2015 Fiscal Year Annual Research Report
ホスホジエステラーゼに着目した精神疾患の病態解明および治療法開発
Project/Area Number |
26860951
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Research Institution | Kurume University |
Principal Investigator |
黒岩 真帆美 久留米大学, 医学部, 助教 (20585690)
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Project Period (FY) |
2014-04-01 – 2016-03-31
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Keywords | ホスホジエステラーゼ / ドーパミン / うつ病 / 統合失調症 |
Outline of Annual Research Achievements |
DISC1 (Disrupted-In-Schizophrenia 1)遺伝子の異常は、統合失調症やうつ病等の精神疾患に共通するリスク因子であることを示唆する知見が集積してきている。そこで本研究では、DISC1遺伝子の異常と精神疾患との関連性を精査するとともに、うつ病モデルである慢性拘束ストレス付加マウスを併せて用い、細胞内cAMP/PKA シグナル制御に重要なcAMP分解酵素ホスホジエステラーゼ (PDE) に着目し、ドーパミンD1受容体/cAMP/PKAシグナル修飾を介した新たな精神疾患治療薬の開発基盤となる研究を行った。 DISC1遺伝子改変マウスおよびその野生型マウスを、生後5週齢から集団飼育群と隔離飼育によるストレスを加えた群に分けて3週間飼育し、精神疾患との関連の大きい各脳部位(大脳皮質、側坐核、海馬歯状回、線条体)における細胞内シグナルの変化を検討したところ、側坐核と線条体において隔離飼育ストレス前後のPDEの機能に変化がみられることが明らかとなった。また、海馬歯状回においても同様の変化がある可能性が示唆された。 また、C57/BL6マウスへの抗うつ薬の慢性投与により、海馬歯状回におけるD1受容体シグナルが増強することを明らかとした。さらに、行動薬理学的な抗うつ効果の評価を行った結果、C57/BL6マウスを用いた慢性拘束ストレスモデルにおいて、フルオキセチン単独投与群は、軽度ストレス負荷マウスではうつ様行動を抑制したが、重度ストレス負荷マウスではうつ様行動の抑制効果は得られなかった。しかしながら、フルオキセチンとドーパミンD1受容体アゴニストの併用投与群は、重度ストレス負荷マウスにおいてうつ様行動の抑制を示したことから、抗うつ薬の慢性投与により惹起される海馬歯状回のドーパミンD1受容体シグナルの増強が、抗うつ作用に関与すると考えられる。
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