2015 Fiscal Year Annual Research Report
細胞内シグナルを標的とした定量プロテオミクスによる統合失調症の発症機構解明
Project/Area Number |
26860057
|
Research Institution | Kumamoto University |
Principal Investigator |
平山 未央 熊本大学, その他の研究科, 助教 (90706483)
|
Project Period (FY) |
2014-04-01 – 2016-03-31
|
Keywords | 統合失調症 / プロテオミクス |
Outline of Annual Research Achievements |
本研究では、統合失調症の発症機構解明のために、質量分析技術とネットワーク解析を組み合わせることで統合失調症において特異的に変動している分子シグナルの同定を行った。健常者の死後脳10検体と統合失調症患者死後脳10検体の前頭葉を細胞質・原形質膜画分に分画し、酵素消化して得たペプチドを用いてタンパク質網羅的発現解析を行った。網羅的解析の結果、疾患で発現変動したペプチドを選択し、安定同位体標識を行った内部標準ペプチドを用いて高感度の質量分析計で相対比較定量解析を行った。定量解析の結果、患者で15個のペプチドが増加し、また39個のペプチドが有意に減少していることが明らかとなった。定量データをネットワーク解析ソフトKeymolnetにインポートして解析した結果、ERK1を含むGタンパク質シグナル経路から構成される分子ネットワークが検出できた。 各シグナル分子間での検体の発現量の比較によって、シグナルの方向性の検討行った結果、上流分子の発現量と下流の分子の発現量との相関(Pearson correlation R>0.6, p<0.05 )が示された。従って上流シグナルの発現量が下流分子に影響を与えている可能性が示唆された。ネットワークの最下流で翻訳調節因子の一つであるeIF4G2は、神経細胞の軸索伸長への関与が報告されており、またeIF4G2の下流分子の候補であるCYFIP1が患者で発現減少していることが明らかとなった。CYFIP1はアクチン重合を制御し、スパインの安定化を担い神経細胞の局所翻訳に関与しており、このタンパク変異と自閉症や統合失調症との関与が指摘されている。従って統合失調症では本研究で明らかとなったシグナルと局所翻訳の減弱が示唆された。本研究成果は、統合失調症の発症メカニズムや創薬に新たな知見を与えるものだと考える。
|