2014 Fiscal Year Research-status Report
トランスポーター発現調節と腸内細菌叢変動を標的とした新規慢性腎臓病治療法の開発
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26860094
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Research Institution | Tohoku University |
Principal Investigator |
秋山 泰利 東北大学, 東北メディカル・メガバンク機構, 助教 (70635557)
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Project Period (FY) |
2014-04-01 – 2017-03-31
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Keywords | 尿毒素 / 血液透析 / 腸内細菌叢 |
Outline of Annual Research Achievements |
これまで申請者らは、慢性腎臓病患者の血清および慢性腎不全モデルラットの血漿をキャピラリー電気泳動質量分析(CE-MS)にて網羅的に解析し、腎機能低下に伴い体内に蓄積する代謝性物質を数多く同定している。維持透析患者では貧血、骨ミネラル代謝異常、心血管系疾患などのさまざまな合併症が問題となり、その原因として尿毒症物質の関与が想定されている。透析患者においては透析が尿毒症物質を除去する唯一の手段となるが、透析における各種尿毒素の血中濃度、および透析患者の代謝動態はほとんど知られていないのが現状である。 今回申請者は、標準的なダイアライザーにて4 時間 / 回、週3回の平均的な血液透析を行っている慢性維持透析患者の透析前後の血清を用いてCE-MSによる代謝性物質の網羅的解析を行い、検出された122項目の血中濃度を測定した。さらに各物質の濃度を、これまで申請者らが報告(Hypertens Res 2010)した、 非透析CKD 患者41 名の血中濃度と比較し、保存期腎不全患者に対し透析患者で特異的に蓄積する尿毒素の同定を行った。この成果は透析におけるさまざまな代謝性物質の除去の特性を明らかにするものであり、また透析患者特異的な病態・代謝動態を示唆すると考えられ、腎不全治療とための有益な情報となると考えられたため現在論文作成中である。 さらに腸内細菌叢が産生源となる尿毒症物質を網羅的に明らかにすることを目的に、アデニン食負荷にて腎不全を作成したマウスに抗生剤を投与し腸内細菌叢を殺菌したマウスの血漿および尿をCE-MSにて解析した。この成果は、腸内細菌叢由来の尿毒症物質の同定だけでなく、腸内細菌叢の変化に伴う体内の代謝動態の変化を示す有益な情報となると考えられ、現在詳細な解析を行っている。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
本研究は尿毒症物質の除去を焦点に当て、その治療標的として透析、腸管(腸管での吸着および腸内細菌叢)、トランスポーターに着目している。このうち本年度は透析における除去および非透析慢性腎臓病患者との比較を行い、透析による各種代謝性物質の血中濃度および除去効率を明らかにし、さらに腸内細菌叢の尿毒症物質への関与を明らかにするための動物実験も進行し、データも蓄積していることから、おおむね計画どおりに進展していると考えられる。
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Strategy for Future Research Activity |
引き続き当初の計画どおり尿毒症物質の除去による慢性腎不全治療法の確立を目的とし、その標的として透析、腸管(腸管での吸着および腸内細菌叢)、トランスポーターの発現調整などの実現性を検討して行く。 まず透析患者特異的な病態への関与が疑われる候補物質を培養細胞における毒性試験 (cell viability assay、酸化ストレス産生能など)にて評価し、さらに毒性が示唆された物質をマウスおよびラットに投与し、動脈硬化、酸化ストレス、血圧、血液生化学検査所見などを指標に in vivo での毒性評価を行う。 加えて腸内細菌叢の調整が、尿毒症物質の産生低下を介した新規慢性腎不全治療法となりうるかを明らかにするため、アデニン誘発性腎不全マウスに対し乳酸菌製剤や食物繊維などを投与し、血中尿毒症物質の濃度低下や腎機能の改善が認められるかを検討していく。
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Causes of Carryover |
当初、アデニン食による腎不全マウスの血漿をガスクロマトグラフ質量分析計にて解析することを計画していたが、分析計の設置が予定より遅れており、測定を次年度に延期せざるを得なくなったため。
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Expenditure Plan for Carryover Budget |
次年度中には解析が可能と考えられるため、当初の計画どおり繰越分は質量分析のための費用として計上する予定である。
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[Journal Article] Alteration of the Intestinal Environment by Lubiprostone Is Associated with Amelioration of Adenine-Induced CKD2014
Author(s)
Eikan Mishima, Shinji Fukuda, Hisato Shima, Akiyoshi Hirayama, Yasutoshi Akiyama, Yoichi Takeuchi, Noriko N Fukuda, Takehiro Suzuki, Chitose Suzuki, Akinori Yuri, Koichi Kikuchi, Yoshihisa Tomioka, Sadayoshi Ito, Tomoyoshi Soga, and Takaaki Abe
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Journal Title
J Am Soc Nephrol
Volume: 26
Pages: 1-8
DOI
Peer Reviewed
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