2014 Fiscal Year Research-status Report
Project/Area Number |
26860327
|
Research Institution | Kyoto University |
Principal Investigator |
藤堂 景史 京都大学, 医学(系)研究科(研究院), 特定研究員 (50452561)
|
Project Period (FY) |
2014-04-01 – 2017-03-31
|
Keywords | 免疫学 / B細胞 / 胚中心 |
Outline of Annual Research Achievements |
末梢リンパ組織内の胚中心でのB細胞の正・負の選択機構の分子メカニズムの詳細は明らかでない。この選択の異常が、種々の自己免疫疾患発症の引き金になると考えられていることから、このメカニズムの詳細を明らかにすることは、自己免疫疾患を克服する上でも非常に重要な事である。申請者は、T細胞に特異的に発現するシグナル分子であるCD3e分子が、胚中心B細胞でも発現していることを明らかにした。また、この胚中心B細胞に発現するCD3e分子はアポトーシスと関連していることが示唆される。そこで本研究では、胚中心B細胞に発現するCD3e分子の生理的機能を解明し、胚中心におけるB細胞の選択機構の分子メカニズムの解明にアプローチし、自己免疫疾患のち療法開発の端緒となる知見を得ることを目的としている。 本年度は、胚中心B細胞の中のCD3e分子を発現する細胞の詳細な細胞表面マーカーを調べるために、マスサイトメトリーによる多重染色法によって細胞表面分子の発現解析を行った。その結果、CD3eを発現するようなB細胞は様々な胚中心マーカー分子を発現しており、胚中心B細胞のサブポピュレーションであることが明らかとなった。 また、このような胚中心B細胞でCD3e分子が発現することの生理的な意義を調べるために、B細胞特異的にCD3e分子を欠損するような骨髄キメラを作成し、このキメラにおける免疫応答を調べた。その結果、B細胞特異的CD3e欠損キメラでは野生型骨髄キメラと比べて、著しく免疫応答が亢進されていることが明らかとなり、またその際の胚中心の形成をフローサイトメトリー、免疫組織染色で調べたところ、CD3e欠損キメラにおいて胚中心の形成が促進されていることが確認された。 これらのことから胚中心B細胞で発現するCD3e分子は細胞の異常な活性化の抑制に関わっている可能性が示唆された。
|
Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
当初の計画では平成26年度は大きく分けると以下の3つの計画を予定していた。 1)single cellレベルでのCD3e発現細胞の解析。当初の予定ではsingle cell RT-PCRによる多重遺伝子発現解析を予定していたが、当研究機関の共通機器にマスサイトメーターが導入されたため、当初の予定とは変更し、マスサイトメーターを用いた多重染色法によってCD3e発現細胞のタンパク発現解析を行った。当初の計画とは異なる研究手法の変更があったが、計画通りの結果を得ることができ、研究の達成という点では予定していた通りの進捗を得ることができたと考えられる。 2)B細胞特異的CD3e分子欠損キメラの解析。この計画は予定通り行われた。B細胞特異的にCD3e分子を欠損するキメラマウスを作製し、計画通りのスケジュールで免疫実験を行うことができた。よって、計画通りの目的を達成できたと考えられる。 3)CD3e分子のコンディショナルノックアウトマウスを作製。今年度にCD3e分子のコンディショナルノックアウトマウスを作製する予定であったが、現段階ではノックアウトマウスの前段階であるCD3eコンディショナルノックアウトコンストラクトを持つES細胞を樹立したところまでの進展であり、若干の進捗の遅れが生じている。よって予定していた達成度にはわずかに達していないと考えられる。 これらのことより、当初予定していた研究の達成度は概ね順調に進展していると判断した。
|
Strategy for Future Research Activity |
本研究の期限は残り1年であり、これまでの研究の進捗は概ね順調に計画通りに進展していると考えられるため、平成27年度も当初の計画に基づいて研究を遂行していく予定である。平成27年度の計画は26年度に達成できなかった計画を含め、大きく分けると以下の3つの計画を予定している。 1)CD3e分子のコンディショナルノックアウトマウスの作製、および解析。平成26年度にCD3eノックアウトコンストラクトを持つES細胞の樹立まで行うことができた。そこで、平成27年度はこのES細胞からコンディショナルノックアウトマウス個体を作製する予定である。また樹立したマウスを用いて、胚中心B細胞を中心とした抗原免疫応答の解析を行う予定である。 2)細胞株レベルでのCD3e分子の生化学的解析。CD3e分子を発現するB細胞株を誘導、もしくは人工的に樹立し、B細胞におけるCD3e分子の役割を生化学的に解析する予定である。 3)自己免疫疾患モデルマウスを用いた胚中心B細胞におけるCD3eの発現比較。胚中心B細胞に発現するCD3e分子の発現異常が、自己免疫疾患の発症に関与しているかどうかを検討するために、自己免疫疾患モデルマウスを用いて、それらの胚中心B細胞におけるCD3e分子の発現、および機能の解析を行う予定である。 平成27年度は、このような計画で研究を遂行する予定であり、これらの計画で得られた研究結果を取りまとめ、成果の発表を行う予定である。
|
Causes of Carryover |
年度途中の段階で次年度の行う予定であった研究計画を前倒して行う可能性が生じたため、当初の計画で概算していた予算を大幅に上回る可能性が生じ、追加で百万円の前倒し請求を行った。しかしながら、計画は当初予定していた通りに遂行することとなり、年度途中で追加請求した分の予算が繰り越されることとなった。
|
Expenditure Plan for Carryover Budget |
生じた次年度使用額は、本来平成27年度の請求分であった予算を平成26年度途中で前倒し請求したためであり、現段階では申請時の予定通りに研究を計画しているため、元々の研究計画どおりの予算として使用する計画である。
|