2015 Fiscal Year Research-status Report
茶園土壌からの一酸化二窒素(N2O)発生量を予測する基礎モデルの構築
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26850155
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Research Institution | National Agriculture and Food Research Organization |
Principal Investigator |
廣野 祐平 国立研究開発法人農業・食品産業技術総合研究機構, 果樹茶業研究部門茶業研究領域, 主任研究員 (10391418)
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Project Period (FY) |
2014-04-01 – 2017-03-31
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Keywords | 一酸化二窒素 / 茶 / 土壌 / ベイズ推定法 |
Outline of Annual Research Achievements |
野菜茶業研究所内の試験茶園(品種:やぶきた)において、平成26年8月から開始した温室効果ガス自動採取装置を用いたN2Oフラックスの高頻度観測を継続した。うね間土壌からのN2Oフラックスの高頻度観測に加えて、土壌水分量および地温を1時間おきに自動測定した。さらに、土壌を1~2週間に1度程度採取し、土壌pH、無機態窒素濃度等を測定した。以上の圃場での観測は平成27年8月まで行った。 また、これまでに観測された土壌中の無機態窒素濃度等のデータからN2Oフラックスを予測し、N2Oの生成要因を明らかにすることを目指した。N2Oの生成経路として硝化および脱窒を考慮し、硝化および脱窒由来のN2O発生量の予測には、それぞれアンモニア態窒素(NH4-N)濃度および硝酸態窒素(NO3-N)濃度に比例する一次反応モデルを用いた。反応速度定数の地温への依存性にはArrhenius式を、土壌水分量への依存性にはWalker式を用いた。反応速度定数や、地温・水分量に対する依存性に関する各パラメータの推定は、ベイズ推定法に基づくパラメータ推定法により行った。パラメータ推定には、JAGS 4.0.0およびRを用いた。パラメータ推定の結果、本調査データにおけるN2O発生量に対しては、硝化由来の発生量が大部分を占め、総発生量に対して硝化の寄与が脱窒の寄与よりも大きいことが示唆された。さらに、推定されたパラメータを用いて、異なる年次に同一試験茶園で調査された異なる施肥処理条件下でのN2O発生量を計算したところ、実測値をよく再現できたことから、推定されたパラメータの妥当性が確認された。 以上の通り、精度の高い観測結果と良好な解析結果が得られており、次年度にこれまでに得られた観測データに基づいたパラメータ推定を行うことで、予測の精緻化が期待できる。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
平成26年度に開始した試験茶園におけるN2Oフラックスの高頻度観測を、計画通り完了した。また、土壌の無機態窒素濃度、地温、体積含水率についても施肥や気象条件に対しての反応が認識できる、精度のよいデータが取得できた。さらに、観測データにマルコフ連鎖モンテカルロ(MCMC)法を用いたベイズ推定法を適用することにより、N2Oフラックスの実測値を精度よく再現した計算値が得られたことから、概ね順調に進展していると判断した。
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Strategy for Future Research Activity |
平成28年度には、平成26、27年度に得られた観測結果にMCMC法を用いたベイズ推定法を適用して、N2Oフラックスに関係する各種パラメータの推定値を更新し、推定精度を向上させるとともに、過去に得られた複数のデータを用いて、計算値と実測値を比較することにより、推定したパラメータの妥当性を評価する。
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