2014 Fiscal Year Research-status Report
マイクロドメインにおける光受容体フォトトロピンシグナリングの解明
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26840097
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Research Institution | Kyoto University |
Principal Investigator |
末次 憲之 京都大学, 生命科学研究科, 助教 (60514156)
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Project Period (FY) |
2014-04-01 – 2016-03-31
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Keywords | 光受容体 |
Outline of Annual Research Achievements |
本年度は、(1)シロイヌナズナにおけるNPH3-GFP の局在解析、(2)シロイヌナズナNCH1 のフォトトロピンシグナリングにおける役割、(3)ゼニゴケにおけるNPH3とNCH1 ホモログの解析を行った。 (1)NPH3-GFP は黄化芽生えや葉の表皮細胞の細胞膜上で粒状構造を形成しているが、黄化芽生えにおいてNPH3-GFP の粒状構造が光照射により細胞質に現れることが観察されたが、葉では顕著な局在変化は観察されなかった。黄化芽生えによるNPH3-GFP 光照射による局在変化は青色光だけでなく赤色光によっても誘導されたことから、青色光受容体フォトトロピンのシグナル伝達におけるNPH3の局在変化の役割は不明である。 (2)nch1変異体において光屈性は正常であるが葉緑体運動に異常が見られたので、フォトトロピンにより制御される他の現象に関しても調べた。フォトトロピン依存の青色光による気孔開口と葉の展開を調べたところ、nch1変異体はどちらの反応も正常であった。このことから、NCH1 は葉緑体運動に特異的な因子であることがわかった。 (3)フォトトロピン/NPH3ファミリーのマイクロドメインシグナリングの陸上植物における保存性を検証するため、ゼニゴケNPH3とNCH1 ホモログの解析を行った。ゼニゴケnch1 ノックアウトはシロイヌナズナ同様葉緑体光定位運動を欠損していたので、NCH1 の葉緑体運動における機能は保存されていることがわかった。ゼニゴケnph3 ノックアウトの解析は現在進行中である。NPH3 とNCH1 の局在を解析するため、NPH3 あるいはNCH1 のC-末端側に蛍光タンパク質Citrineを融合したタンパク質を発現するラインを作出したので、融合タンパク質の機能性と細胞内局在を観察する予定である。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
申請者は平成26年4月から京都大学河内研究室に異動したため、モデル植物としてシロイヌナズナだけでなくゼニゴケを利用することにした。そのため当初の目的であったプロテオーム解析に関しては、シロイヌナズナではなくゼニゴケを用いて行うことにした。すでにゼニゴケNPH3 とNCH1 のCitrine融合タンパク質を発現する形質転換体は作出しているので、市販の抗体カラムを使用してゼニゴケNPH3 とNCH1の結合タンパク質を免疫沈降により精製し、プロテオーム解析する予定である。また、ゼニゴケNCH1 がフォトトロピンによる葉緑体運動を制御することを明らかにし、フォトトロピンによるNPH3ファミリーマイクロドメインシグナリングが陸上植物の基部に位置する植物ですでに獲得されていた可能性を示唆する結果を得た。シロイヌナズナにおけるNCH1 に関して論文がほぼ出来上がったが、ゼニゴケでの結果を論文に加えることにより、論文のインパクトがあがったことは、特筆に値する。
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Strategy for Future Research Activity |
すでに作出済みのゼニゴケNPH3-Citrine とNCH1-Citrine の形質転換体を用いて、NPH3 とNCH1 の結合タンパク質のプロテオーム解析を行う予定である。形質転換体のうち、Citrineを認識するGFP 抗体を用いて発現量の多いラインを選抜し、細胞分画により膜局在を確認する。GFP 抗体によるNPH3-CitrineあるいはNCH1-Citrineの免疫沈降により共沈したタンパク質をマス解析する予定である。シロイヌナズナでも同様の解析を行いたい。 また、ゼニゴケはシロイヌナズナよりも体制が単純で顕微鏡観察が容易なので、NPH3-Citrineラインを用いてゼニゴケでもNPH3 がマイクロドメイン用構造をとるかどうか、また光による局在変化が起こるかなど検証したい。 NPH3 とNCH1 のキメラタンパク質を発現するそれぞれのノックアウト株で発現する形質転換体を作成し、NPH3ファミリータンパク質の機能ドメイン、特にフォトトロピンにより制御される各現象を特異的に制御するために必要なドメインの決定を行いたい。
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Causes of Carryover |
研究が順調に進行したため、次年度に費用のかかる実験をする必要が出たので節約した。
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Expenditure Plan for Carryover Budget |
費用のかかる消耗品費として使用する。
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