2014 Fiscal Year Research-status Report
分子標的治療による小細胞肺癌に対する新規治療法の開発と臨床応用
Project/Area Number |
26860606
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Research Institution | Osaka University |
Principal Investigator |
南 俊行 大阪大学, 医学(系)研究科(研究院), 助教 (00705113)
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Project Period (FY) |
2014-04-01 – 2016-03-31
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Keywords | 分子標的治療 / 小細胞肺癌 / EphA2 / Dasatinib / HER2 / trastuzumab / ADCC |
Outline of Annual Research Achievements |
小細胞肺癌(SCLC)はの予後を改善するには抗癌剤耐性の克服が不可欠であるが、現在に至るまで、再発後の有効な治療法は確立されていない。本研究において、我々はHER2とEphA2の2つの受容体型チロシンキナーゼに注目して研究を行っている。 HER2について、我々はこれまでにHER2陽性抗癌剤耐性SCLC細胞に対し、抗HER2抗体であるtrastuzumabが抗体依存性細胞傷害(ADCC)活性を惹起し、抗腫瘍効果を発揮する事をpreclinicalに示してきた。この知見を実臨床に応用するため、患者本人の同意と大阪大学医学部附属病院倫理委員会および先進医療委員会の承認を得た上で、生検検体の免疫染色でHER2の発現が確認できた再々発SCLC2症例において、trastuzumabとirinotecanの併用療法を行った。重篤な副作用は認めず、治療効果は過去に報告された再発SCLCに対するirinotecan単剤治療の成績を上回っていた。上記2症例については、学会および論文発表を行った。今後もpilot studyとして症例を蓄積していく予定である。 EphA2については、阻害剤としてdasatinibを使用し、in vitroの実験を行った。dasatinibは実臨床で応用可能な濃度でEphA2陽性のSCLC細胞(SBC-3, SBC-5, Smk)の増殖を排他的に阻害した。また、SBC-5細胞のEphA2をsiRNAでノックダウンするとその効果はキャンセルされた。この事から、dasatinibは確かにEphA2を標的として抗腫瘍効果を発揮していると考えられた。その機序としては、当初想定していたErkやAktといった増殖や生存に関わるさらに下流のsignalの阻害ではなく、senescenceによってもたらされている事が、SA-β-gal染色や、FACSを用いたcell cycle analysisによって明らかとなった。今後、in vivoでdasatinibが抗腫瘍効果をもたらすかなどを検討していく予定である。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
1. HER2陽性再発小細胞肺癌に対するtrastuzumabの臨床応用 ヒトSCLC検体のHER2の発現を免疫染色法で検証し、約25%の症例でHER2の発現を確認した。さらに、evidenceのある化学療法に抵抗性となったHER2陽性SCLC2症例に、trastuzumabとirinotecanの併用療法を行い、従来報告されているirinotecan単剤療法を上回る効果が期待できる事が示唆された。実臨床でtrastuzumabをSCLC症例に使用した経験は、新たな治療戦略を樹立するための重要な一歩と考え、結果を学会および英文雑誌にて発表した。 2. EphA2を標的とした小細胞肺癌に対する新たな分子標的治療法の開発 HER2以外の新たな治療標的EphA2陽性SCLC細胞はdasatinibにより腫瘍の増殖が抑えられる事、dasatinibはmultikinase inhibitorであるが、その抗腫瘍効果は確かにEphA2の阻害を介している事を明らかにした。また、dasatinibの抗腫瘍メカニズムはsenescenceである事を見出し、これらの成果は学会で発表することができた。 以上から、研究はおおむね順調に進展していると判断した。
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Strategy for Future Research Activity |
1. HER2陽性再発小細胞肺癌に対するtrastuzumabの臨床応用 SCLC臨床検体の免疫染色を引き続き行い、HER2陽性のSCLC症例を蓄積する。HER2の発現がSCLC症例において化学療法の効果や予後に影響を及ぼしているかを統計的に解析する。HER2陽性SCLC症例においては、trastuzumabとirinotecanの併用療法をpilot studyとして行っていく。さらに、trastuzumabの主たるメカニズムであるADCCの効果に関わるbiomarkerとなり得る分子を、臨床検体から探索する。 2. EphA2を標的とした小細胞肺癌に対する新たな分子標的治療法の開発 EphA2陽性SCLC細胞の増殖がdasatinibによって抑制できる事をin vitroで示す事ができたため、次年度はin vivoでのdasatinibの効果を検証する。また、EphA2を強制発現した細胞株を樹立し、dasatinibによってsenescenceに至る詳細なシグナルを解析する。ヒトSCLC検体の免疫染色を行い、EphA2の発現頻度を検証する。
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Causes of Carryover |
差額は生じているものの、比較的少額であった。概ね計画通りの予算で、研究を進展させる事ができていると考えている。
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Expenditure Plan for Carryover Budget |
次年度使用として、試薬の購入を行う予定である。
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[Journal Article] Favorable response to trastuzumab plus irinotecan combination therapy in two patients with HER2-positive relapsed small-cell lung cancer.2015
Author(s)
Yuhei Kinehara, Toshiyuki Minami, Takashi Kijima, Shigenori Hoshino, Osamu Morimura, Tomoyuki Otsuka, Yoshitomo Hayama, Kiyoharu Fukushima, Yoshiko Takeuchi, Masayoshi Higashiguchi, Kotaro Miyake, Haruhiko Hirata, Izumi Nagatomo, Koji Inoue, Yoshito Takeda, Hiroshi Kida, Atsushi Kumanogoh
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Journal Title
Lung Cancer
Volume: 87
Pages: 321-325
DOI
Peer Reviewed / Acknowledgement Compliant
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[Presentation] Targeting stepwise HER2 and VEGF can overcome multidrug resistance in small cell lung cancer2014
Author(s)
Toshiyuki Minami, Takashi Kijima, Osamu Morimura, Yuhei Kinehara, Masayoshi Higashiguchi, Kotaro Miyake, Haruhiko Hirata, Yoshiko Takeuchi, Kiyoharu Fukushima, Yoshitomo Hayama, Koji Inoue, Izumi Nagatomo, Yoshito Takeda, Hiroshi Kida, Atsushi Kumanogoh
Organizer
AACR (American Association for Cancer Research) 105th Annual Meeting
Place of Presentation
San Diego, CA, USA
Year and Date
2014-04-05 – 2014-04-09