2014 Fiscal Year Research-status Report
ポリADPリボシル化による癌抑制型マイクロRNAプロセシングの制御機構
Project/Area Number |
26840043
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Research Institution | National Institute of Advanced Industrial Science and Technology |
Principal Investigator |
杉本 崇 独立行政法人産業技術総合研究所, バイオメディカル研究部門, 研究員 (80635285)
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Project Period (FY) |
2014-04-01 – 2016-03-31
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Keywords | マイクロRNA / 癌化 / ポリADPリボース / ポリウリジル化 |
Outline of Annual Research Achievements |
let-7は細胞の発生分化や癌抑制だけでなく、糖代謝やアポトーシスなど様々な高次生命現象を制御するマイクロRNAである。近年の研究からES細胞や特定の癌細胞種においてlet-7の前駆体RNA (pre-let-7)の3'末端がポリウリジル化され、成熟型let-7の生成が抑制される現象が発見された。このことからpre-let-7のポリウリジル化は細胞の万能性維持や癌化を引き起こす新たな機構として注目されているが、反応制御機構の詳細は未解明である。そこで、本研究ではpre-let-7のポリウリジル化反応を制御する新規因子の同定を試みた。
以前の解析から、ポリウリジル化酵素であるTUT7に結合する因子としてポリADPリボシル化因子PARP13を同定し、ポリADPリボースがTUT7に特異的に結合することを見出していた。これらの結果を踏まえて、本研究課題では試験管内ポリウリジル化アッセイを行い、ポリADPリボースがTUT7に結合するとpre-let-7のポリウリジル化が顕著に低下することを明らかにした。また、PARG(ポリADPリボース分解酵素)遺伝子をsiRNAによりノックダウンすると、pre-let-7のポリウリジル化の効率が顕著に低下することが分かった。一方、成熟化let-7の発現量は増大した。
ポリADPリボースは細胞がストレスに晒された時に誘導される特徴があるため、TUT7のポリADPリボースによる制御はストレスに応じて遺伝子発現を調節し、生体恒常性を維持するための機構の一つなのではないかと考えている。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
ポリADPリボースが生体内で蓄積するとpre-let-7ポリウリジル化を負に制御することを試験管内及び細胞内のアッセイを用いて示すことが出来た。本年度の結果はpre-let-7のポリウリジル化を制御する新規因子の探索と解析という、本研究目的・計画に沿った成果であり、概ね研究は順調に進んでいると言える。また、国内外の学会で成果発表を行った。
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Strategy for Future Research Activity |
ポリADPリボースは細胞がストレスに晒された際に生合成が誘導され、一時的に生体内に蓄積することが知られている。また、ポリADPリボースはストレス存在下で形成されるストレス顆粒と呼ばれる構造体の形成に深く関わっていることが近年報告された。そこで、TUT7のポリADPリボシル化がどのようなストレス存在下で引き起こされるのかその生理的条件を明らかにし、TUT7がストレス顆粒に局在するか否かについても免疫染色法により解析する予定である。これらの解析を通してストレス応答の新たなメカニズムの一端を明らかに出来ると考えている。
また、TUT7のポリADPリボシル化機構について詳細な解析を実施する。ポリADPリボシル化には共有結合型と非共有結合型があるが、TUT7の場合いずれかを明らかにする。また、PARP13は自身では、ほとんど活性を有さず、他の活性型PARPホモログと共同的に機能すると考えられている。そこで、どの活性型PARPホモログがTUT7のポリADPリボシル化に関わっているかについても解析する予定である。
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Research Products
(2 results)