2015 Fiscal Year Annual Research Report
がん関連分子パターンの同定とそれによる自然免疫受容体活性化メカニズムの解析
Project/Area Number |
26860316
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Research Institution | The University of Tokyo |
Principal Investigator |
生島 弘彬 東京大学, 生産技術研究所, 助教 (80719154)
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Project Period (FY) |
2014-04-01 – 2016-03-31
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Keywords | 抗腫瘍免疫 / 自然免疫 |
Outline of Annual Research Achievements |
がんに対する免疫療法は、これまで主に適応免疫系によるがん制御という観点から精力的に研究されており、適応免疫への橋渡しをしている自然免疫に焦点を当てた研究は比較的遅れをとっている状況と言える。実際、外来からの感染に対して、生体内ではまず病原体関連分子パターン(pathogen-associated molecular pattern; PAMP)が認識され、自然免疫システムが活性化し、それを受けて適応免疫系が活性化されることが広く知られている。 そこで、本研究者らは、自然免疫受容体によるによるがん認識システムの存在を想定し、その仮説を検証してきた。その中で、自然免疫受容体の一つであるDectin-1ががん細胞を認識することにより、抗腫瘍免疫応答を惹起していることを明らかにした。Dectin-1欠損マウスにおいては、正常マウスに比して著明ながん転移が観察される他、Dectin-1欠損マウス由来の自然免疫担当細胞は、NK細胞のがん細胞傷害活性を増強させる効果が減弱していることが確認された。さらに可溶型Dectin-1を作成し、がん細胞への結合を検討した結果、Dectin-1はがん細胞上の分子構造を直接認識することで、抗腫瘍免疫応答を惹起させていることが明らかとなった。なお、Dectin-1はメラノーマ細胞B16F1を含むいくつかのがん細胞を認識するが、MEF (mouse embryonic fibroblast)を含む正常細胞は認識しないことも明らかとなった。本研究成果は世界に先駆けて自然免疫受容体による直接のがん細胞認識機構を明らかにしたものであり、これまで適応免疫を基軸とした基礎・臨床研究が盛んに進められてきているがん免疫の世界にもう一本の新たな軸を与えるものである。
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