2014 Fiscal Year Research-status Report
尿路感染症に対するサーファクタント蛋白質Aの防御機構の解明と臨床応用
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26861278
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Research Institution | Sapporo Medical University |
Principal Investigator |
橋本 次朗 札幌医科大学, 医学部, 研究員 (30404685)
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Project Period (FY) |
2014-04-01 – 2016-03-31
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Keywords | 尿路病原性大腸菌 / サーファクタントタンパク質A / ウロプラキン / 尿路感染症 |
Outline of Annual Research Achievements |
今年度は当初の計画通り、尿路上皮におけるサーファクタントタンパク質A (SP-A) の尿路病原性大腸菌 (UPEC) に対する感染防御機構についてin vitroで研究を進めた。まず、リコンビナントSP-Aのヒト尿中におけるUPEC増殖抑制作用について検討した。UPEC株であるJ96をSP-A存在下および非存在下で培養し、6時間後に培養液を寒天培地にまき、形成されるコロニーをカウントした。SP-A存在下では有意に増殖が抑制された。 次に、UPECの膀胱尿路上皮細胞への接着におけるSP-Aの抑制作用を解析した。膀胱尿路上皮細胞株である5637細胞をSP-Aで前処理し、過剰なSP-Aを洗浄し、EGFPを発現させたJ96を感染させた。細菌が接着した5637細胞を、蛍光顕微鏡を用いて計測したところ、SP-Aで前処理しなかったものに比べJ96が接着した細胞数は有意に少なかった。また、SP-Aと共培養したJ96を5637細胞に感染させても、同様にJ96が接着した細胞数は少なかった。これらの結果より、SP-Aは尿路上皮細胞およびUPECのいずれにも結合し、UPECの尿路上皮への接着を抑制すると考えられた。このようなSP-Aの作用の分子基盤を生化学的に解析するために、尿路上皮の膜蛋白であるUroplakin Iaと、UPEC線毛の先端に発現している接着因子FimHの組み換えタンパク質を作成した。96穴プレートに固相化したUroplakin IaとSP-Aはカルシウム依存性に接着した。この結合はα-methyl mannosideの存在下では抑制されたことから、SP-Aはレクチン活性によりUroplakin Iaと接着することが示された。また、FimH も濃度依存性にUroplakin Iaに結合したが、SP-A存在下では有意に結合が阻害された。したがって、SP-AはFimHのUroplakin Iaへの結合を競合的に阻害することで、UPECの尿路上皮への接着を抑制していると考えられる。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
尿路におけるSP-Aの感染防御機構について、生化学的実験を通して証明できたと考えられる。平成26年度の研究計画はおおむね遂行できた。
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Strategy for Future Research Activity |
当初の予定通り、in vivoにおけるSP-AのUPEC感染防御能について検討する。即ち、SP-Aノックアウトマウスを用いて、経尿道的に膀胱内にUPECを感染させ、膀胱上皮に接着した細菌数をカウントする。これを野生型マウスと比較するとともに、膀胱内にUPECとSP-Aを同時に注入した群とも比較する。
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