2014 Fiscal Year Research-status Report
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26860583
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Research Institution | Keio University |
Principal Investigator |
楠本 大 慶應義塾大学, 医学部, 助教 (70571727)
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Project Period (FY) |
2014-04-01 – 2017-03-31
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Keywords | 動脈硬化 |
Outline of Annual Research Achievements |
本研究では動脈硬化リスクが非常に高いにもかかわらず動脈硬化が全く存在しない、「抗動脈硬化」患者より人工多能性幹(iPS)細胞を樹立し、動脈硬化病態の首座である血管内皮細胞に分化させることで、内因性の抗動脈硬化機序を解明し、根本的治療に結びつく創薬を行うことを目的とする。今までに抗動脈硬化患者よりiPS細胞を樹立し、血管内皮細胞に分化誘導を行い解析を行った。酸化ストレスを血管内皮細胞に加えた際に、炎症惹起、アポトーシス、内皮機能などに差異があるか検討を行った。コントロール群の血管内皮細胞に酸化ストレスを加えると、老化関連因子であるp21の発現上昇、p53の活性化を認め、またBガラクトシダーゼ染色陽性の老化細胞を多数認めるようになる。ところが、抗動脈硬化群の血管内皮細胞では、これら老化関連の表現型が抑制されていることが分かった。また老化細胞は組織の炎症惹起を引き起こすことで組織ダメージを与えることが知られている。そこで、炎症惹起因子であるMCP-1, ICAM1, IL6などのmRNAがどの程度誘導されるか検討を行ったところ、抗動脈硬化群において有意に抑制されていた。以上の結果より、抗動脈硬化群では老化および炎症惹起が抑制されていることが分かった。次にMicro arrayを用いて、表現型の差異をもたらす因子の検索を行いX因子を同定した。血管内皮細胞においてX因子の強制発現を行い、酸化ストレスを加えることで抗動脈硬化群の表現型が再現できるかどうか検討を行った。酸化ストレス誘導性の老化、炎症惹起について検討を行ったところ、X因子を強制発現させることで有意に抑制できることが分かり、抗動脈硬化作用をもたらす一因であると考えられた。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
現在までの研究計画は、おおむね研究計画の記載通り進行していると考えられる。現在までの実験計画において、実際に抗動脈硬化患者より作成したiPS細胞由来血管内皮細胞が、抗老化・抗炎症の表現型を示すことが分かった。これは今までに動脈硬化進行に非常に重要であるといわれていた事であり、これらの表現型が抑制されていることから、目的通り抗動脈硬化因子を探索する上で適切なモデルの形成に成功したと考えられる。実際にMicroarrayによる探索で、抗動脈硬化患者においてX因子が有意に上昇していることを発見し、抗動脈硬化作用をもたらす原因ではないかと考え、強制発現による実験で検討を行った。すると、抗動脈硬化患者と同様の表現型を示すことが分かり、新規の動脈硬化抑制因子の可能性があると考えられた。昨年度までは、以上のように新規のX因子が抗動脈硬化作用を示すかどうか証明するところまでを目標としており、しっかりと目標を達成できたと考えられる。 現在までのところで、本研究の大まかな方向性が確定してきたことになる。現時点でも論文発表しうる状態となっていると考えられるが、より有用な研究にするために以下に示したような事項を追加で実験を行う予定である。
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Strategy for Future Research Activity |
本年度からは、以下の二点においてより精力的に実験計画を進めていく方針である。一つは、X因子がどのようにして抗老化・抗炎症の表現型を示すのか、実際のメカニズムについて検討を行う。もう一つは、X因子を血管内皮細胞特異的に強制発現を行うようなマウスを作成し、実際に動脈硬化を抑制することができるのかどうか検討を行う。 まずメカニズムの検討についてであるが、実際にX因子がどのように動脈硬化を抑制できるのか、詳細な分子機構を解明することで新規の動脈硬化治療薬開発に向けた基盤が整うことになる。メカニズム解明の方法として、まずX因子がどのようなタンパク質と相互作用しているか検討を行う。実際にタンパク質は単独で作用を及ぼすことは少なく、様々な他のタンパク質と相互作用を及ぼすことで機能を発揮することが知られている。X因子が相互作用を及ぼすタンパク質を同定できればメカニズム解明の一助となると考えられる。具体的な手法としてはX因子にタグを付けたタンパク質を作成し、質量分析法を行うことで相互作用をおよぼすタンパク質を同定する方針である。 次にX因子を血管内皮細胞特異的に強制発現を行うマウスの作成を行う。細胞レベルでX因子の有用性が示唆されているが、実際に生体内では血管内皮細胞以外にも、血管平滑筋細胞、Tリンパ球、単球、血中LDL、血中サイトカインなど、様々な因子の複雑な相互作用により動脈硬化が進展していくため、実際に血管内皮細胞のX因子が動脈硬化抑制に有用であるかどうかマウスを用いたin vivo実験での検証が必要となる。そこで、まず血管内皮細胞特異的因子Tie2のプロモーター領域の下流にX因子を挿入したプラスミドを作成し、マウス受精卵にプラスミドを挿入しトランスジェニックマウスの作成を行った。今後動脈硬化の抑制についてマウスの解析を行う予定である。
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Causes of Carryover |
昨年度までの研究計画で予想していたよりも、より少ない請求額にて研究を行うことができた。理由としては昨年度は研究を遂行することに集中しており学会等への発表行わなかったことがあげられる。また実験計画の進行も順調なものであったとことから細胞培地、抗体をはじめとする消耗品などの使用量も少なく抑えることもできた。
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Expenditure Plan for Carryover Budget |
本年度以降は得られた研究結果を対外的に発表するために、国内外の学会発表を行う予定である。また本研究の臨床応用をめざし、さらに良い研究にするよう今後も精力的に実験を進めていく予定である。そのためには消耗品などの購入が必須であり、本年度も使用する予定である。
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Research Products
(1 results)
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[Journal Article] Endothelin-1 induces myofibrillar disarray and contractile vector variability in hypertrophic cardiomyopathy-induced pluripotent stem cell-derived cardiomyocytes2014
Author(s)
Tanaka A, Yuasa S, Mearini G, Egashira T, Seki T, Kodaira M, Kusumoto D, Kuroda Y, Okata S, Suzuki T, Inohara T, Arimura T, Makino S, Kimura K, Kimura A, Furukawa T, Carrier L, Node K, Fukuda K
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Journal Title
J Am Heart Assoc
Volume: 3
Pages: e001263
Peer Reviewed / Open Access / Acknowledgement Compliant