2014 Fiscal Year Research-status Report
-癌間質改変による人工ウイルス標的細胞個別化治療戦略の新展開-
Project/Area Number |
26861084
|
Research Institution | Kyushu University |
Principal Investigator |
安井 隆晴 九州大学, 医学(系)研究科(研究院), 共同研究員 (60611283)
|
Project Period (FY) |
2014-04-01 – 2016-03-31
|
Keywords | 膵癌 / 膵星細胞 / 細胞外マトリックス / 人工ウイルス |
Outline of Annual Research Achievements |
膵星細胞の癌間質形成誘導機序を検討するにあたり、まず我々はヒト膵癌切除組織より樹立した膵星細胞から三次元細胞外マトリックスを作成した。三次元細胞外マトリックスは、フィブロネクチンやⅠ型コラーゲンを豊富に有した。ヒト膵星細胞から作成した、細胞外マトリックス上で癌細胞を培養すると、癌細胞の形態は通常のディッシュやⅠ型コラーゲンをコートしたディッシュ上での培養と比較して、紡錘形となり、有意なビメンチンの発現増加、E-カドヘリンの発現低下を認め、三次元細胞外マトリックスは癌細胞の上皮間葉転換を促進することが判明した。 また、膵星細胞が細胞外マトリックスの質的特性に与える影響を検討したとこと、作成する際の細胞数が多いほどマトリックスの平行な線維の割合が増加することが判明した。膵星細胞の活性化因子として知られるTGFβの添加実験では、細胞外マトリックスに有意な変化はみられなかったが、低酸素下では細胞外マトリックスの平行な線維の割合が増加した。 一方、三次元共培養モデルを用いて、膵癌細胞と膵星細胞の共培養実験を行ったとこと、膵癌細胞の浸潤・増殖能は亢進した。また、膵癌細胞の浸潤に先立って、膵星細胞の浸潤がみられ、浸潤した膵星細胞によるコラーゲン線維方向の改変というマトリックス・リモデリング作用が観察されており、膵星細胞の細胞外マトリックス・リモデリングが、膵癌の浸潤・増殖能に影響を与えている可能性が示唆された。
|
Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
ヒト切除組織由来膵星細胞から三次元細胞外マトリックスを作成することに成功し、その線維構築の評価方法も確立できた。さらに作成した三次元細胞外マトリックスを使用して、癌細胞と細胞外マトリックスの相互作用も検討し、細胞外マトリックス上では癌細胞が上皮間葉転換を促進することが判明した。また三次元共培養モデルを用いて、膵癌浸潤において膵星細胞と細胞外マトリックスの関連を検討でき、膵星細胞の細胞外マトリックスリモデリングが、膵癌の浸潤・増殖能に影響を与えていることが示せたことなど、一定の成果を得られたことから、本研究はおおむね順調に進展していると考えられた。
|
Strategy for Future Research Activity |
今後は、膵星細胞による三次元細胞外マトリックス形成を抑制する因子の同定を行っていく。細胞外マトリックスの質的特性に影響する膵星細胞の膜蛋白やシグナル伝達物質をターゲットとして、膵星細胞の機能変化を図る。膵癌マウスモデルへの間質標的治療薬投与による膵癌組織における癌間質normalizationの評価を行っていく。また抗癌剤併用による膵癌治療効果の解析も行う。癌間質改変が確認された薬剤と、抗癌剤および抗線維化薬を内包化させた人工ウイルスを併用する事で、その治療効果を検討する予定である。
|
Causes of Carryover |
研究はおおむね順調に進展しており効率的に資金を使用できたため
|
Expenditure Plan for Carryover Budget |
試薬類、抗体、実験用マウス、遺伝子改変マウス作成費等
|