2014 Fiscal Year Research-status Report
小児心臓外科手術に於けるランジオロールの薬物動態解明とBCHE遺伝子多型の解析
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26861256
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Research Institution | Gunma Institute of Public Health and Environmental Sciences |
Principal Investigator |
松本 直樹 群馬県衛生環境研究所, 研究企画係, 研究員 (80631514)
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Project Period (FY) |
2014-04-01 – 2017-03-31
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Keywords | 先天性心疾患 / β遮断薬 / butyrylcholinesterase / 遺伝子多型 |
Outline of Annual Research Achievements |
人工心肺を用いた心停止下に予定心臓外科手術を受ける小児先天性心疾患患者11例を対象とした。プロトコール通り、セボフルラン、フェンタニル、ロクロニウムで麻酔導入し、セボフルラン 1.0-3.0%、レミフェンタニル 0.1-0.5μg/kg/min、ロクロニウム 7μg/kg/minの持続投与で麻酔維持をする。麻酔導入後に経食道心エコーを挿入し、動脈圧ライン、中心静脈カテーテルを留置し、インピーダンス心拍出量計を装着した上で、ランジオロールを5μg/kg/minで投与した。 人工心肺開始前と、人工心肺離脱後に経食道心エコーによる心機能評価を施行し、ランジオロールの効果を検討した。 対象患者の年齢は0.9±0.5才、1例は両大血管右室起始症、10例はファロー四徴症であった。ファロー四徴症10例の内、1例は完全房室中隔欠損症であった。Butyrylcholinesterase(BCHE)活性は、2例で正常上限を超えており、正常値9例は357±43 U/L、異常値2例は690±74 U/Lであった。術後の心機能は明らかな差を認めなかったが、術後ICU入室時のクレアチンキナーゼ(CK)値は1925±525 U/L、2226±126 U/L、心筋障害の指標である心筋型クレアチンキナーゼ(CK-MB)値は167±32 U/L、187±33 U/Lと、BCHE活性異常高値症例でCK値、CK-MB値ともに高値であった。また、術後24時間後、48時間後、72時間後でも同様にBCHE活性異常高値症例でCK値、CK-MB値が高値を示した。 BCHE活性が高値であると、正常値症例よりもランジオロールの血中濃度が低い可能性がある。したがって、BCHE活性によりランジオロール血中濃度が影響を受け、それによりランジオロールの心筋保護効果に差異が生じる可能性が示唆された。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
3: Progress in research has been slightly delayed.
Reason
平成26年度は11例を対象とするに留まった。これは、対象となりうる先天性心疾患患者が予想よりも少なかった為であり、平成27年度以降、手術患者が増加することが見込まれており、継続することで症例数が増えてくるものと見込まれる。 cTnI, NT-proBNP, サイトカインの測定は十分な検体量が得られなかったことから、検討が十分に行えなかった。
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Strategy for Future Research Activity |
平成27年度はランジオロール血中濃度、cTnI, NT-proBNP, サイトカインの測定を行うとともに、Butyrylcholinesterase遺伝子多型の検出を行う。 ランジオロール測定及びbutyrylcholinesteraseの遺伝子多型に関しては、研究協力者である群馬大学医学部附属病院臨床薬理部、塚本純子氏に助言を求め、ELISA kitによる測定については群馬大学医学部医学系研究科、齋藤繁教授に協力を要請しながら進めていく。群馬県立小児医療センターに於ける検体採取については、心臓血管外科、宮本隆司部長と小児集中治療部、小林富男部長に協力を得て、遺伝子検査の取扱いについては、群馬県立小児医療センター内科、山田佳之部長の協力を要請し、遺伝子多型の解析を進めていく。
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Causes of Carryover |
本研究が、十分な検体量を得られなかった等の理由で、計画よりやや遅れている為、平成26年度に購入予定であったELISA kit、各種試薬、HPLC用カラム等の使用期限がある消耗品の購入が出来なかった。
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Expenditure Plan for Carryover Budget |
平成27年度は症例数増加が見込める為、平成26年度に購入予定であったELISA kit、各種試薬、HPLC用カラム等を購入し、cTnI、NT-proBNP、各種サイトカインの測定を行い、ランジオロール血中濃度の測定を行う。 また、butyrylcholinesterase (BCHE)の遺伝子変異を検出する為の消耗品及び機器、また解析用機器を購入し、遺伝子多型の解析及び予後関連因子の評価を行う。
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