2014 Fiscal Year Research-status Report
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26861089
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Research Institution | Kumamoto University |
Principal Investigator |
橋本 大輔 熊本大学, 医学部附属病院, 診療講師 (80508507)
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Project Period (FY) |
2014-04-01 – 2016-03-31
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Keywords | オートファジー / 膵癌 / ゲムシタビン / 5-FU |
Outline of Annual Research Achievements |
オートファジーは、細胞が持っている、細胞内のタンパク質を分解するための仕組みの一つである。細胞内での異常なタンパク質の蓄積を防いだり、栄養環境が悪化したときにタンパク質のリサイクルを行う。また、オートファジーが積極的に細胞死を引き起こすという報告もある。オートファジーと膵癌の関連性については、まだ十分に解明されていない。 我々はこれまでの研究で、ヒト膵癌組織においてオートファジーが活性化されていることを示した。さらに膵癌細胞株PANC-1においてオートファジーが膵癌の発育に積極的に貢献していることがわかった。また抗癌剤はPANC-1にさらに強いオートファジーを誘導し、このオートファジーは細胞保護的に働いていることを明らかにした。つまりオートファジーを抑制することが、新しい膵癌治療法となる可能性を示した。 この研究を発展させ、我々はまず膵癌患者における、オートファジーの誘導と予後をrospectiveに解析することとした。35例の通常型膵癌に対して切除手術を行った。この症例の切除検体(癌部及び通常膵実質部)を用いて、オートファゴゾームのマーカーであるLC3に対するウェスタンブロッティングを行っている。通常膵実質部に比べて癌部でLC3の発現が亢進している傾向があり、臨床病理学的特徴とともに解析し進行度、予後との関連を解析している。 また膵癌細胞株PANC-1で見られたオートファジーの特徴を確認するために、膵癌細胞株BxPC-3を用いて実験を行った。BxPC-3ではPANC-1と同様に通常培養条件下でLC3の発現が見られ、つまりオートファジーが発現していた。オートファジー阻害薬クロロキンによりBxPC-3の細胞増殖は抑制され、抗癌剤5-FUまたはゲムシタビンと併用した場合さらに強く細胞増殖が抑制された。つまり、BxPC-3においてもオートファジーが細胞保護的に働いていることが示された。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
1年8ヶ月間で30例超の膵癌切除サンプルを収集することができた。当初サンプルからタンパク質を抽出する過程が安定せず、ウェスタンブロッティングの結果か得られなかった。これは、膵組織からのタンパク抽出が一般的に難しいことと、オートファジー関連タンパクの同定を行うためには切除サンプルの調整を速やかに行う必要があることが原因であった。手技の見直しとウェスタンブロッティングの抗体、試薬の調整で安定した結果が得られはじめた。オートファゴゾーム関連タンパクのLC3、その他オートファジー、アポトーシス関連タンパクのウェスタンブロッティングを行い、現在、データベースの構築と解析を行っている。 また膵癌細胞株BxPC-3においてもPANC-1に見られたのと同じ特徴が見られた。つまりオートファジーを抑制すると細胞増殖が抑制され、オートファジーは細胞保護的に働いていた。また抗癌剤をBxPC-3に投与するとより強いオートファジーが誘導された。抗癌剤とオートファジー抑制物質を同時に投与すると、抗癌剤の細胞毒性が増強された。つまりオートファジーは抗癌剤の細胞毒性に対する抵抗性を有していることが示された。これはEur J Cancerに論文発表を行うことができた。
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Strategy for Future Research Activity |
膵癌切除サンプルについてさらに症例を重ねる。熊本大学消化器外科は肝胆膵外科手術のhigh volume centerであり、手術症例数は増加傾向にある。手術手技の安定に伴い、短期長期成績が改善されてきたことにより、患者数も増加している。今後は切除標本のfresh sampleとともに、免疫組織学的検証も同時におこなう。これはおもに、切除不能膵癌症例を対象に行うこととする。切除症例、非切除症例のオートファジーの誘導の程度と予後との関連をprospectiveに解析していく予定である。また、オートファジーが膵癌内で過剰に誘導される仕組みと、癌細胞内における具体的な機能の詳細を明らかにしていく。またクロロキンは網膜症など無視できない副作用を生じることが知られており、また免疫抑制作用もあり、抗癌剤と併用した場合の安全性も未知である。よって、臨床応用を前提として、より安全にオートファジーを抑制する手法を開発する。
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Causes of Carryover |
当初購入予定にしていた試薬の中で、医局共用のものを使用することができたため。
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Expenditure Plan for Carryover Budget |
実験試薬等消耗品購入に充てる。
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