2015 Fiscal Year Annual Research Report
iPS細胞を用いた顆粒球輸血療法確立を目指した科学的基盤形成
Project/Area Number |
26860474
|
Research Institution | The University of Tokyo |
Principal Investigator |
吉見 昭秀 東京大学, 医学部附属病院, 助教 (80609016)
|
Project Period (FY) |
2014-04-01 – 2016-03-31
|
Keywords | 顆粒球輸血 / iPS細胞 / サイトカイン / 細胞株化 |
Outline of Annual Research Achievements |
造血器腫瘍に対する化学療法・造血幹細胞移植施行時の長期間の高度好中球減少は、重症細菌感染症・深部真菌感染症をきたす危険が極めて高く、顆粒球輸血(以降GTX)はそのリスクを回避する一つの有力な候補手段である。しかしながら、臨床的効果を得るには連日のGTXが必要と考えられており、ドナーの負担やリスクの点から広く臨床応用には至っていない。そこで我々は人工多能性幹細胞(iPS細胞)から誘導した好中球を用いた細胞療法を開発し、上記の問題の解決を図るとともに大量の顆粒球を臨床現場に供給可能とするための基盤的研究を行った。まず顆粒球前段階で細胞株化させ、大量に産生させながら、必要時に顆粒球に分化させる仕組みが可能であるかを検証した。具体的には、iPS細胞を分化させて得られた造血前駆細胞にtet-onシステムを用いてある2遺伝子を発現するようにしたところ、増殖可能な細胞株が得られた。この細胞株は未分化の血球マーカーであるCD34・CD43の発現はなく、顆粒球・単球のマーカーであるCD11bが発現していた。BMI1, cMycの発現をTet-offにすると形態学的には分葉核を持つ好中球様の細胞も見られたが、好中球機能評価系の一つで活性酸素産生能を評価するDHR assay (後述)では末梢血好中球と比較して10%程度の機能しかなく、末梢血単球と同程度の活性酸素産生能であった。また、iPS細胞から血球への分化段階で、多種類のサイトカインを添加すると、非添加時と比較して6倍の造血前駆細胞が得られた。一方で、造血前駆細胞にGM-CSFのみを添加すると、G-CSFのみの場合と比較して34倍も細胞数が増加したが、その半数以上が好酸球に分化していた。さらに、顆粒球の機能評価としてOxidative Burstを評価したところ、iPS細胞由来好中球は末梢血好中球と同等の活性酸素産生能があることが示された。
|