2015 Fiscal Year Research-status Report
妊娠高血圧症候群の発症機序の解明-患者臍帯由来iPS細胞を用いた解析-
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26861308
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Research Institution | Yamagata University |
Principal Investigator |
網田 光善 山形大学, 医学部, 助教 (30420061)
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Project Period (FY) |
2014-04-01 – 2017-03-31
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Keywords | 妊娠高血圧症候群 / iPS細胞 / trophoblast |
Outline of Annual Research Achievements |
妊娠高血圧症候群は全妊婦の約3%に発生し、母児共に致命的な障害を惹起しうる妊娠合併症である。その原因は未だ不明であるが、妊娠初期の栄養膜細胞(trophoblast)の母体子宮脱落膜への浸潤不全が病因の一つと考えられている。しかし、本疾患の診断は妊娠20週以降になされるため、妊娠初期の疾患発生のメカニズムに対する研究は困難である。本研究の目的は、妊娠高血圧症候群の患者自身の臍帯を用いて、人工多能性幹細胞(iPS細胞)を樹立したのち、trophoblastに分化させることにより、妊娠高血圧症候群に代表されるtrophoblast関連妊娠合併症の疾患モデルを確立し、疾患の発生メカニズムを明らかにする事である。 具体的に本研究では、妊娠高血圧症候群の患者臍帯および正常妊婦の臍帯を用いて以下の実験を行う計画である。 ① 臍帯から線維芽細胞を培養した後、4種類の遺伝子、OCT3/4、SOX2、KLF4、cMYCを導入し患者由来および正常妊婦由来のiPS細胞を作成する。 ② それぞれのiPS細胞にBMP4、Activin A 阻害剤(A83-01)、FGF2受容体阻害薬(PD173074)を投与し、trophoblastへと分化させ、次の検討を行う。 今年度は、前年に引き続き分娩患者からの臍帯の採取を継続し、総数で、正常妊娠患者58例、妊娠高血圧症候群患者10例から臍帯を採取した。得られた臍帯は、即座にprimary cultureを行い、そのうち、正常妊娠由来の臍帯は54例から、妊娠高血圧症候群患者由来の臍帯は9例から、線維芽細胞の発育をみた。十分に増殖させた後に、凍結保存を行った。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
4: Progress in research has been delayed.
Reason
当初の計画では、iPS細胞作製まで早期に行う予定であったが、着手できないでいる。理由としては、研究の対象とする妊娠高血圧症候群患者由来の臍帯は、症例数自体が少ないことや、線維芽細胞が発育してこない症例も有り、研究に必要な症例数を集めるのに苦労したことが挙げられる。コントロールとしての正常妊娠由来の臍帯からの線維芽細胞は比較的、十分に症例数を集める事ができ、凍結保存するに至った。また、実際にiPS細胞を作成するにあたり、培養環境も線維芽細胞と異なるため、環境設定に時間を費やしてしまっている。
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Strategy for Future Research Activity |
今年度まで研究を行ってきた研究機関では、iPS細胞あるいはES細胞といった幹細胞を用いた研究はこれまで行われておらず、研究者一人ですべてを立ち上げるのはなかなか困難な状況である。そこで、平成28年度より、研究者は研究機関を移り、幹細胞の研究実績の豊富な研究機関で研究を続ける予定である。そのため、これまでに得られた検体(患者臍帯由来の線維芽細胞)を移送するための手続きを、移動元、移動先それぞれの研究機関の倫理委員会に申請中である。移送が済み次第、iPS細胞の作製に着手し、研究を進める予定である。
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