2014 Fiscal Year Research-status Report
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26861669
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Research Institution | The University of Tokyo |
Principal Investigator |
倉林 くみ子 東京大学, 医学部附属病院, 特任臨床医 (40586757)
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Project Period (FY) |
2014-04-01 – 2016-03-31
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Keywords | 軟骨分化可塑性 / 骨化 / 軟骨細胞 / 分化誘導 |
Outline of Annual Research Achievements |
H26年度は培養ヒト軟骨細胞における分化可塑性の検討を行った。 軟骨は、手術時に切除され治療や診断で必要がないため破棄されているヒト組織(鼻中隔軟骨、耳介軟骨、関節軟骨、肋軟骨)。採取した軟骨組織はメスで約1 mm大の大きさに細切した後、0.15%コラゲナーゼ溶液で37℃、24時間酵素処理を行い、細胞を採取する。採取した軟骨細胞は、10%FBS含有培養液で培養し増殖曲線を描き増殖能を評価する。また、各種軟骨細胞は、第1継代(P1)からP8までのそれぞれについて、骨、脂肪、軟骨などの間葉系組織への分化を誘導し、多分化能を評価し、比較検討し、軟骨細胞の分化可塑性の基本データとする。軟骨分化に関しては、105細胞を軟骨分化培地(含インスリン、TGF-β)とともに15ml遠沈管の中で静置し、4週間後に、組織切片をトルイジンブルー染色で観察し、Col2、Sox9、Col10等の軟骨マーカーをrealtime RT-PCRで定量的に評価する。骨芽細胞あるいは脂肪細胞への分化に関しては、それぞれの培養皿から回収した細胞を、通常の直径12 mm培養プレートに105細胞/cm2で播種し、翌日骨分化培地(含βグリセロリン酸、アスコルビン酸)および脂肪分化培地(含デキサメサゾン、インドメタシン)に交換し、1週後ALP染色およびoil red染色で骨分化および脂肪分化を評価する。さらに、それぞれのマーカーであるRunx2、Col1、ALP、osteocalcinおよびPPARγなどをrealtime RT-PCRで定量的に評価する。これらの結果を、各細胞、各継代で比較検討し、軟骨細胞可塑性の基礎データとする。その上で、増殖能および骨分化能の優れた軟骨細胞の第2継代(P2)について、骨芽細胞への分化を検討する。対照としてヒト骨髄由来の間葉系幹細胞を用いて同様の実験を行った。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
耳介および鼻中隔軟骨組織を患者からインフォ-ムドコンセントにて承諾のうえ回収し、細切、0.15%コラゲナーゼ溶液で酵素処理を行い、細胞を採取した。採取した軟骨細胞は、増殖培養し増殖曲線を描き増殖能を評価した。また、その他フィブロブラスト・アストロサイト・ips細胞などの各種軟骨細胞も比較対象群とした。第1継代から第8継代までのそれぞれについて、骨、脂肪、軟骨誘導培地を用いて間葉系組織への分化を誘導し、多分化能を評価し、軟骨細胞の分化可塑性を検証した。しかし軟骨細胞の骨化誘導とは、すなわち軟骨の石灰化を誘導する事であり、成長軟骨細胞の肥大化・石灰化の条件を検索する事であるが、従来の平面単層培養では、軟骨細胞のALPase活性は低く、骨化を検知する事は困難のようである。そこで、軟骨細胞大量増殖方法と同様にペレット状の高密度培養または平面培養であればデキサメサゾンの添加などの工夫によって、著明なALPase活性の上昇などを促し、石灰化の誘導が必要であると考えた。またFGF非存在下培地に交換するなど、培地添加因子の種類や添加のタイミングなどによって、石灰化の条件が異なってくるようである。軟骨分化誘導に関しては、実験計画通り、105細胞を軟骨分化培地含インスリン、TGF-β(BIT培地と呼ぶ)とともに15ml遠沈管の中で静置しペレット状にて高密度に保ち培養し、4週間後に、組織切片をトルイジンブルー染色で観察し、Col2、Sox9、Col10等の軟骨マーカーをrealtime RT-PCRで定量的に評価した。これらの結果を、各細胞、各継代で比較検討し、軟骨細胞可塑性の基礎データとする。その上で、増殖能および骨分化能の優れた軟骨細胞の第2継代(P2)について、骨芽細胞への分化を検討する。対照としてヒト骨髄由来の間葉系幹細胞を用いて同様の実験を行っている。
