 理工学術院, 助教 (70632107)
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Project Period (FY) |
2014-04-01 – 2016-03-31
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Keywords | クロマチン / ヌクレオソーム / メチル化DNA / ヒストン / CpGダイヌクレオチド |
Outline of Annual Research Achievements |
本研究の目的は、メチル化DNAがクロマチンの高次構造形成に与える影響を、構造生物学的手法によって明らかにすることである。真核生物において、CpGダイヌクレオチドのメチル化が遺伝子発現の制御と深く関与することから、遺伝情報を担うゲノムDNAのメチル化機構はエピジェネティクス研究分野において重要である。一方、真核生物において、遺伝子発現などの核内で行われる全てのDNA反応に対応して、クロマチンがダイナミックに構造変換する。これまでの報告から、DNAのメチル化がクロマチンのダイナミクスやそれに伴うDNAの機能発現制御に重要であると考えられている。しかし、DNAのメチル化がクロマチンの構造へ与える影響は依然不明である。そこで本研究では、セントロメア周辺領域(ペリセントロメア)に存在し、DNAメチル基転移酵素であるDNMT3Bによってメチル化されることが知られている160塩基対のサテライト2配列に着目した。リコンビナントタンパク質として精製したヒストン複合体と試験管内でM.SssI DNAメチル基転移酵素によってメチル化したサテライト2 DNAを用いて、ヌクレオソームを試験管内で再構成した。次に、再構成したヌクレオソームに対してヌクレアーゼを加え、ヌクレオソームの形成によって保護される146塩基対程度のDNA断片を取得した。得られたDNA断片を次世代シーケンサーによって塩基配列の解析を行った結果、DNAのメチル化によってヌクレオソームの配置が変化することが示唆された。さらに、次世代シーケンサーによる解析から得られた知見をもとに、ヌクレオソームの配置が確認された146 塩基対のDNA断片を大量調製した。その後、試験管内でメチル化反応を施したDNA断片を含むヌクレオソームを再構成・精製し、結晶化を行った。その結果、メチル化DNAを含むヌクレオソームの単結晶を得ることに成功した。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
1: Research has progressed more than it was originally planned.
Reason
本研究によって、特定の塩基に試験管内でメチル化反応を施したDNAの高純度精製を行い、メチル化DNAを含むヌクレオソームを試験管内で再構成した。再構成ヌクレオソームを用いた生化学的解析から、メチル化DNAの導入によってヌクレオソームの配置が変化することを新たに見出した。このことから、エピジェネティクス制御に重要なマークであるDNAのメチル化がクロマチン構造の変換に直接的に作用することが示唆された。さらに、DNAのメチル化がヌクレオソームの立体構造へ与える影響を構造生物学的に解析するために、ヌクレオソームの再構成に用いるDNA断片を次世代シーケンサーによる解析から決定し、大量に調製した。調製したDNAを本研究で確立した手法によって試験管内メチル化反応を行い、146塩基対のメチル化DNAを含むヌクレオソームの再構成および高純度精製を行った。精製後、ハンギングドロップ蒸気拡散法によってメチル化DNAを含むヌクレオソームの結晶化を行った。その結果、メチル化DNAを含むヌクレオソームの単結晶を得ることに成功した。今後の研究展開により、メチル化DNAを含むヌクレオソームの原子分解能での立体構造を、世界に先駆けて発表することができると確信している。以上より、これらの成果は当初の計画を大きく上回り、本研究の進展が得られたと考える。
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Strategy for Future Research Activity |
本研究により、メチル化DNAを含むヌクレオソームの結晶化に成功した。今後、得られた単結晶を大型放射光施設SPring-8もしくはPhoton FactoryにてX線回折データを取得する。得られた回折データを基に電子密度を求め、メチル化DNAを含むヌクレオソームの立体構造を決定する。決定した立体構造と非メチル化DNAを含むヌクレオソームの立体構造との比較を行い、DNAのメチル化がヌクレオソームへ及ぼす構造的影響を明らかにする。さらに、近年の報告から、DNAのメチル化とヒストンの非対立遺伝子的な亜種(バリアント)との間でクロマチンの高次構造形成等における関連性が示唆されている。そこで、本研究で用いた手法を用いて、ヒストンバリアントとメチル化DNAを含むヌクレオソームを試験管内で再構成し、これらがヌクレオソーム構造へ与える影響を生化学的手法や構造生物学的手法によって明らかにする。さらに、平成26年度に行われた研究により、メチル化DNAがヌクレオソームの配置を変化させることが示唆された。このことから、DNAのメチル化がヌクレオソーム中のメチル化シトシンの位置を規定し、メチル化DNA認識タンパク質によるヌクレオソーム中のメチル化シトシンへの結合に影響を与えることが考えられる。今後、メチル化DNA認識タンパク質をリコンビナントタンパク質として精製し、メチル化もしくは非メチル化DNAを含むヌクレオソームへの結合活性をゲルシフトアッセイ等の生化学的解析によって評価する。これらの解析によって、DNAのメチル化によるクロマチン構造の変換機構とその意義を明らかにしたいと考えている。
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Research Products
(5 results)
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[Journal Article] N-terminal phosphorylation of HP1α increases its nucleosome-binding specificity.2014
Author(s)
Nishibuchi G., Machida S., Osakabe A., Murakoshi H., Hiragami-Hamada K., Nakagawa R., Fischle W., Nishimura Y., Kurumizaka H., Tagami H., Nakayama J.
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Journal Title
Nucleic Acids Research
Volume: 42
Pages: 12498-12511
DOI
Peer Reviewed / Open Access
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