2014 Fiscal Year Research-status Report
胸腺由来制御性T細胞のin vivoでの誘導による免疫制御の基礎的検討
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26860748
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Research Institution | Kanazawa University |
Principal Investigator |
濱野 良子 金沢大学, 医学系, 協力研究員 (10623655)
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Project Period (FY) |
2014-04-01 – 2016-03-31
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Keywords | 制御性T細胞 / 胸腺 / 抗原特異性 |
Outline of Annual Research Achievements |
制御性T細胞は、エフェクターT細胞の活性化を抑制することで、過剰な免疫反応を抑制するT細胞の1サブセットである。マウスにおいて高容量の抗原を投与することで、血中抗原が胸腺樹状細胞により胸腺細胞に抗原提示され、胸腺由来の抗原特異的T細胞を誘導し、さらにIL-2-IL-2抗体の免疫複合体(以下IL-2IC)を投与することで、これらの抗原特異的T細胞は効率的に増幅することできることが報告されている(Plos One 7: e41154, 2012)。この結果に基づき、胸腺由来抗原特異的制御性T細胞を効果的にvivoで増幅させる方法を確立し、さらに増幅させた抑制性T細胞によるアレルギーや自己免疫疾患モデルでの炎症抑制の可能性を検討することを本研究の目的とする。下記のように研究を進める予定である。 1)DO11.10マウスに対して経静脈的にOVA(卵白アルブミン)を投与し、さらにIL-2ICを投与することで効果的に抗原特異的制御性T細胞を誘導・増幅させる方法を確立する。 2)得られた抗原特異的制御性T細胞が発現する表面マーカー・転写因子などを検討し、抗原特異的制御性T細胞の局所の抗原投与部位への効率的集積過程の分子機構を解明する。 3)DO11.10マウスを用いた遅延型過敏反応モデル・関節炎モデルにおいて、抗原特異的制御性T細胞を誘導し、病態への影響を分子病理学的に検索することによって、細胞・分子レベルでの作用機序を解明する。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
胸腺由来制御性T細胞を誘導する、経静脈的な抗原投与とIL-2ICの腹腔内投与の適切なタイミングを確立することができた。胸腺切除マウスではこれらの刺激による制御性T細胞が減少していることから抗原投与とIL-2ICの投与による制御性T細胞の大部分は胸腺由来であることがさらに確認された。 また抗原特異的な制御性T細胞の表現型としてはCCR2を発現していることが観察できた。マウス背部に作成したエアパウチに抗原を投与したところ、抗原特異的な制御性T細胞の集積を認め、CCR2ノックアウトマウスにおいては集積が阻害された。また、エアパウチ内には高濃度のCCL2(CCR2のリガンド)が定量された。よって抗原特異的な制御性T細胞はCCR2依存性に抗原部位に集積すると考えられた。 DO11.10マウスにOVAとIL-2ICの投与することにより、OVA特異的な遅延型過敏反応の抑制を観察することができた。よって抗原とIL-2ICに誘導された胸腺由来制御性T細胞は抗原特異的な炎症を抑制することができると考えられた。一方、DO11.10マウスに対してOVA特異的な関節炎を惹起し、OVAとIL-2ICによる炎症の抑制を検討したが、関節炎に対しては抗原特異的制御性T細胞による炎症の軽減は観察されなかった。
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Strategy for Future Research Activity |
OVA特異的なTCR発現マウスであるDO11.10 マウスにおいて、抗原特異的な制御性T細胞の誘導や炎症抑制を検討してきた。さらにこれらの現象を野生型マウスにおいても検討するとともに、制御性T細胞が局所で炎症を抑制するメカニズムを明らかにする。 これまでに抗原特異的制御性T細胞はCCR2依存性に抗原部位に集積することが確認された。この結果をもとに、CCR2ノックアウトマウスにおいて制御性T細胞の誘導を阻害することで免疫抑制与える影響を検証する。 また、動物モデルとしては、関節炎においては抗原特異的制御性T細胞の炎症抑制効果が確認できなかったため、他の疾患モデルでの検証を検討中である。具体的には甲状腺炎や心筋炎における制御性T細胞の炎症抑制効果を検証する予定である。さらにこれらのモデルでは臓器特異的抗原が多量に血中に流出することが予想され、かつ、抗原存在部位が特異的である。そのためIL-2ICの投与のみで制御性T細胞が効果的に誘導できる可能性も考えられ、合わせて検討する。 また、実際の臨床応用もめざし、抗原とIL-2免疫複合体投与による生体への副作用などを検討するため肝機能障害や腎機能障害、免疫機能なども検討する。
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Causes of Carryover |
今年度は時間的制約もあり学会発表、参加ができず旅費を使用する機会がなかったことが、未使用金額が生じた理由の一つである。 また、望ましい臓器特異的炎症モデルを検討した結果、関節炎において検証したが、制御性T細胞の炎症抑制効果は認められなかった。そのため他のモデルを検索し、心筋炎において再度評価する予定である。しかし、炎症惹起に必要な抗原であるミオシンのペプチド合成が間に合わず、今年度は実験を開始することができなかった。そのため、動物実験に一部遅れが生じたことももう一つの要因と考えられる。
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Expenditure Plan for Carryover Budget |
合成したミオシンを用いて心筋炎を惹起し、臓器特異的な制御性T細胞の誘導・抑制効果を検討する予定である。心筋炎モデルとしてはすでに報告されており、確立したモデルであるが、IL-2ICの投与のタイミングなどの適切なスケジュールを確立し、その効果の有無を検証する必要がある。また、その抗炎症のメカニズムなども明らかにする予定である。 これらの結果をまとめ、国内外を問わず学会発表や、論文として発表する予定である。
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Research Products
(4 results)
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[Journal Article] A case developing minimal change disease during the course of IgG4-related disease2015
Author(s)
Yamada K, Zoshima T, Ito K, Mizushima I, Hara S, Horita S, Nuka H, Hamano R, Fujii H, Yamagishi M, Kawano M.
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Journal Title
Modern Rheumatology
Volume: なし
Pages: 1-4
Peer Reviewed
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