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Strategy for Future Research Activity |
今年度は、ヒト軟骨細胞由来再生骨のヌードラット皮下移植実験を中心に行う。βカルシウム系多孔体(気孔率75%、φ5x2 mm)に軟骨細胞を投与し、培養条件をもちいて、培養再生骨組織を作製する。この培養再生骨をヌードラット(7週齢オス、n=12)の背部に移植する。移植2週、2ヵ月間、6ヶ月で移植組織を摘出し、骨再生を評価する。対照とし、骨髄由来間葉系幹細胞を用いて同等の実験、ならびに足場素材のみの移植を行う。評価にはマイクロCTによる画像評価、非脱灰研磨切片によるコンタクトマイクロラジオグラム、脱灰パラフィン切片によるH.E染色・免疫染色などの組織学的評価、などを行う。さらに、ヌードラット頭蓋骨欠損モデルに対するヒト軟骨細胞由来再生骨の検証を行う。 ヌードラット(7w齢雄、n=12)の頭蓋骨に長さ8mmの骨欠損を作製し、確定した培養条件で製造した再生骨を移植する(n=3)。なお、βカルシウム系多孔体はあらかじめ、欠損部に相当する形状に加工しておく。再生骨を欠損部に移植し、両端の骨片を含めチタンプレートで固定する。対照としては、足場素材(βカルシウム系多孔体)のみの移植を行う(n=3)。移植後2カ月で組織を摘出する。評価にはマイクロCTによる画像評価、非脱灰研磨切片によるコンタクトマイクロラジオグラム、脱灰パラフィン切片による組織学的評価、などを行う。これらの結果を元に、最終的な培養条件を検証する。 ヌードラット下顎骨欠損モデルに対するヒト軟骨細胞由来再生骨の検証 最終的にはヒトの下顎骨における広範な骨欠損を想定したラットの下顎角部臨界骨欠損モデルを使用し、頭蓋骨骨モデルと同様の方法にて骨再生の有意性を評価する。 これらの結果を元に、最終的な培養条件を検証する。頭蓋骨欠損および、下顎顎骨欠損の両モデルに対する骨移植の修復期間・修復過程などについても比較検討する。
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Causes of Carryover |
当初の計画書の実験方法では、平面培養(単層培養)では本来肥大軟骨、石灰化ななどを検出できるはずだが、実際には軟骨細胞のALPase活性は低く検出困難であり、より著明に石灰化を確認するためにはデキサメサゾンの添加など添加因子の工夫、あるいは三次元高密度培養などを検証をする事になった。そのため骨化条件の確立(培養系)に時間がががり、計画書におけるH26年度βカルシウム系多孔体(気孔率75%、φ5x2 mm)培養骨再生組織の作製はH27年度に繰越となり、使用額としても、培養研究に必要な範囲に収まる結果となった。H27年度は、骨化条件を確定し、それをもとに引き続き計画書通りの研究をすすめていく所存です。
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Expenditure Plan for Carryover Budget |
ヒト軟骨細胞を用いた培養再生骨組織の作製を行う。 βカルシウム系多孔体(気孔率75%、φ5x2 mm)に軟骨細胞を投与し、前項で評価した培養条件をもちいて、培養再生骨組織を作製する。投与する細胞密度を、1x106, 3x106, 1x107, 3x107, 1x108 細胞/mLに設定し、培養期間を1, 2, 3, 4週とし、骨再生を評価する。対照とし、骨髄由来間葉系幹細胞を用いて、同等の実験を行う。評価にはマイクロCTによる画像評価、非脱灰研磨切片によるコンタクトマイクロラジオグラム、脱灰パラフィン切片による組織学的評価、などを行う。その後は引き続き作製した再生骨を用いてヒト軟骨細胞由来再生骨のヌードラット皮下移植実験を行い、これらの結果をもとに、さらに培養条件を絞り込む。またヌードラット頭蓋欠損モデルおよびヌードラット下顎骨欠損モデルに対するヒト軟骨細胞由来再生骨の検証する。
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