2017 Fiscal Year Annual Research Report
Economic analysis on changes in social customs and farm household behavior/female labor participation in rural Turkey
Project/Area Number |
26850147
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Research Institution | Hitotsubashi University |
Principal Investigator |
丸 健 一橋大学, 経済研究所, 講師 (10721649)
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Project Period (FY) |
2014-04-01 – 2018-03-31
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Keywords | トルコ / 社会慣習 / 労働市場 |
Outline of Annual Research Achievements |
経済学分野では社会慣習は家計内資源配分におけるジェンダー差別発生要因の一つとして取り上げられるが,社会慣習を中心問題として扱い,メカニズムを定量的に分析した研究は限られる.本研究課題は,トルコ共和国農村部を事例に,社会慣習の変容と社会慣習が農家行動・家計内意思決定メカニズム,特に女性労働参加に及ぼす影響を経済学的に研究することを目的としている. 平成29年度は,当初の予定通りトルコ共和国アダナ県にて現地調査を現地のカウンターパートと共におこなった.また,この現地調査結果や研究課題遂行中に得られた知見を踏まえた論文を現在執筆中であり,近々学術雑誌に投稿予定である.この論文では,シリア内戦に伴い発生した難民のトルコへの流入によってトルコ農村部における労働市場にどのような影響が現れたのかを,トルコの統計局が毎年実施している大規模統計データを用いて分析している.特に高齢者層や女性に対して負の影響が表れており,女性労働に関しては本研究課題がこれまで分析してきた社会慣習の影響が出ていると考えられる,という結果を得た.農村部では依然として,女性が知らない他人の目に晒されるのは好ましくない,という社会慣習が残っている.シリア難民が押し寄せることで非正規労働市場にも難民が参入するようになったため,農村部女性は外部労働参加を諦めて家の中に入った可能性がある.また,シリア内戦が激化した平成26年以降とそれより前とでは影響の出方が異なっていることも明らかになった. この他,平成28年度に公表した結果の応用研究が論文として採択決定となった.この研究では,女性労働に関する社会慣習の有無によって,気象変化が農業生産に及ぼす影響に差が生じてくるのかを分析している.
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